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47.祝宴

ドロップ品を回収し終えたので町に向かう。

既に空は夕焼けから夜の色に変わり始めている。


ラナの乗ったダチョウと並走してしばらくすると

まだ狩りを続けている狼人族達の姿が見えてきた。


狼だけに夜目が利いて暗いのは苦にならないのかもしれないが、

一日中狩りをしていて疲れないのだろうか?


今朝と同じく邪魔にならないように大回りをして通り過ぎる。

今回は交通事故も起きずに無事に町に着くことができた。


入り口でダチョウを片付けて酒場に向かう。

狼人族の姿が見えないのは狩り続けているからだろう。

到着するや否やラナが図鑑からヌーの肉を取り出した。


「おっちゃん、今日はこれを焼いてくれない!?」

ドヤ顔をしながらカウンターの上にヌーの肉を置く。


「お、またヌーの肉か…ひょっとしてラナちゃんが狩ったのかい!?」


「そうなのよ!Dランクに上がったわ!」

倒した当初の不機嫌が嘘だったかのような満面の笑みを浮かべている。


「おめでとうラナちゃん!ついこの間シマロバ討伐記念の

 祝宴をしたばかりなのにもうヌーを狩れるなんて凄いじゃないか!」

釣られてじゃないがおっちゃんも笑顔になっている。


俺もカウンターの上にヌーの肉を5個並べる。

この前はぎりぎり足りたらしいからラナの分も合わせればこれで充分だろう。

「これでまた祝ってやってくれ。俺にはいつも通り鹿牛2つと白米を頼むよ。」


「あいよ!嬉しいねえ、またラナちゃんを祝えるのか!」


以前と同じく、よく通る声でおっちゃんが叫ぶ。


「みんな!今日はラナちゃんがヌーを狩った記念すべき日だ!

 ここにあるヌーの肉含めて食える限り食え!ビールも飲める限り飲め!

 みんなで盛大にラナちゃんを祝うぞ!」


以前と同じく、店内に大歓声が巻き起こった。


「ひゃっほう!またヌーの肉を食えるのか!ラナ、おめでとう!」

「マスター、人数分の肉とビール頼む!ラナ、おめでとう!」

「もうヌーを狩れるようなった!?冗談だろ!?ラナ、おめでとう!」

「俺は最初からラナはやる女だと思ってたぜ!」


随分調子のいいセリフも聞こえてきたが今日も盛り上がりそうだな。

本音が先に出て祝う声は取って付けた様だったが気にしないでおこう…


「おーい!今日もラナちゃんの祝宴が始まるぞ!手伝ってくれー!」

おっちゃんは店の奥にいるおばちゃんに呼びかけた。


「はいはい、また忙しくなりそうだね。」

落ち着き払った様子のおばちゃんが現れる。

さすがに場慣れしている感じがするな。


「鹿牛のステーキ2つ、ヌーのステーキ、白米2つにビールお待ち!」

先に注文していた俺達の食事が出てきた。


「こんなに早くヌーが食べられるようになるなんて感激だわ。」

「やはり俺は鹿牛だな。」


『勝手に決めてしまったがヨルムもヌーがよかったか?』


『コレハイタダクガヌーモ食ベテミタイナ。後デラナニ頼ンデモラウトシヨウ。』


『そうしてくれ。すまなかった。』


いつもの数倍はあろうかという喧騒の中、食事を終える。


「じゃあ俺は組合に顔を出してくるからヨルムはラナを頼む。」


「待ってました!行ってらっしゃい!」


『ワカッタ、任セテオケ。』

ヨルムはスルスルと俺の首からラナの首に移動した。


「少しひんやりとしてスベスベなヨルムちゃんが私の首に…!」

ラナは恍惚の表情を浮かべている。

この状態なら他の冒険者とのいざこざも起きないだろう。


引き止められることもなく酒場を出て冒険者組合に向かう。

運良くゴンザナシかマトンに会えるといいが…


そういえばヨルムはビールを飲むんだろうか?

もし飲んで酔っ払って念話を忘れて普通に話したら騒ぎになるよな…

いや、前回同様だとするとみんな酔いが回ってて気付かないかもしれない。



組合に入り中を見回してみるがゴンザナシもマトンもいないようだ。

幸い受付に人はいないようだしアマンダに聞いてみるか。


「今日これからゴンザナシかマトンはここに来るかな?」


「ポノさんこんばんは。今日お二人の姿は見ていないので

 待っていればそのうち来ると思いますよ。」


「そうか、なら待たせてもらおうかな。

 受付に人が来るまで少し話して構わないか?」


「ええ、書類も片付きましたし構いませんよ。」


「以前Dランク以下の素材は在庫が大量で買取りが停止していたが

 狼人族達の初心者講習で同じような状況になることはないのか?」


「狼人族の方達は祖国での方が買取り価格が高いので素材を持ち帰りますからね。

 そのようなことはありませんよ。例外は需要が全くないヘアバンドですね。」

狼人族は最低でも狼の耳がついてるから

兎の耳がついたヘアバンドなんて無用の長物なんだな。


「なるほど、ヘアバンドに目を瞑ればこっちの冒険者にあまり害はないのか。」


「むしろ休日のいい口実になるみたいです。それに大多数が狩りに行かなければ

 組合の在庫もある程度減って停止していた買取りが再開されたりしますから。」


「害があるどころか有益という訳か…」


「組合としては素材の供給が減って

 ヘアバンドばかり増えるのであまり有難くはないんですけどね…」


「他国の組合との関係を考えて受け入れているんだな。」


「そういうことになりますね。」


そんな会話をしているとゴンザナシとマトンが入ってきた。


「お、来たな。話に付き合ってもらってありがとう。」


「お安い御用です。」」


アマンダとの会話を終えると、向こうから話しかけてきた。


「ポノ、組合で会うのは初めてだな。何か用事があったのか?」

「本当ー、珍しいねー。」


「用があったのは組合じゃなくて2人にだ。

 そっちの用事が済んだら話したいことがある。」


「そうなのか?まぁ話はわかった。

 時間はかからないから座って待っててくれよ。」

「何だろうねー?また後でねー。」


2人はクロエの前に行き、買取りをしてもらっているようだった。

クロエの喜び方からするとゾウ狩りで得た素材でも出しているんだろう。

複数の札束を受け取って図鑑に仕舞うとこちらに来た。


「待たせたな。それで、話ってなんだ?」


「実は今日、狼人族の引率の一人と知り合いになった。

 彼らは引率の他に地竜の討伐という目的があるそうだ。

 2人なら見て参考になると思うから一緒に行かないか?」


「本当か!?」

「凄くいい話だねー。行く行くー。」


「よかった、日時は7日後の朝9時。南門を出たところで待ち合わせだ。」


「わかった。絶対に行く。」

「了解ー。でもその人は見に来てもいいって言ってたのー?」


「その引率の一人…モノノフは見ただけでヨルムの正体に気付いて

 その流れで討伐の見届け人を頼まれたんだ。

 承諾する代わりに2人を連れて行きたいと言ったら最初は渋ったが、

 見物じゃなくて見学ということなら断る理由はないと言われたよ。」


「よかったー、それなら絶対行くよー。」

「なるほどな…実力を知ったら頼みたくなるよな。」


「一つゴンザナシに忠告しておくが手合わせを頼むのはやめてくれ。

 もし破ったら見学は中止。後日、一日中電気男(エレキマン)の刑に処すからな。」


「…肝に銘じておく。」


「よかったー。ちょっと心配してたんだよー。」


「話は変わるが…モノノフと知り合った場所はゴンザナシ達と同じく

 ナワツボ平原だった。あの場所にはそういう出会いが多いのか?」


「そんな話は聞いたことがない。たまたまだろう。」

「あたしも知らないよー。」


「そうか、ならいいんだ。それじゃ7日後の朝9時に南門を出たところで。」


「そんなにいい機会を忘れるはずないさ。」

「寝坊しないように気をつけるよー。」



用件も伝えたしゴンザナシに釘も刺した。

酒場に戻って少しは祝宴に参加するか。

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