38.ヨルムと地竜
「とりあえずは南下してくれ。ヨルムの実力はよく知ってるつもりだし、
俺は途中で降りて首長地竜を倒してから合流するよ。
ひょっとしたらドロップ品が出るかもしれないんだ。」
「ポノニモ我ガ圧勝スルトコロヲ見セタカッタノダガ…」
少ししょんぼりしてしまった様子だ。
「まぁすぐに合流するからさ。」
「ヨルムちゃんの雄姿は私が目に焼き付けるわ!」
こっちは対照的に意気揚々としている。
「俺が降りた後は道案内はラナに頼むよ。
素振りしに行ってたんだから場所は覚えてるだろ?」
「バッチリよ!任せておいて!」
「ラナちゃん…そんなところで努力してたんだな。」
「ラナちゃんは偉いねー。燻っている冒険者達は見習ってほしいよー。」
「デハ出発スルカ…音ノ速サヨリモ少シ遅クダナ…」
俺達が跨っている場所よりも後方をウネウネ動かし、猛烈な速度で進み始めた。
不思議と振動も風の影響も全くない。乗り心地はまるで高級車のようだ。
難点といえば風を避けさせるためなのかすぐ前方にヨルムの体があるので
見晴らしが若干悪いことくらいかな。
「凄い!色々凄い!」
「俺達のダチョウより随分速いな…」
「振動が全然ないよー。不思議だねー。」
しばらく経ってこの前方向転換した場所に来たのでヨルムから降りて並走する。
「じゃあ行って来る、また後でな。」
「ナルベク早ク来テクレ。」
「行ってらっしゃい。」
「いつか俺もその域に…」
「気をつけてねー。」
皆に一時の別れを告げて首長地竜がいる森に向かう。
人目もなくなったことだし飛んで行ってみようかな。
以前とは違った視点で行けば何か発見できるかもしれない。
飛行は何事もなく順調で、やがて首長地竜の姿が見えてきた。
面白い発見はなかったが飛行の勢いを殺さずに首長地竜に向かって蹴りを放つ。
気分は【仮面運転手】だ。
「運転手キーック!」
全力で先制攻撃できるというだけでもランクが下がってもよさそうなものだが…
首長地竜は絶命し、ドロップ品は皮と肉だった。もっと期間を空けないとダメか。
この前三角地竜からフリルが出たのは運がよかっただけっぽいな。
皮と肉を図鑑にしまって三角地竜の縄張りに向かう。
ヨルムと三角地竜ならヨルムの勝ちは間違いないだろう。
同格扱いされて若干不機嫌になっていたのが直っているといいが…
縄張りに到着したがどうも様子がおかしい。
ヨルムが首に巻きついていた時のサイズに戻り、3人が三角地竜に攻撃している?
三角地竜はというと…反撃するでもなく草を食べているわけでもない。
「どういう状況なんだ、これは?」
地竜から少し距離を置いていたヨルムに尋ねる。
「オオ、ポノカ、早カッタナ。
見テノ通リ地竜ナド我ノ麻痺毒デ全ク動ケナイヨウダゾ。
試シニアノ3人ニ攻撃サセテイルトコロダ。」
すっかり上機嫌だ。それで地竜は何もしていなかったのか。
「剣が刃毀れしてる…新しいの買わなきゃだわ。」
「傷は付くけどすぐ治るな。どれくらいゾウを狩ればこいつに届くんだ…?」
「堅いねー。今は倒せそうもないし、もうやめにしないー?」
「ポノガ来タカラ決着ヲ付ケルゾ。」
地竜に向かって毒をかけると縮むことなく絶命した。
アイテムの説明だとBランク以下は即死って書いてあったはずだが…
今のヨルムならAでも格下なのかもしれないな。
「ヨルムちゃん凄い!」
「さすがだな…次ヨルムに挑むのは地竜を倒した後だ。」
「気が早いよー。まずはゾウを簡単に倒せるようにならないとー。」
ドロップ品がないな。運が悪いだけとは考えにくい、何か決まりがあるんだろう。
だったらサメはそのまま倒してもらってもよかったか…
「ヨルムの実力も証明されたし今日のところは帰らないか?」
「そうね、ヨルムちゃんに乗って町まで行くのはやめた方がよさそうだし。」
「そうだな、今日はゆっくり休んで明日から本格的にゾウを狩るとしよう。」
「賛成ー、あたしも疲れたよー。」
その後はナワツボ平原までヨルムに乗せてもらい、そこから俺は走り、
ラナは俺のダチョウ、ゴンザナシ達は自分達のダチョウでそれぞれ町に向かった。




