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第105章 静が俺を質問攻めにする話

妹の部屋に友部と青柳の美少女二人を迎えた夜。妹は聞きたいことがあるというのだった。

「だから、オーディションのことよ」

 静はテーブルの上に身を乗り出すと、俺と二人の美少女の顔を順に見比べた。

「先週から中学校でも話題なの。大大地高の四人の美少女のことは、うちのクラスではみんな知ってるよ」

「うそ。そうなの?」

 と、青柳。

「もともと、少し有名ではあったの。特に、透子様のことはね。たまたま、うちのクラスは大大地高生の兄弟が多くてね」

「待てよ、静。どっちかって言うと、おまえが一番、率先して、噂、広げてないか?」

「うーん。そう言われると弱いかも……でもね、同級生でお姉さん、お兄さんが、大大地高生の人がいる話は前にしたでしょ。菅谷君とか、多賀さんとか、内原さんとか……」

「内原さん……て、あの生徒会の内原先輩の妹さん?」

「そうだよ。お姉さんは透子様の話ばかりしてるって……透子様に会ってみたいって言われた。知り合いだって言ったら、すごくうらやましがられたよ。あと、大宮さんも同じクラスなの」

「大宮さん……って、あの、みなみんの彼氏の大宮先輩? 妹がいるんだ。しかも、静ちゃんのクラスに……世間は狭いね」

 友部が少しびっくりする。

「大宮さんてね、すっごい、超かわいい子。みなみんにも会ったことあるって言ってたよ。何回か、家に遊びに来たんだって。あんなきれいな人、見たことないってびっくりしてた」

「びっくりね。中学生の間でも話題になってるなんて」

「特に、最近のオーディションの話は面白すぎって、みんな騒いでいる。さーちゃんの人気もすごいって、菅谷君は言ってたよ」

「ウフフ、ありがと、静ちゃん。私にまで気を使ってくれて。中学生にまで名前が知られるなんて、なんかくすぐったいね」

「絶対美少女三番勝負の話も、ものすごく受けてる。テレビより面白いって言われた」

 やっぱり静が率先してみんなに話しているらしい。どうりで、最近、食事の時などに、根掘り葉掘り、聞いてくるわけだ。

「で、この際、おにいちゃんに聞きたいことがあるんだ。というのも、みんなに同じこと聞かれるんだよね。だから、教えて」

 そうか。いつもなら部屋に入れてさえもらえない俺を、美少女二人とくっつくように同席させてくれたのは、俺からも大大地高情報を引き出そうっていう魂胆か。まあ、別に秘密もないからいいけど。

「教えてって、何を?」

「みんなから聞かれるのは、どうして、主役は自分と決めておきながら、ヒロインだけ公募するんだってことなの」

「え、あ……それは……」

 しまった、秘密があったか。それにしても、また、この質問だ。理由は俺も知らない。那加の言うことはいつも絶対なので、追求することもなく受け入れてしまったし、生徒会のみんなも、そこまで考えずに、俺の提案だからそれで行こうという感じだった。那加の指示であることは秘密なので、とにかく適当にごまかすしかない。

「俺は、美しいヒロインと愛を語り合う、おいしい主役をやりたくてこの計画をたてたんだ。現実世界じゃ全くもてないんだから、俺の夢だよ。それで、もし、主役をオーディションにしたら、俺が選ばれるわけないだろ。だから、最初から俺がやるって、決めておいたのさ。」

「じゃ、ヒロインは? 最初から透子様にしてもよかったんじゃない?」

「いや、それだと、俺の自分勝手な夢につきあわせるみたいで、委員長にもうしわけないから……」

「嘘つきね」

 と友部が鋭く俺をにらむ。睨んだまま妹に言う。

「静ちゃん、あなたのお兄様はとんだ嘘つきよ。逆なの。オーディションにしたのは、私じゃなくて別の人をヒロインにしたかったからなの。だって、私が最初にオーディションの発表をするとき渡された原稿にはこう書いてあったのよ。『私も立候補します。この絶対美少女に勝てると思う人がいたら立候補してください』って。つまり、最初から私に立候補させるつもりだったわけ。万が一、他に立候補する人がいなければ、私がヒロインになるわけなの。つまり、私には立候補しないという選択肢はないのよ。オーディションにしたのは、むしろ、文句の出ない形で、私をヒロインにしないで、別の人と愛が語りたいため……なんでしょう? ジラ、正直に言いなさい」

 友部は、隣の俺の方へ、肩が触れあうほど身を乗り出すようにして、俺の方を見るので、俺はどきっとする。美しい顔が目の前にあるし、足を組み替えた弾みに、テーブルの下の足が俺の足にぶつかったりしたりした。生徒会室では長いこと一緒にいるのでたまにニアミスがないわけじゃないが、こんなに長い時間、ニアミスをしているのは初めてのような気がする。どきどきを気づかれないように、ちょっと大げさに否定する。

「正直も、何も……まさか、そんなことありませんよ。あるわけないじゃありませんか。だって、あの時だって、言うか言わないかは委員長が決めて下さいって、ちゃんと言ったじゃないですか」

「ううん、きっと、従うと思って提案したに決まってるわ。ま、ダメって言われても立候補するけどね、私は。ジラの思い通りにはさせないわ」

「透子さん、だめよ。たかちゃんをからかっちゃ。たかちゃんは、ばかがつくぐらいまじめなんだから、本気にしちゃうよ」

 と青柳がテーブル越しに身を乗り出す。

「たかちゃんは最初から透子さん以外のヒロインは考えてないと思うよ。オーディションにしたのは、盛り上がるから……、そして、もう一つ。私の勝手すぎる解釈では、私は、たぶん、たかちゃんが、私みたいなブスにも、ヒロインになる夢を見せてくれようとしているんだと思ってるんだ。そうなんでしょ、たかちゃん」

 青柳にまで至近距離で見つめられて、俺はいっそうどぎまぎする。この二人、どっちもかわいすぎるよ。

「いや……あの、違うよ」

 正直に那加の指示だと言ってしまいたい。那加は何を考えているのだろう。青柳をヒロインにすると言っていた。

「あの、第一、さーちゃんは美人だよ、俺の友達は、俺も含めて、みんなさーちゃんのファンだよ。ね、委員長」

「私もファンだよ。愛の天使って、ヴィーナス先輩の言うとおりだと思う。オーディションもあなたが大本命だと思うよ。私、このごろ、つくづく、思ってるの。美人かどうかって顔のきれいさだけじゃないなって。顔に性格が出るよね。そういう意味では、私は、自分勝手だし、ひねくれてるし、美人からほど遠いなって思うよ」

「あの、透子さん」

 青柳が体をずらして友部にひっつくと、眼では笑いながら口をとがらせて、友部の顔をのぞきこんだ。

「なぐさめてくれて、すっごくうれしいんですけど、それって、フォローになってないよ。結局、顔だけみればブスだってことでしょう? ま、ブスですけど」

「もう、佐和ったら……」

 友部は青柳の両肩に両手を置く。

「やめてよ。あなたみたいな超美形アイドルが、そういうこと言うのは、かわいいけど、私にとってはかえっていやみだよ。絶対美少女なんて自分で言ってる私が、とんだおバカキャラじゃない」

「委員長は文句なし、ほんとに絶対美少女だよ」

 青柳も両手で友部の肩を持つと、顔をじっと見つめた。

「眼も鼻も唇も肌も、本当に完璧、奇跡みたい」

「あのね。一応、言っておきますけど、私が本気で、絶対美少女だって思っているわけじゃないからね。ジラが言えって言うから、そのまま言っただけ。でも、おかげで盛り上がったとは思うけど」

「私はたかちゃんの言うことの方が正しいと思います。友部透子は、絶対美少女、しかも日本一の、ね。そうでしょ、たかちゃん」

「え、ああ、もちろん」

 俺は少し焦る。もちろん、友部の美しさは「絶対美少女」にふさわしいと思ってはいるが、そう言うべきなのか。

「うそ、青柳佐和の方が美人だって、ジラ、内心は思っているんでしょ」

「え、あの、もちろん、さーちゃんは委員長に負けないくらい美人だと思う」

「うそつき!」

 と二人が声をそろえたのでびっくりした。

「私が委員長にかなうわけないじゃない」

「私が、佐和にかなうわけないじゃない」

 と声をそろえて言う。そして、二人で笑い出した。両肩を捕まえた手を背中にまわして、抱き合いながら涙が出るくらい笑っている。二人はとても美しく輝いていた。二人がふだんよりずっと、リラックスして、幸せそうにしているのを、二人の体温が感じられるくらい近くで見ているのは楽しい。なんか俺までうれしくなった。


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