表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/152

第72話 終焉 ~side Raven~

グラン・ネメシスが崩れていた。

巨大要塞内部では、警報、爆発、崩落が途切れない。

外周ブロックは次々と分離し、帝国艦隊も完全に混乱していた。


GD暴走。通信断。火災。

もはや誰も、戦争を制御できていない。

そしてその中心。

《ネメシス・レクイエム》

巨大な黒いドラゴンが、要塞中心部を破壊しながら暴れていた。


クロウヴェイル艦橋。

警報音が鳴り続ける。

クロエが叫ぶ。

「崩壊速度上昇!」

「このままじゃ要塞ごと吹き飛ぶ!」

リノヴァが歯噛みする。

「カイル達は!?」

『まだ内部!』

モニターには崩壊し始めた内部構造図。

赤く染まる区画。

封鎖される通路。

時間がない。

その頃。

要塞内部。

カイル達は崩壊する通路を走っていた。

後方で爆発。

隔壁崩壊。

リンが振り返りながら叫ぶ。


「急げ!」

レータがホログラムを展開する。

「第三搬送路消失!」

「次の崩落まで七十秒!」

グリッドが吐き捨てる。

「毎回ギリギリすぎんだろ!」

その時。

前方通路。

白い影。

イリスだった。

その後ろには数人のPT。

怯えている。

混乱している。

だがイリスだけは静かだった。


「……こちらです」

カイルが頷く。

「誘導頼む」

イリスは小さく頷いた。

以前の空っぽな声とは少し違う。

微かに、意思があった。


その頃。

レクイエム内部。

ユイは限界だった。

神経接続暴走。

NB共鳴。

視界が赤い。

それでも、まだ意識だけは消えていない。

その時。

衝撃。

アルタイルだった。

カイトが再び突撃してきた。

蒼い光がレクイエムを貫く。

外装破損。

重力制御乱れ。

ユイが叫ぶ。


「来ないで!」

しかし、カイトは止まらない。

『助ける!』

その声が届いた瞬間。

ユイの中で、

ほんの少しだけ暴走が止まる。

レクイエムの動きが鈍る。

その瞬間だった。

クロエの声が通信へ飛び込む。


『今!』

『止まってる!』

同時に、クロウヴェイル側が動いた。

ECM妨害を最大展開し、要塞内部制御網へ強制侵入する。

クロエが歯を食いしばる。


「制御奪う!」

「十秒しか持たない!」

レータが補助接続。

イリスも静かに目を閉じる。

観測能力接続。

三方向からレクイエム制御へ干渉。

その瞬間。

レクイエム内部へ大量ノイズが流れ込む。

《制御異常》

《同期率低下》

《外部干渉検知》

ユイが目を見開く。

止まる。

ほんの少しだけ。

その隙に。

アルタイルが接近。

巨大ブレード展開。

カイトが叫ぶ。

「終われぇぇぇっ!」

蒼い斬撃。

レクイエム胸部コアへ直撃。

赤い光が砕ける。

次の瞬間。

レクイエム全身へ亀裂が走った。

咆哮。

悲鳴みたいな音。

巨大黒翼崩壊。

ドラゴン形態が崩れていく。

そして。

静止。

戦場全体が止まった。

レクイエムが、初めて動きを止めた。


しかし、グラン・ネメシスはもう限界だった。

《深層炉暴走》

《構造維持不能》

《全区画退避――》

最後まで流れなかった。

巨大要塞中央部が爆発する。

崩壊開始。

超巨大構造体が内側から砕けていく。

帝国艦隊が逃げ始める。

地球艦隊も後退。

宇宙そのものが崩れていくみたいだった。

その時。

クロウヴェイルが突入する。

傷だらけの艦体。

限界推進。

それでも進む。


「カイル!」

リノヴァが叫ぶ。

格納庫開放。

回収ワイヤー射出。

カイル達がPTを連れて飛び込む。

ナユ。

リン。

レータ。

イリス。

そして、保護されたPT達。

最後。

崩壊するレクイエム残骸の中。

ユイが落下していく。

意識を失いながら。

その瞬間。

クロウヴェイル側回収アームが伸びた。

ギリギリで掴む。

艦橋で全員が息を呑む。

グリッドが叫ぶ。

「引き上げろ!」

ワイヤー巻き上げ。

直後。

背後でグラン・ネメシス外周が崩壊した。

巨大爆発。

光。

衝撃波。

クロウヴェイルが激しく揺れる。

警報。

外装損傷。

推進器異常。

それでも、

進む。

逃げる。

生き残るために。


格納庫。

ユイが運び込まれる。

重傷。

神経損傷。

意識なし。

しかし、生きていた。

カイトも傷だらけで降り立つ。

数秒。

誰も喋らなかった。

その時。

医療区画側の通信端末から、アイナの小さな声が届く。


「……助かったの?」

静かな空気。

カイルがゆっくり頷く。


「助けた」

その言葉で、ようやく少しだけ空気が戻る。

クロウヴェイルは進む。

崩壊する巨大要塞から離脱しながら。

傷だらけの船。寄せ集めの人間達。PT。難民。

全部を乗せたまま、それでも進む。

それでよかった。

ラスト・オーダーは、

最初からそのための船だったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ