63.同じ過ち
「とりあえず疑問は解決したしクロヒョウ探しを再開しよう。」
「ソウダナ。」
そのまま壁に沿って反対側の森に向かって飛行を開始する。
しばらく進むと石畳が見えてきた。入り口の真横から壁が続いてるんだな。
入り口を見失ってしまっても壁伝いに移動すれば戻れるわけか。
反対側の森に到着したが、そのまま飛行を続けると予想通り壁があった。
ボスがいる方向以外は森で止まるようになっているのかもしれない。
残りの4分の1…もとい、半分の森を飛行して見ていくが
クロヒョウらしき魔子は発見できなかった。いる時といない時があるのか…
初回で遭遇しなかったら存在を知らないまま無視し続けていたかもしれない。
いないものは狩りようがないので崖に挟まれた道に降り立った。
「我ノ出番ダナ。」
ヨルムは意気揚々と巨大化し、俺が乗るのを今か今かと待ち構えている。
「そんなにあせらなくてもまた機会はあるだろうに。」
「ソウイウ問題デハナイノダ。デハ行クゾ。」
ヨルムは再び猛烈な速度で進み始める。
移動するヨルムから崖の上までの距離は短いため、サーベルタイガーは全滅だ。
その点ライオンは離れている場合があるので被害は少なかったと言えるだろう。
崖の間の道も平原も通り過ぎて岩山の階段に到着した。
「ヨルムが本気で移動すると周りの動物の被害が甚大だな。」
「弱肉強食トイウモノダ。」
元の大きさに戻りながらヨルムが言った。
従魔が動物を倒してもドロップ品が出るなら
この移動は選択肢に入らないんだけどな…
ヨルムはこの世界のシステムに助けられていると言ってもいい。
岩山の頂上に向かう階段を上っていく。
「ダガーのドロップ条件は何だろうな?
とりあえず召喚体を倒さずに本体だけ倒してみようと思うんだが。」
「ソレデイイノデハナイカ?出ナカッタラマタ考エレバイイ。」
「そうだな。」
階段を上りきり、白い岩のエリアに足を踏み入れる。
昨日と同じく大量の召喚体と共に地竜がこちらに向かってきた。
「置換!」
地竜の首を切断する。地竜が消えると同時に召喚体もまとめて消えた。
…が、ドロップ品は落ちていないようだ。
「これも違ったようだ。次はどうするかな…」
「ソウイエバ捕マエナクテヨカッタノカ?」
「あっ…早く言ってくれよ。」
「我モ今思イ出シタノダ。スマナイ。」
「いや、忘れてた俺が責める立場じゃない。すまなかった。」
「マタ次ノ機会ニシヨウ。」
「そうだな。次こそ忘れないようにしないと。」
出現した出口の横に手を伸ばしてみるが壁はなかった。
「…せっかくだからこの岩山周辺と平原と崖部分の壁も確認していいか?」
「構ワナイゾ。」
飛行して各所の壁を確かめていく。
岩山部分にも平原部分にも崖部分にも壁は存在していた。
崖部分に至ってはサーベルタイガーがいる部分のすぐ奥に壁があった。
見た目よりも随分狭い部分で待機してたんだな…
となると上方向も怪しいな。
天井も確かめるため高度を上げていくと予想通り壁に当たった。
外と同じような空間だと思っていたダンジョンは巨大な室内だったわけだ。
壁を確認している最中、動物の姿は見当たらなかった。
ボスを倒したので全部消えたのだろうか?
あちこち飛び回っていたせいでいつの間にか夕暮れ時になっていた。
少し時間をかけすぎたがクロヒョウを諦めればもう1周くらいできそうだな。
出口から外に出て再び入り口の扉に移動した。衛兵が心配そうに声をかけてくる。
「これから入るのですか?もうすぐ暗くなりますよ。」
「あまり時間をかけずに用を済ませるつもりだ。」
「そうですか…お気をつけて。」
扉を開けて中に入る。暗くなるまであまり猶予は無い。
「ボスマデ行ケバイインダナ!?」
ヨルムは飽きもせずに乗せてくれるようだ。
「ああ、頼むよ。」
ヨルムは俺が跨るとすぐに移動を開始した。
草原を抜け、木々をなぎ倒しながら森を突っ切り、
崖を破壊しながら道を進み、平原をひた走る。
一気にボスの岩山に到着したが空の色は僅かに暗くなった程度だった。
「さすがヨルム。これならボスを捕まえても日は沈みきらないだろう。」
「ソウダロウソウダロウ。我モ全力デ走レテ満足ダ。」
思えば加減させてばっかりだもんな。たまにはこういう場での発散も必要か。
「それじゃあ今度はきっちり捕まえることにするかな。」
「トコロデ、ボスハドウヤッテ捕マエル気ナノダ?
持チ上ゲルニハ大キイダロウ?」
「そういえばヨルムは地竜を捕まえるところを見てなかったっけ。
大丈夫だからまぁ見ててくれ。」
「ソウカ、楽シミダナ。」
白い岩に足を踏み入れずにボスの後ろまで置換で移動する。
そして徐に尻尾を掴み、力を込めてブン回し始めた。
地竜は自分の身に何が起きたのか理解できなかったらしく、
行動を起こすまでに少しの遅れが出た。
召喚体を呼び出すが回転する自らの巨体によって消し飛んでいった。
地竜が次なる手段を講じる前にフッと消えた。
目の前に図鑑は浮かんでいるがドロップ品は落ちていない。
少し呆れた様子でヨルムが呟く。
「何トモデタラメナ捕マエ方ヲスルモノダ。」
「そうか?でかい相手だとこれがやりやすいんだよ。大体の反撃も防げるしな。」
「周リニ味方ガイタラデキナイナ。」
「それはそうだが…基本的に捕まえるのは一人の時にやるし問題ないだろう?」
「…我ノ存在ヲ忘レテイナイカ?」
「ヨルムは首にいるから安全だろ?人数…は訂正させてもらう。
いるのが当たり前っていうかさ。」
「ワカレバヨイノダ。」
納得してくれたらしい。
「…結局捕まえられはしたけどドロップはなかったな。
あと考えられるのは…牙を折って倒すとか?」
「ソウカモシレナイナ。」
急げばもう1周くらいできそうだがあんまり慌ただしいのもな…
クロヒョウも狙いたいし今日はここまでにしておこうか。




