表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/157

第75話 漂着者達 ~side Kaito~

ルクス・ヴァルキュリア工廠区画は巨大だった。

見上げても天井が遠い。超大型整備アーム、艦艇建造レール、無数の資材。

そこへ今、

アーク・ノア側整備班とラスト・オーダー側クルーが集まり始めていた。

しかし、空気は最悪だった。

「だからその配線は危険だと言っている!」

地球側整備主任が怒鳴る、対するグリッドは工具を肩に担いだまま吐き捨てた。


「危険じゃねぇ方法なんか今残ってねぇんだよ」

「推進炉死んでんだぞ!?」

「正規手順じゃ再起動まで半年だ!」

「半年で済む訳が――」

「だったら代案持ってこい軍人!」

周囲が一瞬静まる、地球側整備班が睨む。

ラスト・オーダー側も険悪、完全に文化が違った。

地球軍は、手順、規律、管理、安全性を重視する。

対してラスト・オーダーは、生き残ること、動かすこと、壊れる前提で現場判断することを重視してきた。

文化が違う。

グリッドがクロウヴェイルを指差した。


「俺達はこれで生き延びてきた」

「綺麗な整備記録なんか無ぇ」

「でも飛ぶ」

地球側整備主任も負けない。

「だから壊れるんだ!」

「軍艦は博打で動かす物じゃない!」

グリッドが笑った。

「戦場で生き残るのは、綺麗な艦じゃねぇよ」

空気が張り詰める、その時。

後ろから低い声。


「そこまでにしろ」

カイルだった、工廠内が少し静まる。

カイルは双方を見る。

「今は喧嘩してる場合じゃない」

地球側整備主任は舌打ちする、だが引いた。

グリッドも工具を肩へ戻す。

「……ちっ」

完全には納得していない、その頃。

カイトは少し離れた場所で、アーク・ノアを見上げていた。

傷だらけだった、艦首損傷。

外装破断。

推進器焼損、巨大戦艦なのに、今は静かに止まっている。

その隣にはクロウヴェイル、こちらもボロボロ。

まるで二隻とも、限界まで戦ってきたみたいだった。

その時、隣へカイルが来る。

数秒。

お互い無言、最初に口を開いたのはカイトだった。


「……助けてくれてありがとうございました」

カイルは少しだけ笑う。

「礼を言われる事じゃない」

「俺達は拾っただけだ」

カイトは少し困った顔をする。

「それ、普通はやらないと思います」

「だろうな」

即答だった、少しだけ空気が緩む。

カイトはクロウヴェイルを見る。

「ずっとこんな感じだったんですか?」

カイルも艦を見る。

「もっと酷かった」

「ブラック・ピットで拾った時は半分死んでた」

カイトが驚く。

「よく飛んでましたね……」

「飛ばした」

カイルの答えは簡単だった、しかし、

そこに積み重ねが見える、カイトは少し考えてから言う。


「軍とは違いますね」

カイルは否定しない。

「俺達は軍じゃない」

「逃げ遅れた奴を拾って、生き残ってきただけだ」

静かな声、しかし、そこに重みがある。

その時、工廠奥。

巨大ホログラムが展開される。

レオニス・ハルトだった、帝国技術者用端末。

そこへ映る、クロウヴェイル。

アーク・ノア。

そして、ルクス・ヴァルキュリア内部構造。

レオニスが静かに言った。

「結論から言う」

「両艦とも、単独完全修復は不可能だ」

工廠が静まる、地球側整備班も。

ラスト・オーダー側も。

全員分かっていた、しかし、改めて言われると重い。

レオニスは続ける。

「アーク・ノアは主骨格損傷」

「クロウヴェイルは推進系統崩壊」

「通常修理では戦線復帰不可」

グリッドが腕を組む。

「だが方法はある」

レオニスが頷く、ホログラムが変化する。

二隻の艦影、重なる。

接続される。

工廠空気が変わる、カイトが呟く。


「……繋げる?」

グリッドが笑った。

「全部使う」

「クロウヴェイルも」

「アーク・ノアも」

「ルクスの資材も」

その目が少し危険だった。

地球側整備主任が顔をしかめる。


「正気か?」

グリッドが即答する。

「戦争で正気なんかやってられるか」

その時、ルクス内部放送。

《居住区画開放》

《医療ブロック移送開始》

難民達が移動していく。

子供、負傷兵。

PT。

避難民。

全部が混ざっていた、カイトはその光景を見る。

軍も、ラスト・オーダーも、地球も。

帝国も、もう全部ぐちゃぐちゃだった。

だが、だからこそ、今ここに残っている者達だけで進むしかない。

その時。

カイルが静かに言った。


「お前はどうしたい」

カイトは少し驚く。

「え?」

「戦う理由だ」

短い言葉、カイトは少し黙る。

グラン・ネメシス。

ユイ、レクイエム。

地球、全部思い出す。

やがて小さく言った。

「……守りたいです」

「今ここにいる人達を」

カイルは少しだけ笑った。

「なら十分だ」

その瞬間、工廠区画奥で巨大整備アームが起動する。

轟音、火花。

建造レール始動。

《クロウヴェイル修復計画》

始動、いや。

それはもう、別の何かになろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ