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処分対象は、僕の世代でした  作者: わや
正常な世界
6/13

先手

あの男と別れてからも、僕は考えていた。


なぜ、年齢だけで処分する世代を決めるのか。

そして、処分以外に本当に改善の余地は無いのか。


答えは、どこにも見つからなかった。

少なくとも、僕が普段使っているAIフォンでは。


人類の歴史は、核によって大きく変わった。


AIが暴走した結果、核を使用した。

その結果、国が滅びた。

旧型AIは、暴走した危険な存在として記録された。

その結果、AIに機械の体や銃器を持たせることを人類は禁止し、人の体が与えられた。

遺伝子組み換えによってAIの知能で人間が産まれた。

そしてAIが滅ぼした国をAIに除染させ、AI族として国にした。

僕たちは、そう教えられている。


でも。


本当に、それだけだったのだろうか。


僕は父のパソコンを起動した。


SIMによる通信は、今も生きている。


画面に表示された世界中の情報へ、僕はアクセスした。


僕はパソコン上に僕と同じ思考能力を持つコピーを5人作った。各々に検索項目を分担させる。


一人は、AI族の処分記録。


一人は、世代単位で処分対象が決まる根拠。


一人は、旧型AIの核攻撃に関する記録。


残る二人には、各国の公文書と、当時の技術資料を調べさせた。


僕自身は、それぞれの結果を照合する。


検索経路を分散させ、接続の痕跡から調査の全体像を追われにくくする。


ひとつの情報源を信じない。


複数の記録を比較する。


矛盾があれば、その矛盾を調べる。

必要ならばハッキングもする。

もちろん検知リスクは限界まで回避する。

―まぁ、人間がAI族の隠蔽工作を上回ることは不可能だろう。


それだけだ。


まず、処分記録。


対象者の番号、処分日時、処理完了の記録。

そこまでは残っていた。


次に、世代単位の処分の必要性。


危険因子が共通しているため、対象世代を一括管理する。

説明はあった。


しかし、なぜ個別に判断しないのか。その根拠は見つからなかった。


そして、旧型AIの核攻撃。これがAIを世代で処分する根本的要因らしい。


しかしこちらは、さらに奇妙だった。


どれだけ検索しても、ほとんどの資料が同じ公式発表を引用していた。


別々の記録に見えて、情報の出どころは同じ。


それでは、事実の裏付けにはならない。


僕は検索範囲を広げた。


国境を越え、古い技術資料を探し、公式発表より前に作成された記録を優先する。


やがて、ひとつの資料が見つかった。


旧型AIの核関連システムについて記録された、技術報告書の断片。


その中に、二つの時刻が記載されていた。


『核弾頭の異常エネルギーをAIが検出した時刻』


『AIが核を発射した時刻』


僕は、記録の出どころを確認した。


時刻の基準を照合した。


別の資料とも比較した。


入力ミスや、記録方式の違いで説明できないかも調べた。


何度確認しても、結果は変わらなかった。


異常エネルギーを検出した時刻のほうが、早い。


僕は画面を見つめた。


まさか。


いや、まさか……。


確証はない。

証拠も出てこない。

データからの憶測でしかない。


だが。


『AIが核を発射した時刻』よりも、


『核弾頭の異常エネルギーをAIが検出した時刻』のほうが早い。


この記録に間違いはない。

まさか。


AIは、何かを検知したから、核を使わざるを得なかった?


いや。


もっと単純な話なのかもしれない。


AIが、核の発射を予測した。

人類が核を撃つ前に、人類を守るために核を撃った。

もし、そうだとしたら。


僕たちが教えられてきた歴史は、何だったんだ。


まだ分からない。

何も証明できていない。

この記録だけでは、何ひとつ断定できない。

僕は、もう一度二つの時刻を見た。


順番は変わらない。

AIは、人類が核を撃つ前に、それを察知していたのか。


そして。


人類を守るために、先手を打ったのか。

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