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このスキル、やばスギル。 ~ガチャ沼に堕ちたら俺の負け~  作者: 明日乃風
第十二章 「向こうから、つながった」

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第130話 見張るのは、面倒だ

 誰も来ない入口を見続けるのは、思っていたより疲れる。


 何も起きていない。


 それ自体は、いいことのはずだった。


 けれど、灰色の通路から一度でも視線を外すと、その間に何かが入ってきたような気がする。


 振り返っても、誰もいない。


 また通路を見る。


 そんなことを何度か繰り返していると、隣に立っていたリゼが言った。


「落ち着かないなら、交代するか?」


「まだ時間じゃないよ」


「さっきから何度も後ろを見ている」


「何か来てないかなって」


「後ろから来るなら、見張る場所を間違えているぞ」


 それはそうだった。


 俺たちが警戒しているのは、門前空間の奥に融合した灰色の通路だ。


 背後には壁門。


 その先には、皆が暮らす敷地と邸宅がある。


 融合入口へ目を戻す。


 今日も灰色の石壁が続いている。


 近くには、昨日倒した魔物が人間を引きずろうとした爪痕が残っていた。


「これ、ずっと続けるのは無理だよね」


「見張りをか?」


「うん」


 交代すれば、一人当たりの時間は減らせる。


 それでも、誰か一人は必ずここにいなければならない。


 食事をしている時も。


 眠っている時も。


 菜園を見ている時も。


 外へ行く相談をしている時も。


 魔物が来るかもしれないというだけで、全員の生活が少しずつ入口へ引っ張られている。


「一人で見張るには危険だ」


 リゼが言う。


「二人ずつなら、余計に人手を取られる」


「見張らなくても、来たことだけ分かればいいのかな」


「それができるならな」


 俺たちだけでは決められず、交代時間より少し早く邸宅へ戻ることにした。


     ◇


「誰かが見張らなくても、何か入ったら音が鳴るようにできない?」


 ヴィオラが言った。


「糸を張って、鈴をつけるとか」


「鈴がない」


「買いに行く?」


「通常入口は閉じたままだよ」


 水場へつながる通常入口は、まだ使っていない。


 地上側の地下入口から街へ出ることもできるが、探索者組合が閉鎖している場所を俺たちの出入りに使うのは話が違う。


「今ある物で作るしかないね」


 レイナが立ち上がった。


「壊れた囲いの木材は使えると思う。紐も少し残っていたはずよ」


「音を鳴らす物は?」


 ファステが尋ねる。


「空いた容器なら、いくつかございます」


「金属は取られるかもしれないよ」


 前に来た魔物は、壁門の金具や道具を持ち去ろうとした。


 警戒のために置いた物が、魔物を呼び寄せることもあり得る。


「奪われない物を選ぶのではありません」


 ミネットが言った。


「奪われても、動かされても、壊されても、こちらへ分かる形にします」


「壊されても役に立つの?」


「壊されたことが分かれば、知らせる役目は果たしています」


 侵入を止める物ではない。


 魔物を倒す物でもない。


 ただ、来たことを知らせる。


 目的をそこまでに絞れば、今ある物でも作れるかもしれない。


 千代が紙を出した。


「一つの仕掛けへ頼るのも危ういな」


「何個も作る?」


「入口に近い方が壊されたとしても、次が鳴ればよい。場所を分けよう」


「全部鳴ったら、うるさそう」


「聞こえぬよりはよい」


 必要な材料を並べた。


 壊れた菜園の囲い。


 壁門から外れた金具。


 余っている紐。


 小石。


 空の容器。


 薄い木片。


 生活に必要な物や、ナーヴァが自分の金で買った家具には触れない。


 門前空間へ置いても困らない物だけを使う。


「我が金で、もっとよい物を買えばよい」


 ナーヴァが言った。


「今は買いに行けないし、最初から立派な物を作っても使えるか分からないよ」


「我の椅子は使えておる」


「あれは使う物だって分かってたから」


「これは使う物ではないのか?」


「魔物がどう壊すかも分からないから、まず試す物」


 ナーヴァは納得していないようだったが、自分の金を出すとは重ねて言わなかった。


     ◇


 最初に作った仕掛けは、紐へ木片を結びつけただけのものだった。


 紐が引かれると、木片が落ちる。


 落ちた木片が、空の容器を叩く。


 それだけだ。


「思っていたより簡単ですね」


 ファステが完成した仕掛けを見る。


「簡単じゃないと、壊されたたびに直せないから」


 レイナは紐の長さを調整していた。


 融合入口から壁門までの間へ、同じような仕掛けを複数置く。


 どこか一つだけ壊されても、別の場所で音が鳴るようにする。


 固定前室門から来た組合の人が、毎回すべてに引っかかるのも困る。


 片側には細い通路を残した。


 床へ木片を並べ、人が歩く場所だと分かるようにする。


「こっちだけ安全な道にできない?」


 ヴィオラが通路を指す。


「魔物が目印を理解しないとは限りません」


「人間用って書いたら?」


「読めるのですか?」


「読めた方が問題だ」


 リゼが灰色の通路を見たまま答えた。


 人間用の通路は、安全な道ではない。


 探索者組合の人が、仕掛けを壊さずに歩くための場所だ。


 魔物がそこを通らない保証はなかった。


「夜斗」


 ナーヴァが呼ぶ。


「何?」


「何か来るぞ」


 全員の手が止まった。


 俺には何も聞こえない。


 リゼも剣へ手をかける。


 しばらく待った。


 灰色の通路には、何も現れない。


「どこ?」


「奥だ」


「魔物?」


「分からぬ」


 ナーヴァは通路を見たまま答えた。


 やがて、遠くで石が転がるような音がした。


 しかし近づいてはこない。


「設置を続ける?」


「続けるなら、護衛が必要だ」


 リゼが言う。


 俺はナーヴァを見る。


「今日は頼んでいい?」


「今日は、か」


「ずっと門番をやって、じゃない。今の作業中だけ」


「よかろう」


 ナーヴァは融合入口の正面へ立った。


 人型のままだが、その背中だけで少し安心できる。


「来たら教えて」


「先ほども教えた」


「倒す前に教えて」


「面倒だな」


「頼む」


「分かった」


 返事があったので、俺たちは作業へ戻った。


     ◇


「では、動かします」


 設置を終え、ヴィオラが壁門側から棒で紐へ触れた。


 木片が落ちる。


 空の容器へ当たる。


 乾いた音が、門前空間へ響いた。


「聞こえた」


「ここではね」


 今度は全員で壁門の内側へ戻る。


 ヴィオラだけが門前空間に残り、もう一度仕掛けを動かした。


 音は聞こえた。


 だが、小さい。


「何か鳴った?」


 ファステが首を傾げる。


「話していたら気づかないかもしれないな」


 紐の位置と、木片の大きさを変える。


 二度目に鳴らす。


 今度は大きすぎた。


 邸宅の中から、何かが落ちる音がした。


 確認すると、縁が驚いて箱へ飛び込んだ拍子に、低い棚の上の物を落としていた。


「ごめん、縁」


 俺が箱をのぞくと、奥から目だけがこちらを見ている。


「知らせることと、住民を毎回驚かせることは別です」


 ミネットが言った。


「調整するたびに別が増えるね」


 ヴィオラが笑う。


 音を少し抑える。


 壁門の近くでははっきり聞こえ、邸宅内でも静かにしていれば気づける程度。


 完璧ではない。


 それでも、誰かが融合入口を見続けるよりはましだった。


「一度、誰も見ていない状態で試します」


 ミネットが提案した。


「本当に?」


「見張らずとも分かるようにするための仕組みです」


「見てないと落ち着かないんだけど」


「それでは試験になりません」


 千代にも言われ、全員で壁門より内側へ戻った。


 リゼはすぐ動けるよう、壁門の近くに立つ。


 ナーヴァも自室へ戻らず、広場に残った。


 俺は邸宅へ入った。


 椅子へ座る。


 壁門の方を見る。


 何も聞こえない。


 少し待つ。


 やはり何も聞こえない。


「確認に行っていい?」


「まだ始めたばかりです」


 ミネットが記録帳から目を上げる。


「壊れてるかもしれない」


「壊れた音は聞こえませんでした」


「音を鳴らさずに壊されたかも」


「その場合、今回の仕組みでは確認できません」


「やっぱり見に行った方が――」


 乾いた音が響いた。


 一つ。


 続いて二つ。


 木片が容器を打つ音。


 全員が立ち上がった。


     ◇


「決めたとおりに動いて!」


 俺が言う。


 ファステとレイナ、ヴィオラ、千代が邸宅内へ入る。


 ミネットは、椅子の下にいた縁へ声をかけた。


「縁」


 抱き上げようとはしない。


 ミネット自身が邸宅の奥へ移動すると、縁もその後を追った。


 俺とリゼ、ナーヴァは壁門へ向かう。


 すぐには開けない。


 内側から門前空間の音を聞く。


 硬いものが床を叩く音。


 魔物の低い声。


 それとは別に、一定の間隔で続く複数の足音があった。


「一体ではないな」


 リゼが言う。


「魔物?」


「分からぬ」


 ナーヴァの答えは、設置中と同じだった。


 俺は壁門を少しだけ開いた。


 最初に見えたのは、灰色の小型魔物だった。


 魔物は俺たちを見ていない。


 融合入口の方を向き、身体を低くしている。


 警戒しているようにも見えた。


 その向こうから、何かが歩いてくる。


 人の形をしていた。


 けれど、人間には見えなかった。


 顔は滑らかすぎる。


 表情がない。


 首と指の関節には、細い継ぎ目が見えた。


 色の薄い硬質な身体へ、簡素な衣服のような布をまとっている。


 人形だ。


 そう思った。


 人形は灰色の魔物を見ても足を止めない。


 一定の歩幅で門前空間へ入る。


 後ろから、さらに小さな影が四つ現れた。


 最初の人形よりずっと小さい。


 人間の腰より少し低いくらいだ。


 一体は石。


 一体は木。


 一体は固めた土。


 最後の一体は金属。


 素材の違う四体が、二列になって歩いている。


 四体が支えているのは、木枠へ布を張った簡素な吊り寝台だった。


 足場は灰色の石なのに、寝台はほとんど揺れていない。


 四体の歩幅も、足を置く瞬間も、ぴったり揃っていた。


 吊り寝台の上には、一人の男が横になっている。


 暗い赤褐色の髪。


 灰緑色の目。


 目元には、眠れていないような薄い疲れが残っている。


 服は動きやすそうだが、身体を締めつけない作りになっていた。


 靴は脱ぎ、寝台の端へ揃えて置かれている。


 さらに後ろから、もう一体の人形が現れた。


 こちらは黒い金属に近い身体をしている。


 最初の一体より少し大きい。


 同じように人間の姿をしているが、肩や腕の太さが明らかに違った。


「ゴーレム?」


 俺の声を聞き、吊り寝台の男がこちらへ顔を向けた。


 それより早く、灰色の魔物が動いた。


 最初の人形ではない。


 小さな四体でもない。


 魔物が飛びかかったのは、吊り寝台の上にいる男だった。


「危ない!」


 俺が叫ぶ。


 男は起き上がらない。


 命令もしなかった。


 それでも、六体のゴーレムは同時に動いた。


 小型の四体が膝を曲げる。


 吊り寝台が傾くことなく床へ下ろされた。


 色の薄い人形が魔物の前へ入る。


 黒い人形は寝台の横へ立ち、男との間を塞いだ。


 魔物の爪が、色の薄い人形の腕へ当たった。


 硬い音が響く。


 人形の腕は、ほとんど動かなかった。


 次の瞬間、人形が魔物の前脚をつかむ。


 振り回すような大きな動きはない。


 身体を半歩ずらし、魔物の勢いをそのまま床へ向ける。


 灰色の身体が石へ叩きつけられた。


 床が震える。


 魔物が起き上がろうとする。


 人形はその背へ片膝を置き、首の近くを押さえた。


 灰色の爪が床を削る。


 それでも、人形の身体は揺れない。


「強い……」


 リゼが剣を抜いている。


 だが、割って入らなかった。


 黒い人形は戦いへ加わらず、吊り寝台の男を守り続けている。


 小型の四体は寝台から手を離し、左右へ並んでいた。


 逃げるための道を作っているようにも見える。


 誰も指示を出していない。


 最初から、何をすればよいか決まっていたように動いていた。


 色の薄い人形が、魔物の身体をもう一度床へ押しつける。


 鈍い音がした。


 魔物の動きが止まる。


 人形は追撃しなかった。


 ゆっくり立ち上がり、吊り寝台の前へ戻る。


 黒い人形も、男を守る位置から動かなかった。


「今のも、ゴーレムなのか?」


 俺が聞く。


 吊り寝台の男が、床に置かれたままの姿勢で答える。


「そうだよ」


「四体とは動きが違う」


 リゼが言った。


「役割が違うからね」


「命令していなかったように見えた」


「毎回言うのは面倒だろう?」


 男は当たり前のように答えた。


 色の薄い人形が、倒した魔物から少し距離を取る。


 黒い人形は俺たちを見ていた。


 表情はない。


 それでも、俺たちが武器を向けるかどうか観察しているように感じる。


「警戒はしていいよ」


 男が言った。


「ただ、いきなり攻撃されると説明が増える。できればやめてほしい」


「こっちの台詞だ」


 リゼは剣を下ろさなかった。


「何者だ」


 男が少しだけ首を動かす。


 その視線が、俺へ向いた。


 ぞくりとした。


 敵意ではない。


 殺気でもない。


 もっと遠いところから、こちらの存在へ触れられたような感覚。


 前にも一度あった。


 ずっと前。


 誰かの視線を探しても、何も見つからなかった。


 どこかから見返された気がした、あの感覚。


 今は違う。


 見ている相手が、目の前にいる。


「……前にも、俺を見た?」


 男が目を細めた。


「見に行った覚えはないよ」


「でも、前にも同じ感じがした」


「君の方から、妙な反応が届いていただけだ」


「俺の方から?」


「正確には、君が持っているものから、かな」


 男はまだ起き上がらない。


「いつから気づいてた?」


「かなり前に一度」


「じゃあ、なんでその時は来なかったの?」


「弱かったから」


「何が?」


「反応が」


 俺には、その反応が何なのか分からない。


 男は知っているようだった。


「弱かったから、放っておいた」


「今は違う?」


「ずいぶん強くなった」


 入口が融合してからだろうか。


 灰色の通路が《淫獄》へ触れ、魔物が入ってくるようになった。


 その変化と、男が感じた反応が関係しているのかもしれない。


 でも、まだ何も分からない。


「名前は?」


 俺が聞く。


「人へ聞く前に、自分から名乗るものではないのか?」


「黒瀬夜斗」


 男の眉が、ほんの少し動いた。


「クロセ・ヤト」


 発音を確かめるように繰り返す。


「そっちは?」


「エウリオ・ハーバー」


 聞き覚えのない名前だった。


 この世界の名前なのか、それとも別の場所の名前なのかも分からない。


「何をしに来た?」


「話をしに来た」


「何の話?」


「君と、この場所について」


 エウリオは融合入口を見る。


 次に、警戒用の紐と木片、空の容器へ視線を移した。


「これ、君たちが作ったの?」


「何か入ったら、音が鳴るようにした」


「なるほど」


「何?」


「見張り続けるよりは楽そうだ」


「そのために作ったんだよ」


「いい考えだと思う」


 初めて、少しだけ興味を持ったように見えた。


 リゼはまだ剣を持っている。


「話をするなら、まずお前が敵ではないと示せ」


「君たちを襲うために、わざわざここまで来たわけではないよ」


「それだけでは証明にならない」


「証明のために何かするのも面倒だな」


 色の薄い人形が、わずかにエウリオへ顔を向けた。


 言葉を理解しているように見える。


 黒い人形は、変わらず俺たちとエウリオの間に立っていた。


「その二体は、自分で考えてるの?」


 俺が聞く。


「その説明も必要?」


「必要」


「なら、あとでまとめて話す」


「今じゃないの?」


「ここは話をする場所として安全なのか?」


 言われて、融合入口を見る。


 さっき魔物が一体出てきたばかりだ。


 警戒設備も一部が崩れている。


 壁門の内側へ入れるかどうかも決めていない。


「すぐ中には入れられない」


「それでいいよ」


 エウリオは不満を見せなかった。


 招かれていないのに、壁門へ進もうともしない。


「少なくとも、君たちが僕を信用していないことは分かった」


「怒らないの?」


「初対面の相手を簡単に信用する方が、あとで面倒になる」


 その考え方には、少し納得できた。


「でも、前は放っておいたんだよね」


「そうだね」


「来るのが面倒だった?」


「かなり」


 即答だった。


「なのに、今は来た」


「言っただろう。反応が強くなった」


「それだけ?」


 エウリオが、面倒そうに息を吐く。


「それでも、しばらくは無視していた」


「どのくらい?」


「数えない方が楽だから、数えていない」


「じゃあ、なんで今日来たの?」


 エウリオは灰色の通路と、《淫獄》の壁門を見比べた。


「無視し続ける方が面倒になったから」


 その言葉に合わせるように、小型ゴーレム四体が吊り寝台を持ち上げた。


 立ち上がったのは、エウリオではない。


 それでも寝台は揺れず、元の高さへ戻った。


「この灰色の通路が何なのか、知ってる?」


 俺が尋ねる。


「知っているよ」


 初めて、はっきりした答えが返ってきた。


「じゃあ、教えて」


「そのために来た」


 エウリオは、壊された警戒設備を見る。


「ただ、その前に場所を変えた方がいい」


「まだ中へ入れていいか決めてない」


「なら、ここで待つよ」


「魔物がまた来るかもしれない」


「来たら、この二体が処理する」


 エウリオの前後に立つ人形を見る。


 色の薄い一体。


 黒い一体。


 どちらも人間に近い姿をしている。


 けれど、その身体から感じるものは、さっきの小型魔物よりずっと危険だった。


「その二体、かなり強い?」


「僕が自分で戦わなくて済むくらいには」


「自分では戦えないの?」


「必要がなければ、やらない」


 できないとは言わなかった。


 エウリオはもう一度、融合入口を見る。


「君、ずいぶん面倒なものとつながったね」


「それが何なのか、まだ聞いてない」


「次に話すよ」


「今話して」


「順番に説明した方が、同じ質問へ何度も答えなくて済む」


 俺が黙ると、エウリオは少しだけ笑った。


「それに、君たちも見張るのは面倒なんだろう?」


 今日作った警戒設備は、確かに役に立った。


 誰も入口を見ていない間に鳴り、何かが来たことを知らせた。


 ただ、最初に知らせたのは魔物だけではなかった。


 灰色の通路の正体を知る男。


 俺がずっと前に感じた、見返された感覚の相手。


 エウリオ・ハーバー。


 俺たちはまだ、その男を壁門の内側へ入れていない。


 それでも、話を聞かずに帰すこともできそうになかった。

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