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87.王子様御一行

そろそろ日も暮れようという時間に差し掛かった頃、

一つの転移装置からぞろぞろと兵士らしき人が出てくるのが見えた。

出迎えているのか、直立不動で転移装置の出口を見ている兵士もいる。


あれがバカ王子一行かもしれないと思い、近づいて様子を窺っていると

最後に白馬に乗った豪華な衣装の男が単独で出てきた。

出迎えの兵士がその男に近づいて報告を行う。


「カバド王子、例の冒険者ですが未だに居場所を掴めておりません…」


やはりあれがバカ王子らしい。ドが付くほどの馬鹿なのか。


「何!?絶対に見つけて連れて参れと言ったであろう!この役立たずが!」


カバドは激昂し、報告を行った兵士を殴った。なるほど…聞きしに勝る横暴さだ。


「余は宿に行く。明日の朝までに何としてでも見つけだせ!」


「…はっ!」


兵士は走って町に戻っていき、カバドも町の方に向かって白馬を歩かせ始めた。

残った兵士達もそれに追随している。その後に俺達もついていく。


「その冒険者とやらも余の地竜討伐に同行させてやる名誉を何故避けるのだ。」


取り巻きの兵士達は一人も相槌を打ったりせずに無言のままだった。

表面上だけでも取り繕おうとしない…本当に嫌々ついてきているんだろう。


返事がないことに業を煮やしたのかカバドが叫んだ。


「何をしている!お前達も行かんか!

 見つけられなかったらどうなるかわかっているんだろうな!?

 ついでに私が地竜討伐に赴くことを町中に広めて来い!」


兵士達は苦虫を噛み潰したような顔をして町の方へ走っていった。


「ちっ、どいつもこいつも使えん…」


この様子を見て王が何も言わないとしたらそこから挿げ替えるしかなさそうだが、

王の前でだけは振る舞いが全然違うこともありえるし簡単に判断はできないな。


カバドは北門から町に入り、北東部にある一際大きな宿に向かうようだ。

奴がそこに泊まるなら翌日まで南側には来ないだろう。

俺を探すように命じられた兵士達はそうもいかないだろうが…


『いやー…清清しいほどの横暴ぶりだったな。』


『ソウダナ。一体ドノヨウニ育テレバアアナルノカ…』


『親バカだと聞いているし甘やかしすぎたのかもな。』


『ソウカモシレナイナ。』


『ところでヨルム…【ああなる】は人の姿の時以外使わない方がいい。』


『…?ヨクワカラナイガポノガ言ウナラソウシヨウ。』


ヨルムはわかっていないようだった。…俺の頭も案外桃色なのかもしれない。


『あちこち行ってる間にいい時間になったし、飯にしようか。』


『ソウダナ。キリン肉ガ我ヲ待ッテイル。』


酒場に向かう最中、俺を探すように命じられた兵士達が走り回って情報を

集めている様子が目に入る。ついでに地竜討伐の件を広めているようだ。

悪いが俺もカバドとは関わりたくない。兵士達にはもう少し我慢してもらおう…



酒場に到着すると既にラナが食事をしていたので

隣にヨルムを置き、ラナに注文を頼んだ。


食事の最中に酒場に兵士が飛び込んできた。


「ここに地竜を討伐したことのある冒険者はいないか!?」


兵士の問いかけに一人の冒険者が答えた。


「地竜を倒せるような奴がこんな所で飯を食ってるはずねーだろ!」


「こんな所…だと?」


おっちゃんがその冒険者を睨む。


「いや…その…それらしい奴ならラナと毎日一緒にいただろ?

 何か知らねーのか?」


苦し紛れに出た言葉がラナに飛び火した。


「私は知らないわよ。この蛇もしばらく預かってくれって言われただけだし。」


「本当に知らないのか?私も本意ではないが

 その冒険者を見つけ出して連れて行かないと大変な目に遭うのでな…」


「知らないって言ってるでしょ、しつこいわね!」


ラナは強気に応対しているが強さで言えば兵士の方が上だ。

何事もなく済めばいいが…


「ではその蛇を預からせてくれないか?」


「私が預かってるのよ!勝手に他人に渡せるわけないじゃない!」


ラナは俺がどうこうではなく蛇好きのテンションになっている。


「そうか…もしその冒険者が戻ってきたら伝えてくれないか?

 カバド王子が地竜討伐に行くので助けてほしい、と。

 明朝ここを発つが、討伐までに間に合えばいつでもいいから駆けつけてくれ。」


「戻ってきたら…ね。わかったわ。」


「…感謝する。」


兵士は事を荒立てることなく去っていった。酒場の中には喧騒が戻りつつある。

見ている限りでは兵士は悪い人じゃなさそうだな…全員がそうとは限らないが

カバドに取り入ろうとしないあたり信じるに値するものがありそうだ。


食事を終えて宿に向かう。兵士達は未だに走り回っているようだ。


「地竜討伐にあの兵士達もついていくのか…」


「そうなんでしょうね…命を落とすことになるかも…」


「カバドに地竜を圧倒するだけの力がなければそうなるだろうな…

 カバド本人はどうでもいいが兵士達は助けてやりたい。」


「ポノのことだからどうにかできるんでしょう?私からもお願い。」


「言われるまでもなく何とかするさ。」



宿に戻って翌日のことを考えながらいつも通りの夜を過ごした。



翌朝、通りの方が何やら騒がしい。

まだ寝ているラナを起こさないように上下分断(ハンブンマン)を解除して宿を出る。

ちなみに開放的な刑務所(リリースプリズン)は継続中だ。


通りまで出て様子を見るとカバドがパレードのようなものを行っていた。

白馬に乗ったカバドを普通の馬に乗った兵士達がぐるりと囲み、

南門付近には兵士達が道の中央を向いて整列している。

カバドを囲んでいる先頭の兵士が大声で口上を述べていた。


「これよりカバド王子が地竜討伐に赴く!皆の者!

 王子の雄姿を拝謁し、盛大な拍手を持ってお送りせよ!」


騒がしかったのは口上のみが原因で、見送りをしている人数は0だった…

これほど人気がないのもある意味凄いことだと思うが…

カバド本人は満面の笑みを浮かべながら見えない人影に向かって手を振っていた。


見たくもないパレードを見続ける。

カバドが南門を出ると、整列していた兵士達も門の外に出て馬に乗った。


「カバド王子、ご出立!」


その号令と共にカバド一行は馬に乗って去っていく。

馬に乗ったまま戦うかはわからないが一応兵士全員とその馬に向かって

状態異常:異神の加護(カッチカチヤゾ)を発動させておいた。

継続時間はアビンザの町に戻るまでだ。


討伐が失敗に終わることを祈りつつ、

解放的な刑務所(リリースプリズン)を解除して宿に戻ることにした。

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