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61.うっかりさん

ドロップ品は出なかったが出口は出現していた。

出口から見える空もダンジョン内と同じ色をしている。

やはり同じように時間は進むし同じように空は色を変えていくようだ。


「ポノ、ボスハ捕マエナクテヨカッタノカ?」

しまった、召喚体の相手ばっかりしてたからつい…


「忘れてた…まぁドロップ狙いにまた来るだろうからその時でいいかな。」


「ウッカリガ多イナ。」


「返す言葉も無いよ…」


出口から外に…行き先は街中だが。

出ると入り口で説明を受けたように扉の奥に見えていた枠から出た格好になった。

他の冒険者と同時に出てきたらどうなるんだろう?

待ち時間が発生するのか?まさか合体するなんてことはないよな…


「それじゃ町の入り口でラナを待つことにしようか。」


「ソウダナ。」


日が沈むまで猶予はあるが時間の指定もしていないからな、

ラナが到着していない可能性も待ちぼうけしている可能性もある。

というわけで人の速度から外れないように小走りで町の入り口に向かった。


珍しく小走りで外に向かう俺を見て門番のおっちゃんは少しだけ

不思議そうな表情を浮かべていたが止めることなく素通りさせてくれた。

町の外に出て周りを見てみるが、まだラナは戻ってきていないようだった。


「ラナは戻ってきていないようだな。」


「間ニ合ッテヨカッタナ。」


別に約束もしていないのだから多少遅れたところで問題にはならないだろうが、

人を待たせるのはあまり好きではない。



しばらく待ってみるがラナはなかなか帰ってこない。


「格上の動物に手を出してやられたんじゃないだろうな…

 ナワツボ平原まで行ってみるか?」


「心配ナノハワカルガモウ少シ待ッテミタラドウダ?」


と、遠くからダチョウが2頭近づいてきているのが見えた。

ゴンザナシ達は1頭に2人で乗っているから違うだろうし…知らない誰かか?


近づいてくるダチョウを見ていると徐々に姿が鮮明になってくる。

どうやら乗っているのはラナのようだが…

2頭いるのは自分で捕まえたからなのだろう。


「ただいま!見てよこのダチョウ!かわいいでしょ!」

テンションの高さで嬉しさが伝わってくる。


「いいダチョウだ。よく捕まえられたな?」


「ヌーは楽勝って言ってもいいくらいになったから

 今ならいけるんじゃないかと思ってね。」


「できるできないを判断するのは重要だな。」


「でしょ?それに一昨日の件もあって

 やっぱり自分のダチョウが欲しかったからっていうのもあるわ。」


「なるほどな。一昨日はすまなかった…

 しかしわざわざ並走して来なくてもよかったんじゃないか?」


「え…だってポノのダチョウは片付けられないじゃない。」


「ポノノダチョウハ無理デモ自分ノダチョウハ片付ケラレルノデハ…」


「あ…」


どうやらこの集まりはうっかりが多いようだ。

一番まともなのはヨルムかもしれない。


「捕まえたのが嬉しくて意識から消えてたみたい…」


「そういうこともあるだろうさ。自分用を捕まえたんだから鞍を買わないとな。

 あるいは俺のダチョウの鞍を使うか?」


「その鞍も悪くないんだけどせっかくだから後で武具屋に行って見てくるわ。」


「そうか、まぁ何にせよ無事でよかった。飯にするか。」


「そうね。ああお腹減った!ごはんごはん。」


それぞれのダチョウを図鑑に片付けて酒場に向かう。


「そっちは今日ダンジョンに行ってきたの?」


「ああ、この辺の動物に慣れてたから新鮮味があって面白かったな。」


「色々ナ動物ガイテ楽シカッタ。」


「ダンジョンが楽しいなんて羨ましい話ね…私が挑むのは早いわよね?」


「奥まで行くのは無理だが入り口近辺の動物ならなんとかなるんじゃないか?

 ラーテルにもジャッカルにも注意してもらいたいが…」


「…もう少し力をつけてから挑むことにするわ。」


「ソレガイイカモシレナイナ。衛兵モ言ッテイタガ命ヲ大事ニダ。」


「ヨルムちゃんの言う通り、命は大事にしないとね。」



そうこう話しているうちに酒場に到着したのでいつものメニューを注文する。


「「『乾杯!』」」


皆、ビールを一口飲んだ後、ラナが調理中のおっちゃんに向かって話しかけた。


「聞いてよおっちゃん!今日やっと自分用のダチョウを捕まえたの!」


「本当かい!?凄いじゃないか!」

おっちゃんは手は止めずに上を向いた。嬉し涙が零れないようにしているようだ。


「後で鞍を買いに行くのよ!楽しみだわ!」


「そうかいそうかい…よかったなぁ…」

おっちゃんは上を向いたまま調理を続けている。さすが器用なものだ。


「鹿牛のステーキ3つと白米2つ、お待ちどう!」


「「いただきます。」」

『イタダキマス。』


食べ始めた俺達におっちゃんが話しかけてくる。


「今日は祝宴を開かないのか?」


「うん?いいことだとは思うがそんなに大層なことなのか?」


「ダチョウを捕まえたとなれば一端の冒険者になったってことだろう?」

そういうものか。その辺の事情には疎いからな…いや、疎いのは一般常識全般か。


「そうなんだけど恥ずかしいのよね…あれ。」


「ランクが高くなるにつれてそういう場も増える。

 慣れておくいい機会だと思ってさ。」

やけに勧めてくるな…何かあるのか?


「実は経営が厳しいとかないよな?」


「失礼なことを言うな、うちは俺が死ぬまで安泰だ。

 ただ、祝宴があるとあいつの機嫌が凄くいいんだよ。

 うちの夫婦円満のためってわけでもないが定期的にあると嬉しい。」

それは祝宴自体じゃなくて支払いの気前がいいからかもしれない…


「俺は構わない。周囲がいつもより騒がしくなるだけだからな。

 で、今日は何を出せばいいんだ?カリファパーチにするか?」


「この前食べた塩焼きは美味しかったものね、いいんじゃない?」

あまり乗り気じゃないかと思ってたが…食べ物に弱いな。


「いいんじゃないか?魚が食えない奴には鹿牛で我慢してもらうが。」


「じゃあ決まりだな。」


カリファパーチの身をカウンターに並べていく。

1個当たりが肉よりも小さいから10個くらい出せばいいか。


「うし。じゃあ始めるか!」


おっちゃんの呼びかけと共にまた祝宴が始まった。毎度ながら

ラナを祝う声は適当だが少しずつラナは認められてきているように思える。


毎回用事があって同席していなかった俺には初めての体験となったが

祝われる存在というわけでもないので予想通り周りが騒がしいだけだった。

だが皆が盛り上がっている酒の席は嫌いではない。この場を楽しむことにしよう。

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