14.ラナの復調
酒場に着くと見慣れた後姿が目に入った。
「ラナ、もう完全に馴染んだのか?」
ラナはこちらを振り返る…が、頬を目一杯膨らませた状態で、
口からは鹿牛のステーキがはみ出している。見た目はいいのに残念なんだよな…
その状態では喋れないことに気付いたようだ。
「ゆっくりでいいから食ってからにしてくれ。おっちゃん、いつもの!」
「あいよっ!」
こちらの言葉を気に留めることなく急いで咀嚼して飲み込んだラナが口を開いた。
「だいぶ馴染んだと思うわ。
と言ってもまだ全力で動いてはいないから確実とは言えないけど。」
「そうか、それはよかった。」
「今ならきっとシマロバでも倒せるわ!」
明後日の方向を見ながら握り拳を作っている。
「気持ちはわかるが急にやるのは危ない。
背伸びしすぎるなっておっちゃんにも言われてるだろう?」
「それはそうだけど、力を試したくなるのは本能っていうか…」
ラナも危ないな…ゴンザナシといい、こういう人間が多いのだろうか?
いや、少なくともマトンは違ったよな。そっちが多数派であると願いたい。
「気持ちはわかるが危ないから言ってるんだよ。
予め言っておくが忠告を守らず無茶した場合は助けないからな。」
「…わかったわよ。」
渋々納得した様子だが…本当に大丈夫か?
「はいよ!お待ち!」
来た来たこの味。何度でも言おう、肉と白米は正義だ。
「しかしうまいな。鹿牛ってのは誰が焼いてもこんなにうまいのか?」
「ポノ、なめちゃあいけねえよ!この道40年は伊達じゃねえぜ!」
おお、名前を覚えてくれてたんだな。さすがは客商売だ。
「誰が焼いてもそれなりには美味しいんだけど
やっぱりおっちゃんの程の味にはならないのよね。」
「嬉しいこと言ってくれるね!ビールいるかい?」
「いるいる!おっちゃんありがとー!」
何度も転がす女に何度でも転がされる男か…まぁ本人がいいならいいんだろう。
「あー、うまかった。ごちそうさま。」
代金を置いて店を出る。
「毎度!」
宿に戻ると判断したのかラナが追従してきた。
「ところで、兎狩りに行った割には時間がかかったわね。
そんなに大量に狩ってたの?」
「兎狩りはすぐに切り上げてその先の川まで行ってきたんだ。」
「川…って遠すぎない?ここにいるってことは往復したのよね?本当に?」
「言っておくが俺は足も速いぞ。」
「あー…確かに手合わせの時、ゴンザナシさんに
ピッタリついていけてたくらいだったもんね。」
「まぁそういうことだ。」
「ポノの図鑑を見るのが楽しみになってきたわ!」
そう言って宿の方に走り出した。曲がる手前でこちらに向き直り、
「早くー!!」
などと叫んでいる。
欲望に素直な奴だな…まだ倒してない動物を教えてもらえるかもしれないし
こっちも楽しみではあるのだが。




