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88.返ってきた日常

宿に戻るとちょうどラナが出てくるところだったので一緒に酒場に向かう。


「もう透明にならなくていいの?」


「カバドはもう出発したからな。姿を隠す必要もないだろう。」


「私としては兵士に頼まれた手前、

 まだ一緒にいるところを見られるのは遠慮したいんだけど…」


「それもそうか…」


解放的な刑務所(リリースプリズン)を再度発動させる。

やっと普通に食事ができると思っていただけに残念だ。


『シカシアノパレードハ凄カッタナ。狂気スラ感ジタゾ。』


「そんなに凄かったの?」


「ああ、何せ見送る人も拍手を送る人も0人だぞ。

 いくら嫌いでも形だけでも付き合う人が少しはいると思っていたんだが…」


「確かに凄いわね。私も見に行けばよかったかしら…?」


「俺と違って姿が見えるんだから行ったら拍手を強制されてたかもしれないぞ。」


「だから起きなかったのね。さすが私の体だわ。」


「…そういうことにしておくよ。」


「ポノが付いていかなくて兵士の人は大丈夫なの?」


「怪我をしないようにしておいたからたぶん大丈夫だろう。」


酒場についたので食事を済ませてラナと別れた。

解放的な刑務所(リリースプリズン)を解除して組合に向かって歩き出す。


『さて…今日こそのんびりと依頼を受けようかな。』


『依頼ハ受ケテイナカッタガ充分ノンビリシテイタヨウナ…』


『…そうかもしれない。』


『ダイタイポノガノンビリシテイナイ時ガアルノカ?』


『ほら、この前の薬草採集の時とか。忙しなく動いてただろう?』


『手ダケハナ…』


『…まぁのんびりくらいがちょうどいいんだよ。

 せっかちだったら今頃チキュー中を遊びつくして

 もう他の星に行ってるかもしれないしな。』


『ソレモソウカ。ポノノノンビリ癖ニ感謝ダナ。』


『そういうことにしておいてくれ。』


『トコロデ、コノ前ノヨウニ仕組マレタ依頼ダッタラドウスル?』


『断るさ。受ける受けないは自由のはずだからな。』


『ソウカソウカ。ナラバヨイノダ。』


『ラナはアマンダを敵視してる節があるよな…』


『ポノガアノ女ニ多少ノ好意ヲ抱イテイルヨウダカラナ。』


要は嫉妬のようなものか…手を出すわけでもないのに心配しすぎな気がするが。


『世話になってる部分もあるからな。だがまぁ…その程度だよ。』


『ソウカソウカ。ナラバヨイノダ。』


『それに言ったろう?ヨルムはいい女だと。』


『フフ…』


ヨルムを静かにさせるにはこの手が一番のようだ。

もちろん悪用するつもりはないが。



組合に着いたので中に入る。今日も冒険者の姿は少ない。

受付に人もいないのでアマンダに確認しておく。


「おはよう、アマンダ。今日は何か急ぎの依頼はないか?」


「おはようございます、ポノさん。王子の件以外はありませんよ。」


「そうか、ありがとう。」


掲示板の前に行き、目を閉じて掲示板に向き直る。今日の依頼は…これだ!

目を開けて指の先にある依頼を確認すると…


納品依頼:毒消し草1kg 100kgまで

達成報酬:200円

依頼主:商人組合


…既視感がえげつない。


『コレハモハヤ同ジ依頼ナノデハ…』


『いや、生えている場所は違うだろう…たぶん。』


希望的観測と共に紙を剥がしてアマンダに見せた。


「ええと…この依頼でよろしいのですか?」


「あまり良くないが…まぁ仕組まれた依頼よりはいいかな。」


「ちょっと何を言っているのかわからないです。

 こちらが毒消し草が生えている場所の地図です。絵も添えておきますね。」


アマンダにこの程度の皮肉は通じないようだ。


「ありがとう。行ってくるよ。」


「お気をつけて、いってらっしゃいませ。」


組合を出て渡された地図を確認すると町の南東部に印がついていた。


『いい機会だからオバンコールの木と薬草の位置も地図に書き込んでおくか。』


『ソレハイイ考エダナ。』


木と薬草の場所まで足を運ぶため、小走りで移動を開始する。

今日は気分を変えて西門から出てみた。と言ってはみたものの

今更ここ周辺の風景だけで気分が変わるものではないな。



最初の目的地であるオバンコールの木までの距離が縮んでくるにつれ、

斧で木を打つ音が大きくなってきた。ヨサクは今日も木を切っているようだ。


と思ったら今日は知らない男が木を切っていた。

どうやら依頼を受けた冒険者のようで、その手つきからは慣れが感じられない。


作業の邪魔にならないように解放的な刑務所(リリースプリズン)を発動して近づく。

木に充分近づいたので図鑑からペンを取り出して

地図のページを開いて拡大し、オバンコール伐採場と書き込んだ。


「うおっ、何で図鑑が浮かんでいるんだ?」


図鑑は透明じゃないんだったな…素早く図鑑を消し、森の奥へと進む。

名も知らぬ冒険者よ、驚かせてすまない。


人目もなくなったので移動の速度を上げる。

あまり時間をかけることなく薬草が生えている場所に到着した。

図鑑からペンを取り出して地図のページを開いて拡大し、薬草群生地と書き込む。


「よし、毒消し草を取りに行こう。」


「ソウダナ。」


渡された地図を見る限りはここからほぼ真東に毒消し草が生えているようだ。

木々を避けながら森を抜け、草原を駆け抜けて再び森に入った。

薬草の時と同じくらいまで森の奥に入り、辺りを見回すが

以前と同じく肉眼ではなかなか見つけられない。


可視魔子を発動させるとすぐにそれらしき草が見つかった…

俺は物探しが下手なのだろうか?

絵と見比べて同じ草であることを確認し、1本引き抜いてみると…


毒消し草:F

 チキュー全域に生えている草。僅かだが毒を治す効果がある。

 寒い地域にも暑い地域にも生えるその生態には謎が多い。


…こっちも既視感がえげつないが今更だ。

地図を表示し、拡大してから毒消し草群生地と書き込む。

薬草の時と同じように日が暮れるまで採集を続け、南門から町に戻った。

東門は混んでるかもしれないしカバドに会うかもしれないからな。



組合に到着したのでクロエの所に行こうとするとアマンダから声がかかった。

「ポノさん…まずいことになったようです。王子一行に

 ラナさん達が捕まって連れて行かれたと冒険者の方から聞きました。」


「本当か?…達っていうのは他に誰が?」


「ラナさん、ゴンザナシさん、マトンさんの3人です…」


思った以上に見知った連中だった。


「そうか…しかし、何でそんなことになったんだ?」


「理由はわかりませんが地竜討伐に失敗して帰還中の王子がラナさんを指差して

 兵士達がラナさんを強引に?仕方なく?捕まえたようです。」


一部が疑問形になっているが個人的な感情でそうなったのだろうか?


「誰もそれを止めなかったのか?」


「たまたま居合わせたゴンザナシさん達が止めようとしたらしいのですが、

 何故か妨害が一切兵士に通じず、一緒に連れて行かれてしまったようです。」


…それは完全に俺のせいだな。

人同士の争いには関わらないようにしないと決めていたがこれは見逃せない。

とりあえずは王子が滞在している宿に行ってみるか…

記述漏れがあったので追加しました。

王子は討伐に失敗しています。

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