表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/167

64.ラナのセンス

出現した出口から外に出た。少し早い気はするが酒場に向かって歩き出すと

こちらに気付いた衛兵が話しかけてきた。


「本当に早かったですね。もう用事は済んだのですか?」


「ああ、一応目的は達成した。」


「そうですか…何にせよ無事でよかったです。」


優しい人だな。門番も衛兵も他人を気遣う人間が選ばれているようで何よりだ。


酒場についたがカウンター席にラナの姿はない。


「いらっしゃい、今日は何にする?」


「いつも通り鹿牛でいいんだが…わざわざ聞くなんて何かあったのか?」


「いや、そういうわけじゃない。ただポノには気前よく払ってもらってるからな。

 調理するのは大した手間でもないし材料の提供があるなら

 鹿牛と同じ料金で何か作ろうと思ってな。」


「そういうことか。でもタダではないんだな。」


「そりゃこっちは一応商売だからな。」


「それもそうだな。ラナもいないしいい機会だ。これを食ってみたい。」

そう言ってキリンの肉をカウンターに置いた。


「鹿牛…じゃないな。キリンか。これは美味いぞ、ステーキでいいか?」


「頼むよ。ヨルムの分もな。あと白米1つとビール2つ。」


「あいよ!先にビールな。」

おっちゃんはビールを置くと肉を切り分けて調理を始めた。


『キリンカ、初メテ食ベルナ。』


『ああ、楽しみだ。とりあえず乾杯しよう。』


『『乾杯!』』


俺もヨルムもビールを飲んで一息ついた。

傍から見ると従魔の蛇と杯を交わす変な奴に見えるんだろうな…


『今日ハヨク動イタセイカビールモイツモヨリ美味イ気ガスル。』


『ビールってのはそんなもんだ。不思議だよな。』


調理の手を止めずにおっちゃんが話しかけてきた。

「ところで、ラナちゃんにはキリンを食わせてやらないのか?」


「ああ、ラナは出来る限り自分の力で強くなりたいって言ってたからな。

 この前のクラーケンも我慢してただろ?」


「なるほどな、本人の意思を尊重してるわけだ。」


『明日モダンジョンニ行クナラ次コソダガーガドロップスルトイイナ。』


『そうだな。牙を折って倒してもダメなら別の方法か…』


「キリンステーキ2つお待ちどう!あと白米な。」


『おっ、来た来た。確かに美味そうだな。いただきます。』


『イタダキマス。』


キリンのステーキを一切れ頬張る。脂はないが口の中一杯に旨味が広がった。

噛むごとに俺こそが肉だと言わんばかりに肉の味が主張してくる。

当然白米との相性もばっちりだ。


「なるほど、こりゃ美味い…鹿牛と似ているが旨味が比べ物にならないな。」


「はは、そうだろう。キリンは高級品の部類だしな。」

そうだったのか…ランクCくらいからは高級品になるのかな?


『確カニ美味イ。味モサルコトナガラ魔子モ鹿牛ヨリ随分多イヨウダシ

 文句ノナイ一品ダ!鹿牛モ美味インダガコレト比ベテシマウトナ…』

ヨルムも気に入ってくれたようで夢中になって食べている。


「ヨルムも気に入ったようだしこれからは毎回キリンにするかな…」


「そりゃよかった。こっちも鹿牛の材料費が浮くしな!それにキリンなら

 見た目は鹿牛とあんまり差がないからラナちゃんにもわからないだろう。」

おっちゃんは冗談だか本気だかわからないことを言ってくる。


「キリンの肉を預けてた方がいいか?」


「その方がいいかもしれないな。俺を信用してくれるならだが。」


「おっちゃんは人の物をちょろまかしたりしないだろう。」


「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。ビールは出さないが。」


「そんなことを狙ってはいないさ。じゃあこれを預けておくよ。」

キリンの肉を5個ほどカウンターに置いた。


「こんなにか…これが無くなるまでは店に来てくれるんだよな?」

おっちゃんは図鑑に肉を片付けながら言った。


「今のところ他で食事をする予定はないしそう思ってくれて構わない。」


おっちゃんの図鑑は初めて見たな。

色はゴンザナシ達と同じようだが模様が違う。


他国の出身なのか商人の図鑑は模様が違うのか…

というか商人も図鑑を持っているんだろうか?

だとすると武具屋のおばちゃんがわざわざ奥から

商品を取ってきたのはおかしい気がするし…うーん、わからん。


そんなことを考えつつ聞くべきか否か迷っているとラナが隣に座った。


「ああ、お腹減った!おっちゃん、いつもの!」


「おかえりラナちゃん。先にビールだ。ちょっと待ってな。」

おっちゃんはビールを出して調理に取り掛かった。


「おかえり。今日はどうだった?うまく狩れたか?」

『オカエリ、ラナ。』


ラナはビールを呷ってから返事を返した。

「ただいま。ええ、問題なくヌーを狩りまくりよ!

 …と言いたいところだけどポノのダチョウと比べると移動が少し遅くてね。

 でもかわいい自分のダチョウだし少しずつでも成長させるつもりよ。」

かわいいが自分に係っているのかダチョウに係っているのか少し気になる…


「そうか…鞍はいい物が見つかったか?」


「とってもいい物が見つかったの!

 しかも売れ残りだからって安くしてもらえたわ!」

うん?嫌な予感がするな…


「そ、それはよかったな。明日その鞍を見せてもらっていいか?」


「もちろんいいわよ!あんなに素敵な鞍が売れ残りだなんてどうかしてるわ。」

ラナのセンスを信じることにしよう。


「鹿牛のステーキお待ちどう!」


「来た来た。いただきまーす!」


美味そうに鹿牛を頬張るラナを見て少しだけ申し訳なさを感じながらも

残りのキリン肉を食い終えた。ランクCになったら食わせてやるからな…



食事を終えて宿でいつも通りの夜を過ごす。

…明けていつも通りの朝を迎え、町の外に出た。

いよいよラナのセンスが明かされる時が来たようだ。


「これが私セレクトの鞍よ!」

そう言ってラナはダチョウを図鑑から出した。


ダチョウの背に乗せられていたのはあの日武具屋で目にしたゾウ革の鞍だった…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ