39.酒乱
いつも通りの酒場でいつも通りの食事とビール。
一つ違っていたのはその場にゴンザナシとマトンが同席していた事。
色々あったがゴンザナシとマトンはゾウを狩ることに成功したわけだし、
せっかくだから祝いつつ一緒に食事でもという話になったわけだ。
いつもカウンター席に座っていたが4人いるので初めてテーブル席に座った。
「「「「乾杯(ー)!」」」」
「改めましてゴンザナシさん、マトンさん、ゾウ初討伐おめでとうございます。」
「おめでとう!これからも努力を続けて上を目指してくれ。」
『オメデトウ、ゴンザナシ、マトン。』
「ありがとう!少しヘコんだ面もあるが地道な努力は大事だよな。」
「ありがとー。あたしもゴンザナシと一緒にがんばるよー。」
気分的には地竜の肉くらい振舞いたいんだが
ラナの魔袋が破裂してしまう恐れがあるからな。おとなしく普通に祝うとしよう。
皆は食事の合間にビールを飲む程度だが、
主にビールを飲み注文した待ち時間の間だけ食事をしているのはマトンだった。
意外と大酒飲みらしい。初めて見るのか、ラナは驚きの表情を浮かべている。
ゴンザナシがわざわざ譲ってもらってまで隅の席にしたのは何かあるんだろうな。
「しかしここまでは長かったな、これからの道はもっと長いんだろうが
一区切りついてよかったよ。ポノがいいカンフル剤になってくれたな。」
「そうねーー。あの後のゴンザナシはちょっとはりきりすぎだったけどーー。」
酒のせいか声がでかいしいつもより語尾の伸びが長い。
「俺にそんなつもりはなかったけどな。結果的にそうなったならよかったよ。」
「ゴンザナシさんの剣や技を受けても無傷なんて普通に考えたらおかしいわよね。
今度ストレスが溜まったら思い切り斬ったり殴ったりさせてもらおうかしら。」
そりゃ俺は平気だろうがひどいことを言うな…
「それなら動物相手にやれば成長にも繋がって一石二鳥だろう。
わざわざ俺にやる意味はないな。」
「それはそうだけど…ふと思いついたから言ってみただけよ。」
「あははーー。ラナちゃんとポノは仲良しだねーー。」
と、上機嫌で更にビールを呷る。気分はいいみたいだしゴンザナシに任せよう。
『確カニラナトポノハ仲ガイイ。少シ妬ケルナ。』
…なんでヨルムが妬くんだよ。
「私はヨルムちゃんとポノなら迷わずヨルムちゃんを取るよ!大好き!」
俺の首に巻きついているヨルムに抱きつくが、
傍から見れば俺に抱き付いているように見えなくもない。
「普通に話すのもそうだが念話まで使えるのにはびっくりした。
俺達は使えないからヨルムからの一方通行になるが
人前で秘密裏に意思の疎通ができると色々便利そうでいいな。」
「そうねーーー。魔法が苦手なゴンザナシにも
そのうち使えるようになってもらいたいなーーー。」
更に語尾が伸びたな、どこまで伸びるのか楽しみだ。
「そういえばポノは今日ヨルムとダチョウを同時に出してたよな?
普通従魔は1体までしか出せなかったと思うんだがどうやってるんだ?」
そうなのか、初耳だ…
「そういうものなのか?特に何もしていないが出せたな。」
「特別なことはしてないのーーー?
じゃあもっとランクが上がればできるようになるのかなーーー?」
首を傾げながら更にビールを呷っている。
「ランクが関係してるかもしれないのか…
俺もBに上がってからまだ試してないし明日やってみるか。」
マトンは大分出来上がっているがまだゴンザナシが動く気配はない。
「私の場合、まずはダチョウを倒せるようになるところからね…」
「シマロバ狩りはスムーズになったしそこまで時間はかからなそうだけどな。」
「ゴンザナシさん達の戦いを見てたら私も少し気が急いてきちゃって。」
「あれを見てたんだからゴンザナシを見習って
動物の後蹴りを避けられるようにするとかを考えた方がいいと思うんだが。」
「それもそうなんだけどね…はぁ、まだまだやるべきことが多いわ。」
「急ぐ気持ちはわかるけど、地道が一番だよラナちゃん。」
「そうよーーーー。今までの調子で続けていけば大丈夫ーーーー。」
また伸びたな。俺の中での記録更新中だ。
気付けば周りの冒険者の視線がマトンに集中しているように見える。
「そうですよね、ありがとうございます。頑張ります。」
「あははーーーー。そうそう、そんな感じで行こーーーー。」
またビールを呷った…次の瞬間、
「どーーーーーん!」
と、胸部のビキニを脱ぎ捨てた。すかさずゴンザナシが片腕でガードし、
もう片方の腕で宙に舞うビキニを回収した。手馴れてるな…
しかしガードされる前に見た豊かな双丘は俺の目にしかと焼きついていた。
「くあー、見れなかった!」
「ゴンザナシ、隠すのが速過ぎるぞ!」
「そうだそうだ、もう少しサービスしろ!」
などと周りから次々と苦情が入る。隅の席にした理由がこれか。
なるべく見せたくなかったんだな…そりゃそうか。
ゴンザナシに悪いから焼きついた双丘は消しておこう。
「悪いがマトンが完全体になったから今日はこれまでだ。
代金は後日払うから精算しておいてくれると助かる。」
「まだ飲みたいーーーーー。」
暴れるマトンをゴンザナシが必死に抑えている。
普段は戦闘狂のゴンザナシにマトンが苦労させられて、
酒の席では酒乱のマトンにゴンザナシが苦労させられているわけか。
これで案外バランスが取れているのかもしれないな。
「今日は2人を祝う会だ。代金は俺が持つから気にするな。」
「そうか…助かるよ。じゃあな、今日は楽しかった。ありがとう。」
「ああ、またな。」
「ゴンザナシさん、マトンさん、また今度。」
祝われる人間がいなくなったしこれでお開きだな。
「それじゃ宿に戻るか。」
「そうね。」
『ソウダナ。』
代金を支払って宿に向かう。
「しかしマトンの酒癖には驚いたな。」
「私もびっくりした…普段はしっかりしてるのに。」
『マトンハ変ワッタ格好ノ上ニ酒乱カ。ナカナカ楽シカッタゾ。』
次からはマトンの双丘を見ないようにしないとな…ちょっと残念だが。




