21.宴
町に到着したのでダチョウから降りて図鑑にしまう。すっかり夕暮れ時だ。
「さて、とりあえずは飯にするか?」
「賛成!一日中動き回ってたからお腹が減りすぎて背中にくっつく勢いよ。」
「そこまでなる前に一旦戻って何か食うか、
最初から食う物を携帯しておけばいいだろうに。」
「初めてシマロバが倒せたんですもの、
夢中になっててそんな気にならなかったのよ。」
反復作業だというのに嬉しさが勝ってたわけか。
トラウマも克服したようだし、指導する立場として少し労ってやるか。
「夢中になるのはいいが初日に飛ばしすぎると後が続かないかもしれない、
程々にしておくことだな。それと、店に入っても注文は少し待ってくれ。」
「?…なんでよ?」
「いいからいいから。」
はぐらかしつつ歩き、店に到着した。
いつも通りの喧騒に包まれ、繁盛しているようだ。
図鑑からヌーの肉を取り出してカウンターの上に置き、おっちゃんに頼み込む。
「おっちゃん、今日はこれを焼いてくれないか。
特別料金を取ってもらって構わないから。」
「えっ…」
「おっ、ヌーの肉かい?肉を提供してもらえるなら代金は安くしとくよ。
いつもの感じでステーキにすりゃいいんだろう?」
「ああ、それで頼むよ。とりあえず俺とラナの分を。あとビールもくれ。」
「あいよっ!先にビールな!すぐ焼くから待っててくれ!」
「…ねえ、どういう風の吹き回し?」
「とりあえずは乾杯だ。」
ジョッキをラナの方へ突き出す。
ラナの方もジョッキを突き出し…
「「乾杯!」」
と、ビールを流し込む。
「ふう、沁みるな。」
「ぷぅっはぁー!くぅー!この時のために生きてるようなもんよねー!」
…そんなにビールが好きだったか?
どちらかと言うと好きなのは飯の方だと思ってたが。
「まぁ…頑張ったラナへの労いだ。嫌じゃなければ食ってくれ。」
「…ありがとう!もちろんいただくわ!」
ラナはわくわくした様子で今か今かと料理が出てくるのを待っている。
「お待ちどう!ヌーのステーキと白米だ!」
「わー、来た来た。本当に食べてもいいのよね?」
「もちろんだ。思う存分食ってくれ。」
「いただきまーす!…おいしい、おいしいわ!脂がこんなにおいしいなんて!」
「そうか、それはよかった。」
俺もステーキを口に運ぶ。
美味い、美味いが…どうにも脂身の食感が好きになれないな。
おっちゃんの手前、そこだけ食わないわけにもいかんが…
脂身を敬遠していることを悟られないよう、
白米とビールとで誤魔化しつつ食べ終えた。
夢中でがっついていたラナの皿はいつの間にか空になっている。
「ねえ、もう一切れ食べてもいい?」
よく食うな…よく動いてはいるから太らないのかな?
「いいぞ。好きなだけ食え。」
「やたっ!おっちゃん、もう1枚よろしく!」
「あいよっ!大盤振る舞いだな、何か良いことでもあったのかい?」
「今日はラナがシマロバを倒した記念すべき日なんだ。」
少々大げさに言ってみた。
「そいつはめでたいな!ラナちゃんにとっては大きな一歩だったってわけだ!」
突っ込むことなく祝っている。よく見ると目には光る物が浮かんでいる。
そうか、おっちゃんは成長できなくて悩んでいるラナを見続けてきたんだもんな。
と、周りがこちらを注目していることに気づく。
視線の先は…出しっぱなしになっているヌーの肉か。
そんなに物欲しそうな目をしても…いや、この際だから利用させてもらおう。
カウンターにヌーの肉を追加で4つほど置く。
「おっちゃん、これをみんなに振舞って盛大にラナを祝ってやってくれないか。
代金は俺が持つ。みんなで好きなだけ飲んで食ってくれ。」
「わかった!任しとけ!」
「ちょっと…勝手に決めないでよ。恥ずかしいじゃない…」
「強くなればこういう機会も増えるだろう。今の内に慣れておいた方がいいぞ。」
よく通る声でおっちゃんが叫ぶ。
「みんな!今日はラナちゃんがシマロバを狩った記念すべき日だ!
ここにあるヌーの肉含めて食える限り食え!ビールも飲める限り飲め!
代金はここにいるポノが払うそうだ!みんなで盛大にラナちゃんを祝うぞ!」
一瞬の静寂の後…大歓声が巻き起こった。
さて、巻き込まれない内に逃げるか。
「じゃあ俺は組合に用事があるから少し外すぞ、また後でな。」
「ズルい!逃げる気ね!」
図星だが止まってはやらんぞ。
「ははは、主役はラナだ。俺はいてもいなくても関係ないさ。」
「おっちゃん、ポノが代金を払わずに逃げる気よ!」
ラナは苦し紛れに適当なことを言い出したが、
おっちゃんは苦笑いしながら否定した。…ラナは観念したようだ。




