60.対決!アビンザダンジョンボス
階段を上りきり、平らな上部に出た。ここまでお膳立てされているからには
ダンジョンのボスがここにいるんだろうと思うが…
空は既に夕焼けに染まっている。外と同じように空が変化しているとしたら
例えここにいるのがボスじゃなかったとしてもそろそろ町に戻らないと
町の入り口でラナが俺達を待っているかもしれない。
「時間もあまり無いようだしサクッと片付けて帰ろう。」
「ソウダナ。レディーヲ待タセナイノハ紳士ノ嗜ミダ。」
紳士を気取った覚えはないが人を待たせるのはできるならやりたくない。
ボスがいることを願いつつ歩みを進める。
と、地面というか岩の色が違う部分が見えてきた。何かあるんだろうな。
更に近づくとティラノサウルスらしき姿が見えた。恐らくあれがボスだろう。
色が違う部分…白い岩の地面は円形に広がっている。
どうやらここが決戦のバトルフィールドのようだな…!
白色の岩に足を踏み入れると予想通りティラノサウルスはこちらに反応した。
途轍もない音量の咆哮と共に大きさの違う2種類の肉食恐竜を大量に召喚する。
ライオンと違う点は自らもこちらに向かって襲い掛かってきていることだ。
小さい方が足が速いようで先に到着した恐竜が次々と俺の体に噛み付いてきた。
召喚体ということはこいつらも捕獲はできないだろうとは思いつつ、
一応一匹を持ち上げて他の攻撃を甘んじて受け入れる。
しばらくその状態を維持したがやはり召喚体は捕まえることができないらしい。
捕獲を待つ間に到着していた中型の恐竜を巻き込まないように
温度反転でまとめて処理する。
相手の強さが変わってもやることはそこまで変わらないんだよな…
ヴェロキラプトル:B
巨大肉食地竜に呼び出される小型の召喚体。
小さい体躯を生かした素早い動きと鋭い牙、勢いのある尾がやっかいな難敵。
ドロップ
・なし
予想通りドロップもないし捕獲もできないんだな。
次からは容赦なく処理させてもらおう。
続いて中型の恐竜の一匹を持ち上げて他の攻撃を受け続ける。
普通ならこれだけあちこち噛み付かれる前に個体数を減らすのだろうが、
攻撃を受けても微動だにせず経ち続けているので
噛み付くことも尾を振り回すこともできない個体が多いのが少し可笑しい。
と、味方が取り囲んでいるにもかかわらずティラノサウルスが
口から巨大な火球を放ってきた。恐竜を持ったまま飛び上がって回避する。
落下している最中にも火球を放ってきたので温度反転を使ってみると
火球は一瞬で一回り大きな氷の塊になってそのままこちらに飛んできた。
俺を前方から噛み付いていた個体は潰されてしまった。
勢いは衰えたが、なお向かってくるので蹴って明後日の方向に飛ばす。
少し大きくなったのは温度が高いから周りの空気ごと凍ったわけか。
中型の恐竜もしばらく待っても捕獲できないようなので
大元を巻き込まないように温度反転でまとめて処理する。
ディノニクス:B
巨大肉食地竜に呼び出される中型の召喚体。
ヴェロキラプトルよりも動きは遅い分、噛み付きも尾による攻撃も威力が高い。
ドロップ
・なし
こっちも同様だな。
本来であれば波状攻撃でさぞかしやっかいなんだろうが…
残ったのはティラノサウルスただ一匹だ。
ライオンと違って動きが悪くなる前に自ら襲い掛かるのは賢い作戦だと思う。
召喚体で倒せない相手に召喚を続けても自分が疲弊するだけだもんな…
火球は通じないとわかっただろうし次はどんな攻撃をしてくるかな?
と身構えていると周囲の空気が目の前に集まっていくように感じた。
何事かと注視していると集まった空気が炎を伴って大爆発を引き起こした。
「ヨルム、無事か?」
咄嗟に腕で首をカバーしたものの全て遮れたわけではない。
「大丈夫ダ。少シビックリハシタガナ。」
俺の相棒はこんな爆発では何ともないほど頑丈なようだ。
「すまん。ついつい観察を優先させてしまった…」
「初見ダッタシ無理モナイ。汚イ花火ノヨウデ綺麗ダッタナ。」
どっちなんだよそれは…
しかし随分と余裕があるな。図鑑の表記に物申したいところだ。
爆発の直撃を受けても無傷な俺達を見て
ティラノサウルスは驚いているように見える。
見えるというだけで実際のところは魔子を消費して
少しの間だけ動きが止まっているのかもしれない。
余裕がある時とない時では見え方は違うだろうし
基本的に余裕しかない俺達の主観はアテにならないかもな…
火球も爆発も通じないと見て遠心力を乗せた尾による攻撃を繰り出してきた。
直撃を受けても損傷がないどころか微動だにしない俺を見て
最後の手段とばかりに噛み付き攻撃に打って出た。
万策尽きたんだな…そう悟った俺は置換で首を切断した。
噛まれていたので自身も移動することになってしまったが。
首を切断されたティラノサウルスはさすがに絶命してフッと消えた。
巨大肉食地竜:A~
アビンザのダンジョンに生息する大型の肉食地竜。
Bランクの肉食地竜を召喚する他、口からの火球や
任意の場所での爆発など凶悪な攻撃を繰り出してくる。
ドロップ
・ティラノダガー
ぬああ、ドロップが出なかった…条件は何だろう?
…まぁそれを考えるのも楽しみの一つか。
普通の冒険者に聞かれたら小突かれるくらいじゃ済まなそうではあるが…




