↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このスキル、やばスギル。 ~ガチャ沼に堕ちたら俺の負け~  作者: 明日乃風
第十二章 「向こうから、つながった」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
154/189

第154話 選ぶ理由が、できてしまった

 翌朝、食堂の卓へ、ファステがいくつもの紙を並べた。


「現在ある食料と、生活用品です」


「もう足りないの?」


 ヴィオラが紙をのぞき込む。


「今日や明日に困るわけではありません」


「じゃあ大丈夫?」


「街へ行けない状態が、いつまで続くか分かりませんので」


 穀物。


 干した肉。


 塩。


 油。


 布。


 薪。


 薬。


 紙。


 料理や洗濯、衣服の修繕に使う物まで分けて書かれている。


「食事の量をすぐに減らす必要はありません」


 ファステは、ナーヴァを見る。


「我を見るな」


「ナーヴァさんの分を減らすとも言っていません」


「ならばよい」


「ただし、今後も補充できない場合は、皆さんで相談する必要があります」


「その時は我が狩る」


「狩ったものを持ち帰れる場所へ行けるかも分からない」


 リゼが言った。


「第二接続地点から出ればよいではないか」


「街へ入れば、領主側に見つかる危険があります」


 ミネットが答える。


「街から離れた場所へ出て、人目につかず狩りをして戻るなら、できる可能性はあります」


「では問題ない」


「獲物の種類、土地の所有者、周辺の人通り、領主側の捜索範囲は確認が必要です」


「問題が増えたぞ」


「最初からあったものです」


 ナーヴァが黙った。


「食料以外は?」


 俺は尋ねた。


「薬は多くありません」


 ファステが別の紙を示す。


「今、重い怪我や病気の方はいません。ですが、必要になってから用意することはできません」


「布も、いくらでもあるわけではありませんわ」


 レイナが言う。


「作業着の補修とナーヴァの分を作るくらいなら足ります。でも、全員の服を長く作り続ける量ではありません」


「我の分は作れるのだな?」


「順番は守っていただきます」


「分かっておる」


 以前なら、ここで今すぐ作れと言ったかもしれない。


 今は不満そうにしながらも、待つことを覚えている。


「紙と筆記具も、使えば減ります」


 ミネットが自分の記録帳へ目を落とす。


「記録を減らす?」


「必要な記録は続けます。ただし、書き直しや重複を減らします」


「ミネットが紙を節約するって、かなり深刻じゃない?」


 ヴィオラが言った。


「深刻と決まったわけではありません」


「でも、いつもより少なく書くんでしょ?」


「同じ内容を何度も書かないだけです」


「今まで書いてたの?」


「確認のために必要でした」


「それを減らせるなら、前から減らせたんじゃない?」


「状況が変わったので、必要性も変わりました」


 ミネットは真面目な顔で答える。


 縁が、その椅子の下から顔を出した。


「学校は?」


 俺が聞くと、ミネットの指が止まった。


「今日は行きません」


「休むの?」


「一日です。領主側がどこまで私たちの情報を持っているか確認できていません」


「でも、確認するために学校へ行くのは駄目だよ」


「分かっています」


「学校を続けないって意味じゃないよね?」


「はい」


 ミネットは縁の頭へ手を伸ばす。


「学校は続けます。ただ、今日は行きません」


「学校への連絡は?」


「今はできません」


 第二接続地点から出て、学校まで行けば伝えられる。


 でも、それでは休む意味が薄い。


 ほかの誰かに頼むにしても、俺たちとつながっていることを相手へ知らせることになる。


「無断で休むと問題にならない?」


「なる可能性はあります」


「じゃあ、どうする?」


「明日以降も通えない場合は、方法を考えます」


 その方法がないから困っている。


 ミネットも分かっているはずだ。


 それでも、学生だから情報を集めに行けとは言えない。


「探索者組合へも連絡できない」


 リゼが卓の端へ手を置く。


「領主側の通達について、組合がどこまで認めているかも不明だ」


「エウリオへ頼む?」


 ヴィオラが言った。


「昨日断られた」


「聞くだけなら?」


「断られたことと、言い方を変えてもう一度頼むことは同じだよ」


「違うようにも聞こえるけど」


「ほとんど同じ」


 知らせに来てくれた。


 通達の写しも持ってきてくれた。


 それ以上を当然のように求めれば、今までの助力まで仕事へ変えてしまう。


「今できるのは、持っている物を確認すること」


 千代が紙を一つにまとめる。


「街へ行かずに手に入る物を探すこと。第二接続地点を知られぬよう見張ること。そして、今すぐ決めなくてよいものを決めぬことじゃな」


「領主へ会いに行かないのも?」


「今はな。永遠に会わぬと決めたわけではない」


「向こうから来たら?」


 ナーヴァが尋ねる。


「第二接続地点を知られていなければ、直接ここへは来られぬ」


「見つけたら?」


「その時に考える」


「我は今からでも考えられるぞ」


「焼く以外で?」


「……捕らえる」


「少し進んだね」


「焼くより後が面倒そうだ」


「エウリオみたいになってきたな」


 軽く笑いが起きる。


 でも、卓の上の紙は減らない。


 すぐに足りなくなるものはない。


 だから今は暮らせる。


 それと、このまま外との関係を失ってよいことは別だった。


     ◇


「十連召喚を使う?」


 最初に口にしたのはヴィオラだった。


 皆の視線が俺へ集まる。


 考えていなかったわけではない。


 昨夜から、何度も表示を開いている。


《十連召喚》


必要《淫獄石》:30,000


候補提示数:10


正式召喚数:1


「新しい人なら、まだ顔を知られてないよね」


 ヴィオラが続ける。


「街へ行けるかもしれない」


「ヴィオラ」


 リゼが低い声を出した。


「分かってる。行かせるって決めるんじゃないよ。行けるかもしれないってだけ」


「召喚した直後に、その役を頼むつもりか?」


「それは……本人に聞いてから」


「断ったら?」


「頼まない」


「本当に?」


「本当だって」


 ヴィオラが両手を上げる。


「でも、今の私たちにできないことができる人が候補にいたら、選ぶ理由にはなるでしょ?」


 それは否定できなかった。


 街へ入れる。


 情報を集められる。


 物を買える。


 探索者組合へ連絡できる。


 そんな能力を持つ人がいれば、今の俺たちには役立つ。


「街へ行かせるために、一人を選ぶのか?」


 口にすると、自分で嫌になった。


 まだ姿も見ていない。


 どんな人生を送ってきたのかも知らない。


 なのに、最初から使い道を決めようとしている。


「役に立つ者を選ぶこと自体は、悪くない」


 リゼが言った。


「でも」


「召喚した後、その役目を断る自由まで奪うな」


 リゼはまっすぐ俺を見る。


「選んだ理由に、能力が含まれていることも隠すな。それでも本人が嫌だと言ったなら終わりだ」


「街へ行かなくても?」


「住民として迎えると決めたのだろう?」


「うん」


「なら、街へ行かないことを理由に追い出すな」


「それはしない」


「能力を使わなくても?」


「しない」


「なら、選ぶ理由にすることまで恐れる必要はない」


 選んだ後で、従わせない。


 役に立ちそうだから選ぶことと、その役目を義務にすることは違う。


「その方が街へ行くことを断った場合でも、今の食料で一人増えて大丈夫です」


 ファステが言った。


「少なくとも、すぐに困ることはありません」


「空いている部屋もありますわ」


 レイナが続ける。


「衣服や寝具も、一人分なら用意できます」


「敵だった場合は我が押さえる」


 ナーヴァが言う。


「最初から押さえないで」


「襲った場合だけだ」


「殺さないでね」


「努力する」


「約束は?」


「相手による」


「そこは約束して」


「我らを殺そうとする者まで生かせと言うのか?」


「止められるなら止める。止められないほど危険なら、その時は別」


「ならばよい」


「候補表示では、人格や忠誠は確認できません」


 ミネットが記録帳を開く。


「能力概要から、味方になると決めないでください」


「召喚されたら住民にはなると思う」


「住民登録は、夜斗さんへの服従を意味しません」


「分かってる」


「元の主や家族、役目を持っている可能性もあります」


「それも説明を聞く」


「帰す方法が分からないことも、先に伝えてください」


「うん」


「召喚直後に体調が悪い可能性もあります」


「通常召喚でもあった?」


「今までなくても、次も無事とは限りません」


「そうだね」


 俺は全員を見る。


「十人の候補が出たら、一人ずつ確認する」


「うむ」


「役に立つかは考える。でも、それだけで決めない」


「当然です」


「候補を見た後、すぐ選ばなきゃいけないかもしれない」


「時間制限の表示はないのでしょう?」


「ない。だから逆に、ずっと待てるとも言えない」


「候補が消えそうになったら?」


「その時は、一度選ばない」


「選ばずに終えられるかも不明です」


「……そうだった」


 始めたら戻れないかもしれない。


 三万個は、候補を見る時点で減るらしい。


 誰も選ばず終えられる保証もない。


「今ここで、全員が同意できない候補しかいなかったら?」


 ヴィオラが尋ねる。


「俺一人では選ばない」


「候補が消えるとしても?」


「うん」


 言ってから、胸が少し痛んだ。


 三万個。


 ここまで貯めた石のほとんど全部。


 候補を見るだけで失うかもしれない。


 それでも、呼びたくない相手を無理に選ぶ理由にはならない。


「では、一人ずつ止めることができるようにしましょう」


 ミネットが言った。


「候補を選ぶ前に、誰か一人でも待ってほしいと言った場合は止めます」


「時間がない場合は?」


「その場合も、夜斗さん一人では決めないでください」


「分かった」


「我もか?」


 ナーヴァが聞く。


「ナーヴァも」


「我がよいと言えば選ぶのか?」


「ナーヴァ一人だけじゃ決めない」


「我だけでは足りぬのか」


「俺一人でも足りないから」


「ならば仕方あるまい」


 千代が、全員の顔を順番に見る。


「実行そのものへ反対する者はおるか?」


 誰も手を上げなかった。


「ミネットは?」


「実行に賛成します」


「縁は?」


 ヴィオラが椅子の下を見る。


「縁の意思は確認できません」


 ミネットが答える。


「ですが、生活環境が変わる可能性はあります。縁が新しい方を避ける場合、無理に近づけないでください」


「分かった」


「エウリオは?」


「住民ではないし、もう帰った」


「聞いたら面倒がるだろうな」


「確実に」


 俺は能力表示へ意識を向けた。


 ずっとそこにあった項目を選ぶ。


《十連召喚》


 新しい表示が開いた。


必要《淫獄石》:30,000


現在所持数:30,100


《十連召喚》を実行しますか?


 選択肢が二つ現れる。


 実行。


 中止。


「確認が出た」


「候補ではなく、実行そのものの確認ですか?」


「うん」


「ここで中止すれば、石は減らない?」


「たぶん」


「今は中止しないのでしょう?」


 ヴィオラが落ち着かない様子で身を乗り出す。


「最後に確認する」


 俺は皆を見る。


「実行していい?」


 リゼがうなずく。


 ファステも。


 レイナも。


 千代も。


 ヴィオラは待ちきれないように何度もうなずいた。


 ミネットは一度記録帳を閉じ、はっきりとうなずく。


 ナーヴァは腕を組んだまま言った。


「十人を見せよ」


「縁は?」


 縁はミネットの足元に座ったまま、俺を見ていた。


 賛成かどうかは分からない。


 反対とも決められない。


「始める」


 俺は、実行を選んだ。


『《淫獄石》30,000個を消費します』


 視界の端にあった数字が、一気に減る。


『所持《淫獄石》:100』


「ああ……」


 声が漏れた。


「どうした?」


 リゼが身構える。


「三万個、なくなった」


「分かっていて使ったのでしょう?」


 ファステが困った顔をする。


「分かってたけど、実際に百個になると」


「後悔した?」


 ヴィオラが聞く。


「ちょっとだけ」


「中止しますか?」


 ミネットが尋ねる。


「もう消費した後だよ」


「候補選択の中止です」


「しない。見る」


 表示が広がった。


 それまでの小さな文字だけではない。


 俺の正面に、十枚の縦長の枠が並ぶ。


 一列では収まらず、上下に五枚ずつ。


 それぞれの枠に、一人の姿が映っていた。


「出た」


「十人?」


「いる」


「見えるのは夜斗だけ?」


「たぶん」


 ヴィオラが俺の視線の先へ手を振る。


 その手は表示を素通りした。


「私には何もないよ」


「俺が全部読む」


 十人とも、ぼやけていない。


 姿も。


 名前も。


 二つ名も。


 能力の短い説明も。


 同じ精度ではっきり表示されている。


 左上の一人から確認する。


 大柄な男。


 厚い防具を着け、大きな盾を持っている。


「最初は、戦闘に向いてそうな人。防御と護衛に関係する能力がある」


「名前は?」


 俺は表示された名前を読み上げる。


 二つ名と能力概要も、省略せず伝えた。


 ミネットが書く。


 その隣は、細身の女性だった。


 薬草と治療に関係する能力を持っているらしい。


 三人目は、土や作物を扱うことに向いた人物。


 四人目は道具の修理と加工。


 五人目は、魔法現象の記録と解析。


 下の列にも、別の五人が並んでいる。


 戦闘へ役立ちそうな人物。


 街での交渉へ向いていそうな人物。


 運搬や採取に力を発揮しそうな人物。


 生活を整える能力を持つ人物。


 今の《淫獄》にあれば助かるものばかりだった。


「全員R?」


 ヴィオラが尋ねる。


「全員」


「一人だけ高い人はいないんだ」


「うん」


「では、等級だけで選ぶことはできません」


 ミネットが記録する。


「能力も、どれも使えそうだ」


 自分で言ってから気づいた。


 使えそう。


 最初に出てきた感想が、それだった。


「今の言い方、よくない?」


「役に立つかを考えること自体は悪くないと言っただろ」


 リゼが答える。


「それだけで人間を決めるな」


「分かってる」


 十枚の枠を見る。


 全員に名前がある。


 姿がある。


 短い説明だけでは分からない暮らしがあるはずだ。


 それでも、表示を見れば考えてしまう。


 誰が強いか。


 誰が今の問題に合うか。


 誰が街へ入れそうか。


 誰を選べば、俺たちの暮らしが楽になるか。


「最後の一人は?」


 ファステに聞かれ、下段の端へ視線を移す。


 そこで、止まった。


 女性だった。


 成人に見える。


 黒に近い髪を後ろでまとめ、身体へ沿う暗い色の衣服を着ている。


 装飾は少ない。


 目立つ武器もない。


 立ってはいなかった。


 片膝をつき、片手を床へ置いている。


 顔色が悪い。


 唇は血の気を失い、その端に黒ずんだ赤い跡が残っていた。


「夜斗?」


 リゼが呼ぶ。


「女の人」


「それは声で分かった」


「具合が悪そう」


「表示の中で?」


「膝をついてる。顔色も悪い」


「怪我ですか?」


 ファステが尋ねる。


「分からない。口元に、血みたいなものがある」


 名前を読む。


月野アヤメ


レアリティ:R


二つ名:《毒を飲み込む隠者》


「月野……」


 日本人の名前に見える。


 エウリオの地球のように、似た名前があるだけかもしれない。


 同じ日本から来たとは限らない。


「二つ名は?」


 ミネットが尋ねる。


「《毒を飲み込む隠者》」


 食堂が静かになる。


「毒?」


 ヴィオラが顔をしかめた。


「能力の説明は?」


 表示を読む。


情報収集、潜入、変装、追跡回避に適性を持つ。


複数の毒に対する耐性を育てている。


「街へ入るのに向いてそう」


 ヴィオラが言った。


 誰もすぐには返事をしなかった。


 今、俺たちが必要としているものと重なりすぎている。


 情報。


 潜入。


 変装。


 追跡を避ける力。


「これが、選ぶ理由になるのか」


「なり得る」


 リゼが答える。


「ただし、それだけでは決めるな」


「分かってる」


「毒への耐性を持っているのですか?」


 ミネットが尋ねる。


「育てている、って書いてある」


「完成しているとは書かれていません」


「うん」


「《毒を飲み込む》って、毒を食べても平気って意味?」


 ヴィオラが聞く。


「分からない」


「口元の跡は?」


「血かもしれない。毒かもしれない。ただの汚れかもしれない」


「今の姿か、二つ名に合わせた表示かは分かりません」


 ミネットが言う。


 表示の中のアヤメは動かない。


 静止した姿なのか。


 今この瞬間を映しているのか。


 呼吸しているのかさえ分からない。


「ほかの九人も、今の姿なの?」


 ヴィオラが聞く。


「分からない」


「なら、この人だけ特別に危険とは決められないよね」


「そうだな」


 ほかの九人にも、俺たちには見えない事情があるはずだ。


 十人のうち一人だけを、姿が苦しそうだから選ぶ。


 それが正しいとも限らない。


「候補を、もう一度最初から確認する」


 俺は言った。


「今決めないの?」


 ヴィオラが尋ねる。


「決められない」


「時間制限は?」


「まだ出てない」


「表示は消えそうですか?」


 ミネットが聞く。


「今のところは」


「なら、全員の情報をもう一度確認しましょう」


 十人の名前。


 姿。


 二つ名。


 能力。


 一人ずつ、最初から読み直す。


 誰の表示もぼやけていない。


 誰か一人だけ、説明が少ないわけでもない。


 全員が同じR。


 全員に、今の《淫獄》で役立ちそうな何かがある。


 だからこそ、簡単には選べなかった。


 最後にもう一度、月野アヤメの枠を見る。


 暗い衣服。


 床へついた手。


 力の入っていない口元。


 黒ずんだ赤い跡。


 情報収集や潜入に向いている。


 街へ行けなくなった俺たちには、都合がよすぎる能力だった。


 けれど、それより先に気になるものがある。


「これ、本当に表示だけなのかな」


「何が?」


 リゼが聞く。


「この人、今もどこかで膝をついてるんじゃないかって」


「確認する方法はない」


「分かってる」


「選べば確認できます」


 ミネットが言った。


「ですが、確認するために選べば、ほかの九人は選べません」


「うん」


「反対に、別の方を選べば、月野アヤメさんの状態は確認できません」


「それも分かってる」


 分かっていることが増えるほど、選びにくくなる。


 街へ行ける誰かが欲しい。


 その理由だけで選んではいけないと思っていた。


 けれど今、表示の中には、街へ行くのに向いていそうな女性がいる。


 そして、その女性は死にかけているようにも見えた。


 本当に危険なのかは分からない。


 表示の演出かもしれない。


 毒に強いことを示しているだけかもしれない。


 それでも、見てしまった。


 知らなければ、気にせずにいられた。


 十人を見たことで。


 俺たちには、一人を選ぶ理由だけでなく。


 一人を選ばずにはいられなくなる理由まで、でき始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。