45.バオバブの家
「今更ダガ…我ヲ一目デ見抜クアタリ、アシロ王国デ我ハ有名ナノダロウカ?」
確かに今更だな…モノノフがいる時に聞けばわかっただろうに。
「ヨルムがアスガルドから落ちた先が北極海ならここよりも
アシロ王国の方が距離が近いし身近に語られてた伝説だったのかもな。」
「伝説…伝説カ、イイ響キダ。」
ヨルムはすっかり伝説という響きに酔いしれている。
「さて、モノノフもラナもいなくなったし今日はどうする?
昨日言っていた俺を驚かせる何かは思いついたか?」
「マダ絶賛企画中ダ。」
妙な言い回しをするな…
そういえばアビンザの町の建物は大体木造だったな。
木材の供給はどうしているんだろう?他国から仕入れているのかそれとも…
昨日木陰に入らせてもらったバオバブの木に近づく。
「今日モ木陰デ休憩カ?」
「いや、試してみたいことがあってな。」
バオバブの木に腕を広げるが幹周りが太すぎてまるで抱きついている状態だ。
「ドウシタ?木ノ温モリデモ感ジテイルノカ?」
「木の温もりってそういう意味じゃないと思うが…」
これでは握力で幹が傷付きそうなので徐にTシャツを脱ぐ。
「初メテ見ルガイイ体ヲシテイルナ。」
「そりゃ光栄だ。」
Tシャツを巨大化させて胴体部分を幹に当て、
袖の部分を反対側まで伸ばしてそれを引っ張る。
「ふんっ!」
狙い通り幹を損傷することなくバオバブの木が根元から抜ける。
完全に持ち上がったところで木は消え、目の前に図鑑が浮かんでいる。
「ナルホド、木ヲ引ッコ抜キタカッタノカ。」
バオバブの木:B
カリファ大陸南部に生えている木。内部は空洞になっていることが多い。
その特異な見た目から悪魔の木と呼ばれることもある。
「襲ってくるわけでもない木がBランクなのか?基準がよくわからないな。」
Tシャツを元の大きさに戻して着ながら呟く。
「ポノヨ、ソノヨウナ大木ヲ引ッコ抜ケル者ハソウソウイナイダロウ…」
「…そうだな。」
木が抜けた場所には何事もなかったかのようにバオバブの木が鎮座していた。
この大きさの木が現れるのか物凄いスピードで成長してこの大きさになるのか…
草の再生の仕方を考えれば恐らく前者だな。
しかし中が空洞になっているなら扉を付けて
中に色々家具を持ち込めば家として使えるんじゃないか?
問題は木自体が大きいので広いスペースがなければ周囲に影響が出そうなことだ。
図鑑からバオバブの木を取り出し、置換を駆使して
短い階段とその先に引き戸を付けてみた。おお、何かワクワクしてくるなこれは。
階段を付けた理由は図鑑から出す時に根を土に埋めるので、
その分の土の盛り上がりを考慮してのことだ。
「時間もあるしこの木の中を部屋っぽく改造してみたいんだがどうだ?」
「木造デハナク木自体ヲ家ニスルワケカ。確カニイイナ。」
内部から木材を供給しようかと思っていたが、空洞部分が思ったより大きい。
削ると外壁の強度が下がるかもしれなかったので生きているバオバブから
一部を失敬したりしてヨルムとああだこうだ言いながら内部を整えていった。
木材はその辺から供給できるが布製品は買って来ないといけないな。
まさか俺の衣類と同じ素材にするわけにもいかないしな。
とりあえずやれるところまでやったのでバオバブの家を図鑑にしまうと…
バオバブの家:B
バオバブの木をそのまま使って作られた家。
ポノとヨルムの力作。よくできました!90点!
アカネが監視していて文章を考えているわけじゃないよな…
銘が入ったってことなのか?図鑑のコンプリートは諦めた方がよさそうだ…
若干やる気を削がれたので休憩していると、
昨日と同じくらいの時間にラナが戻ってきた。
「ふう、今日もよく狩ったわ…って、ヨルムちゃんに模様がついてる!?」
「あのままだと一部には正体がバレるみたいでな。」
「似合ウカ?」
「似合う似合う!何て呼ぼうかしら…ニシキヘビ柄だから
ニシキヨルムちゃん…?ニシちゃん…?キヨちゃん…?」
テンションが上がりすぎてわけがわからなくなっているようだ。
「落ち着け、今まで通りヨルムでいいだろう。」
「はっ!…そうね。ってことはモノノフさんにはバレちゃったのね?」
「一応口止めはしておいた。
モノノフは約束を破るタイプではなさそうだから大丈夫だろう。」
「ソウイウコトダ。ソレデコレカラハコノ姿デ過ゴスコトニシタ。」
「元の黒色も素敵だったけど今の模様も素敵よ!」
ラナはもはや蛇なら何でもよさそうだな…
「ところでラナ、ゴンザナシ達にはどこに行けば会える?」
「ゴンザナシさん達なら大体毎日組合に寄るはずよ。
今日これから行って会えるかはわからないけど。」
「そうか、それなら後で組合に行ってみるか。
しばらく待っても来ないようなら明日でもいいしな。」
「何か用事があるの?」
「モノノフ達が地竜を討伐するらしい。
ゴンザナシ達なら見て参考になりそうだから誘おうと思ってな。
もちろんモノノフの承諾は得てある。」
「ゾウをあれだけ圧倒できるなら地竜も倒せるのね…
私は目で追うのも難しそうだからシマロバ狩りしてようっと。」
「ラナハ自分ノ立チ位置ガワカッテイルナ、感心感心。」
「でしょう!?もっと褒めてヨルムちゃん!」
「…偉イ偉イ。」
「ありがとー!ヨルムちゃん大好き!」
褒め言葉が適当になっていることには気付いていないようだ。
ラナ本人が幸せならそれでいいか…




