50.アカネの悪ふざけ
西門を出る時にまたヨルム関連で一悶着あったが従魔だと説明して事なきを得た。
出る時にも止められることがあるんだな。
時間は充分にあるのでのんびり歩いて進んで行く。
とは言っても一度見た風景ではあるのでさほど感動もないわけだが。
しばらく進むと兎狩りをしている狼人族の子供達が見えてきた。
引率は昨日鹿牛とシマロバ狩りを指導していた狼人族の女性だ。
昨日はモノノフじゃない方の男性狼人族が指導していたはず…交代制なのかな?
特に挨拶も必要ないだろうとそのまま歩き続けていると
こちらに気付いた様子で図鑑からエルクを出して跨り、近づいてくる。
間近まで接近してエルクを降りると声をかけてきた。
「お初にお目にかかります、トモダチノワと申します。チノワとお呼び下さい。」
オールバックでサングラスをかけた笑顔の男が思い浮かんで吹き出しかける。
アカネの悪ふざけか…表に出さないよう必死にこらえてこちらも返す。
「…初めまして。ポノという、よろしくな。」
「ヨルムダ。ヨロシクナ。」
「この度は見届け人を引き受けてくださり、ありがとうございます。
ポノさんのお手を煩わせることのないよう努めますが、
万が一の時はよろしくお願いします。」
堅苦しい話し方と可愛らしい狼耳のギャップが凄い。
さぞかしアプローチが多くて苦労していることだろう。
「随分堅苦しい喋り方だな。無理をしてないか?」
「普段からこの話し方ですのでご容赦いただければと思います。」
なら問題ないか。話し方を変えられるのは嫌だが
丁寧な話し方が嫌なわけじゃないからな。アマンダがいい例だ。
「話はわかった、いざという時は任せてもらおう。
指導の最中なのにわざわざ来てもらってすまなかったな。」
「いえ、こちらが勝手にしたことですので…それでは失礼します。」
そう言ってチノワは去って行った。
「狼人族は皆あんなに礼儀正しいのか?
一部の人族にも見習ってほしいくらいだな。」
「力ノアル相手ニ敬意ヲ払ウ種族ノヨウダカラナ。
モットモ、引率ノ2人ハソレトハ関係ナク人間ガデキテイルダケダト思ウガ。」
「そうか、皆が皆ではないんだな。」
「トコロデ、会話ノ始メ辺リデ笑イヲコラエテナカッタカ?」
「表に出てたか?」
「イヤ、ソンナ気ガシタダケダ。チノワニハワカラナカッタダロウ。」
「ならよかった。アカネの悪ふざけに引っかかるところだったというだけだ。」
「アカネ様ノ悪フザケ…?」
ヨルムまでアカネに様付けなのか。
ウィリスの言う通り本当に敬称をつけないとまずいのかもしれない。
何か癪だし極力人前でアカネの名前を出さないようにしよう。
「何でもない。気にしないでくれ。少し時間も食ったからここからは走るか。」
「ソレハ任セルゾ。」
任されたのでいつものスピードで走り出す。川を目指して一直線だ。
道中、新しい動物を発見することもなく川に到着してしまった。
肉食動物はダンジョンにしかいないらしいし仕方ないのかもしれないが…
相変わらずだだっ広い川幅にゆっくりした流れ。
水深はどんなものかわからないがとりあえず入ってみるか。
以前と同じくカバが水面から顔を覗かせていたのでその近辺はやめておこう。
きっと周りはカバだらけだ。
水の中に入ってみるが陸から見た通り濁っていて視界が悪い。
可視魔子を発動させ、固体以上の魔子を含んだ物だけを
見えるようにすると川の中の様子がよくわかった。
水深は俺の身長よりも少し深いくらいで、
中央に行くに連れて深くなっているようだ。
先ほどのカバの方に目をやると予想通りカバの形が大量にそこにいるのが見える。
やっぱり向こうから入らなくてよかった。避けていくのも一苦労だっただろう。
魚らしき魔子を探して辺りを見回すとそれらしい形が見えたので近づいていく。
さすがに魚なら近づけば逃げたりしそうなものだが…
いくら近づいても逃げない様子なので試しに触れてみると
体をくねらせながら物凄い速度で逃げていった。
せっかく見つけたんだから逃がすわけにはいかない。
距離は多少離れてしまったが置換で頭部と胴体を切り離した。
魚らしき魔子はスッと消えてドロップ品が落ちたようだ。
サメの時とは違って楽だな。いや、これが普通か。
カリファパーチ:D~C
カリファ大陸全域の川に生息する巨大魚。
濁った水を好むので倒すよりも探すのが困難。
ドロップ
・カリファパーチの身
・カリファパーチの鰭
ナイルパーチは肉食だったような?
魚が例外なのか名前が違うから草食なのか…わからん。
カリファパーチの身:D
文字通りカリファパーチの身。淡白だがしっかりとした旨味を持っている。
生でも火を通しても絶品。
生でも食えるのはありがたいな。寄生虫の不安はないってことでいいんだろうか?
カリファパーチの鰭:C
カリファパーチの鰭で作られたフライ返し。熱に強いので長持ちする。
一定以上の温度まで熱してから酒に浸すと風味が良くなる。
普通の料理に使ったら生臭くなりそうだが…どうなんだろうな。
とりあえずカリファパーチの身は美味そうなので数を狩ることにしよう。




