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92.子供の依頼主

アマンダから受け取った手紙に目を通す。


「ぼうけんしゃさんへ

 うちのみーちゃんをさがしてください。

 みーちゃんはぜんしんがまっくろであかいくびわをしています。

 よろしくおねがいします。

 りじー」


平仮名ばかりの手紙に思わず口元が緩んでしまう。

地図の方を見るとリジーの家は町の南西部にあるようだ。

その周辺で猫を探していけば大丈夫そうだな。

とりあえずはリジーの家に向かって歩き出す。


『赤い首輪を着けた黒猫か。他に似たような猫がいても少ないだろうな。』


『ソウダトイイナ。トコロデ、猫好キハワカッタガ犬ハドウナノダ?』


『犬か、犬もいいぞ。見た目がかわいい、仕草がかわいい、鳴き声がかわいい、

 肉球がプニプニで感触がいい、毛がフワフワで触り心地がいい上に温かいし…』


『ドコカデ聞イタヨウナ話ダナ…モウイイ。

 猫ノ時モソウダッタガ一部ハ種類にヨルノデハナイカ?』


『そうだけど好きということが伝わればいいかと思ってつい勢いでな…』


『ドウニカ蛇ノママデ魅力ヲ高メルコトハデキナイダロウカ…』


『だからヨルムはそのままでいいって。』


『フフ…』


ヨルムが単純で助かってるんじゃなくてそれを言わせるようにヨルムが俺を

誘導しているのかもしれない。まぁヨルムになら騙されてもいいか。



リジーの家周辺は住宅街というか家が密集している地帯だった。

アビンザの町は店のほとんどが大通りに面している所にあるようで、

その他の場所は大部分が住宅となっている。…大体どこもそんなもんか。


家の前まで来たので可視魔子(カシマシ)を発動させて猫を探そうとするがうまくいかない。

一般人やペットよりも家に使われている素材の方が魔子が多いようで、

透かして見ることはできなかった。


『この住宅密集地帯で肉眼だけが頼りとなると

 思ったより骨が折れそうな依頼だな…』


『サスガノ我モ建物ヲ透カシテ見ルコトハデキナイナ。

 生物ノ魔子ダケヲ見ル魔法ハナイノカ?』


生き物の魔子だけを見る魔法か…生物も無生物も

魔子自体に違いがない以上は量で判断するしかないしな。

あまり気は進まないが無生物だけを透かしてみることにしようか。


不可視無生物(オッパイミホウダイ)


建物はおろか地面まで透明に見えるようになった。

視覚的には宙に浮いているように見えるので不思議な感覚だ。


日も高いというのに男女の営みをしている者達も目に入るので

可視魔子(カシマシ)を併用しておく。これで最低限のプライバシーは守られるだろう…

我ながらひどい名称になってしまったが案外的を射ているかもしれない。


『ソレハドノヨウナ魔法ナノダ?』


『簡単に言うと無生物が見えなくなる魔法だな。』


『ナルホド…建物ニブツカラナイヨウニ注意ガ必要ダナ。』


確かに使ったまま歩いたらあちこちぶつかることになるか…


『…気をつけるよ。』


不可視無生物(オッパイミホウダイ)を発動したり解除したりしながら

探していくがなかなか黒猫は見つからない。

やっと見つけて近づいてみると首輪の色が違った。

ミーではなかったがしばらく戯れてから次を探し始める。


『イチイチソンナコトヲシテイテハ日ガ暮レテシマウゾ。』


『悪い悪い、わかってはいるんだがついな。』


その後も同じように探していると町の南西部の隅で開かれていた猫会議の中に

黒猫を見つけることができた。近づいて首輪を確認すると赤色だった。

この猫がミーだろう。たぶん。


ミーを優しく抱いてリジーの家に向かう。

人に慣れているのか逃げないのがありがたいな。


『ああ、フワフワで温かい…愛玩動物には人を癒す何かがあるな。』


ミーを撫でながら呟いた。


『ソウハ言ウガ猫ヤ犬ガ敵トシテ襲イカカッテキタラドウスルノダ。』


『その時は倒すさ。ジャッカルもチーターもヒョウも散々倒しただろう?』


『シカシアヤツラハ大キイデハナイカ。』


『俺にとっては似たようなものだ。

 襲い掛かってこないならペットにしてもいいんだが…』


(ソノ割ニハ捕マエテカラ一度モ図鑑カラ出シテイナイガナ…)


リジーの家に到着したのでドアをノックする。

扉を開けてこちらを覗いたのは大人の女性だった。

訝しげにこちらの顔を見ている。


「あの…何か御用ですか?」


「リジーの依頼を受けた冒険者だ。この猫がミーで間違いないか?」


「え!?あ、ミーシャ!間違いないです。

 ありがとうございます!リジー!リジー!」


ミーは愛称だったのか…

女性が呼びかけると小さな女の子が部屋から出てきた。


「どうしたのー?」


「冒険者の方がミーシャを探してきてくれたわよ。よかったわね。」


「本当!?」


女の子が扉を開いてくれたので猫を手渡した。


「みーちゃん、どこにいってたの?おじちゃん、ありがとー!

 いまおかねをもってくるね!」


「どういたしまして。報酬はいらないよ。ミーシャを大事にするんだぞ。」


「そうなの?みーちゃんはこれからもだいじにするよ!」


「そうか、よかった。依頼も済んだしこれで失礼するよ。」


そう言って踵を返して歩き出す。


「ありがとうございました。」


「おじちゃん、ありがとー!ばいばーい!」


ヨサクの話だと今回のような場合は組合に行かなくてもいいはずなので

このまま酒場に向かうことにした。いつの間にか日も暮れ始めているしな。


『図鑑に新しいページが増えることもなかったけど

 こういう依頼もいいものだな。』


『ソウカモシレナイナ。』


『たまにはヨルムも撫でた方がいいか?』


『手隙ノ時ニハ是非頼ム。』


『いつもは大変だからたまにくらいにしてくれ…』


『仕方ガナイナ…』


頭と顎を指で挟んで同時に撫でるとヨルムは気持ち良さそうに目を細めていた。

今日は一日中動いていたからさぞかしビールがうまいだろうな。

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