96.木漏れ日の空間
「さすがにあの森では違う敵が出てくるよな…たぶん。」
「ソウダト思イタイナ。」
あそこでファイアフラミンゴが火の玉を吐いたら森林火災になるしな。
…いや、それを引き起こしてでもこちらを殺しにくるかもしれないが。
フラミンゴを引き寄せて地面に叩きつけたり
極稀に飛んでくるモモンガを処理したりしながら歩き続け、
森が近づいてくるとアビンザのダンジョンとは違う点が見えてきた。
「こっちの森は随分と木が大きいんだな。」
「ソノヨウダナ。」
「低いところに全然枝がない…これを登るのは大変そうだ。」
「ソウカモシレナイガ登ルコトモナイダロウ?」
「…ないな。まぁ木がでかい分、間隔が広くて歩きやすそうだ。」
「ソウダナ。敵次第デハアルガ。」
森に足を踏み入れる前に上方から何かが飛んできた。
こんな風に前から飛んで来てくれれば対処もしやすいんだが…
飛んできた何かを掴んで見てみると、鳥の羽根のようだった。
さすがに何の種類かまではわからない。
上に注意しながら更に進むと同じように羽根が飛んでくる。
射出元を可視魔子で見ると、楕円形の輪郭に耳のような飛び出た部分がある鳥が
高い枝に止まっていた。あれはミミズクだな…飛行してないじゃないか。
まぁ門番も大まかに説明したんだろうなどと考えながら置換で手元に引き寄せて
両手でガッチリと羽を押さえて捕まえる。足をバタつかせ、
その顔はびっくりしているように見えるがフクロウやミミズクは
元々驚いたような顔をしていることも多いので鳥の心情はわからない。
クロワシミミズク:C
カリファミナミのダンジョンに生息する猛禽類。
自らの羽根を高速で飛ばす攻撃を繰り出してくる。
風切り音を発生させないため、聴覚で察知するのは困難を極める。
なお、羽根は再生するので尽きることはない。
ドロップ
・フクミミの止まり木
クロヒョウはレア種だったがこいつは表記がないし違うんだろうな。
フクミミの止まり木:C
柄の長いハンマーのような形をした木製の杖。
それなりに頑丈なので近接の戦闘にも使える他、
地面に刺せばそのままフクロウやミミズクの止まり木として使える。
混ぜたことによって別物みたいな名前になっている…
フクロウやミミズクはかわいいし肩に乗せていてもいい気もするが、
これ以上オプションパーツを増やすと面倒ごとが増えるかもしれない…
涙を飲んでやめておくことにした。
「ドウシタ?何カ落チ込ンデイルヨウニ見エルガ。」
「いや、鳥を肩に乗せるのもいいかと思ったんだが
目立ちすぎるからやめておこうかなと。」
「ソレハ英断ダナ…我デ我慢シテクレ。」
「我慢というか俺にはヨルムで充分だ。」
「フフ…」
引き続き森の中を歩いて行くがかなりの頻度で羽根が飛んでくる。
その度に置換で引き寄せて倒してドロップを拾った。
ヒョウみたいに魔子がなくなったら直接襲い掛かってきてくれるなら
放置して歩いていてもいいんだが…いちいち迎撃するのが面倒になってきたので
コレクト分は充分に集まったしそのまま無視して進むことにした。
「ここのダンジョンは実力よりも忍耐力が必要というコンセプトなんだろうか?」
「違ウトハ思ウガ我モ少シ飽キテキタゾ。」
「まあ森を抜けたらまた別の敵がいると思って頑張ろう。」
「ソウダナ。我ハジットシテイルダケダガ。」
羽根が飛んできても全く上を見ない時間がしばらく続き、ふと気が向いたので
上を向いてみるとミミズクの輪郭の他にモモンガも飛んでいることに気付いた。
今度は単体で攻撃してきたのか。群れは本当にレアだったのかもしれない。
巾着の方はちょっとした袖の下に向いてそうなので置換で手元に引き寄せてから
足を掴んで木にビターンと叩きつけてやった。少し気分がすっきりした。
この薄暗い空間が気分をマイナス方向に加速させているのかもしれない。
そう思い至ったので近くに生えてきた木を引っこ抜いてぶん回してやった。
周りの木々が音を立てて倒れ、広々としたスペースが確保できた。
鬱蒼とした森に光が差し込み、気分も晴れてきた。ついでだから一休みするか。
「自然が一番だとは思うが無理やり作った木漏れ日も悪くないな。」
「木漏レ日トイウカ直射日光ダガナ…」
「これも木々の間から差し込んでくる日光のはずだ。
少々ここだけ間隔が広くなってしまったが…」
「…木漏レ日デイイ。セッカクノイイ気分ニ水ヲ差スモノデハナイナ。」
「蛇が日光浴するのは聞いたことがあるがヨルムも好きなのか?」
「長イ間海ノ底ニイタカラナ。慣レテハイナイガ心地ヨイ。」
「そうか、わざわざこの空間を作った甲斐があった。
普段は日の光を浴びないここの草も喜んでいるだろう。」
「草ガ喜ブカハ知ラナイガ我ハ喜ンデイルゾ。」
「よかったよかった。
そういえばここの木は持ち上げても図鑑に入らないんだな。」
「ダンジョン内ノモノハソウナッテイルノデハナイカ?」
「そうかもな。ダンジョン内にいい木があったらヨサクも大変そうだし。」
「ソモソモアノ男デハ森マデ辿リツケナイダロウ…」
森の中の草むらで寝転がってしばらくのんびりと過ごした後、
意を決して再び森の中を進むことにした。




