49.反省
翌朝、ラナが目を覚ましたようなので尻に張り付いたまま様子を見る。
「ポノの上半身が何で床に?…ああ、この体勢にするために分けたのね。
わざわざありがとう。でもそこからは早く離れて。」
「ソウイウコトダッタノカ。理由ハワカラナカッタガ驚キハシナカッタゾ。」
慣れすぎだろう…
まぁ同じようなパターンだしそこまでびっくりされるとも思ってなかったが。
移動して体を元の状態に戻す。
「おはよう。今日はどうする?ヌー狩りか?ダンジョンか?」
「オハヨウ。」
「おはよう。Dランクに成り立てじゃダンジョンに入っても
すぐに死んじゃうみたいだって前に言ったでしょ。
ポノと一緒なら大丈夫かもしれないけど、
その辺にいる動物といい勝負をしているようじゃ
お荷物でしょうから今日はヌーやダチョウを狩って自力を上げたいわ。」
向こう見ずな所もあれば堅実な所もあるんだよな…
「俺達の同行は必要か?」
「ダチョウだけ貸してもらえれば大丈夫よ。」
もはや貸すのが当たり前になっているが、
よく考えたら最近は指導らしい指導もしていないし
尻枕とダチョウの等価交換ってことにしておこう。
「そうか、今日も風呂に入ってから出発か?」
「そうね、そのつもりよ。だから気にせず先に行っていいわ。」
「わかった。間違っても格上の動物に手を出さないようにな。」
「そんなことするわけないじゃない。
シマロバの時は魔袋の蓋がそうさせたのよ…」
まぁその時は相当鬱憤が溜まっていたようだったからな。
一度死に掛けてからはそんな無茶はしてないようだし信じても大丈夫だろう。
宿を出て酒場に向かう。ヨルムには一応昨日の事を注意しておかないと…
『ヨルム、昨日の事は覚えているか?』
『ダイタイナ…我トシタコトガハメヲ外シスギタヨウダ。申シ訳ナイ。』
ヨルムは深く反省しているようだ。これなら怒る必要もないだろう。
『過ぎたことを言ってもしょうがない。今後注意してくれればいいさ。』
『昨日ノヨウナコトニハナラナイト誓ウカラ夕食ノ時ダケデモビールヲダナ…』
随分ビールが気に入ったようだ。
『それくらいなら構わない。』
『アリガタヤアリガタヤ…』
『ところで、ヨルムの元の体格からすると多めにビールを飲んだくらいで
あんなに酔うのは不自然な気がしたんだが蛇は酒に弱いのか?』
『ムシロ蛇ハ大酒呑ミノ代名詞ダロウ。酒ニ弱イ蛇ハ珍シインジャナイカ?』
『そう言われるとそうだな。ヨルムが弱いだけか。』
『…昨日ノ醜態ヲ考エルト反論デキナイナ。』
酒場に入っていつものように注文するとおっちゃんがヨルムにビールを勧めたが、
ヨルムは小さく首を振って断った。本当は飲みたいんだろうな。
食事を済ませ、店の外に出るとヨルムが話しかけてきた。
『ソレデ、今日ハラナト別行動ナノダロウ?何ヲスルンダ?』
『そうだな…鹿牛は美味いしおっちゃんの腕に文句はないんだが
たまには魚が食いたい。いい機会だしヨルムを勧誘しに行く
きっかけになった川に行ってみようと思う。』
『川カ、イインジャナイカ?』
『なら決まりだな。美味い魚がいるといいな。』
とりあえずは冒険者組合がある方向に歩き出す。
『そういえばヨルムはクラーケンを食ってたんだよな?味はどうだった?』
『マアマアダッタナ。美味クモナイガ不味クモナイトイッタトコロダ。
味デ言エバオッチャンノ鹿牛ノ方ガ好ミダ。
ダガ前モ少シ話シタカモシレナイガ魔子ハ比ベ物ニナラナイゾ。』
おっちゃんの鹿牛はクラーケンを凌駕するらしい。
おっちゃんがクラーケンを料理したらひっくり返るかもしれないが。
『今度おっちゃんにクラーケンを料理してもらうか?
他に客が少ない時になら頼めるだろう。』
『ソレハ是非頼ミタイナ。ココマデ成長スルノニ飽キ飽キスルホド食ベタガ、
アレガ美味クナルナラ食ベテミタイモノダ。』
成長するために仕方なくだったわけか…
『まぁいくらおっちゃんと言えども、
クラーケンを料理したことはないだろうからどうなるかわからないけどな。
俺はイカもタコも火を通した方が好みだから期待したいところだ。』
『我ハオッチャンノ腕ヲ信ジルゾ。』
知らない間に随分と買われていたようだ。
冒険者組合を左に曲がって西を目指す。クラーケンもいいけど魚も楽しみだな。




