表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/157

第67話 疑念 ~side Yui~

グラン・ネメシス深層。 中央監視区画。

薄暗い部屋だった。 巨大モニター群。

戦術表示。神経波形。艦隊配置。

その中央に、黒い巨大反応が映っている。

《ネメシス・レクイエム》。 拘束状態。

しかし、 脈動が以前より強い。 まるで眠りながら怒っているみたいだった。

ユイは無言でモニターを見る。 疲労が限界に近い。

監視。 潜入。 嘘。 そして。 レクイエム。

全部が重すぎた。 その時。 背後の自動扉が開く。

重い空気が流れ込む。 レグナートだった。

長い黒コート。 冷たい視線。 彼は静かにユイの隣へ立つ。


「最近、随分忙しそうだな」

ユイは振り返らない。

「……任務ですので」

レグナートは小さく笑う。 その笑みが逆に怖い。


「そうか」

「なら問題ない」

短い沈黙。 モニターには帝国艦隊。

増え続ける戦力。 巨大要塞。 全部が戦争へ向かっている。

レグナートは静かに続ける。

「君は優秀だ」

「だから残念だよ」

ユイの指先が僅かに止まる。 だが表情は変えない。

レグナートは既に気付いている。 確信だった。

その時。 監視区画奥の扉が再び開いた。

重い足音。 複数の護衛兵。 そして。

中央に立つ男。 白銀の軍服。 異様に整った姿勢。

冷たい笑み。 ヴァイス・クロムウェル。

空気が変わる。 この男だけ、種類が違う。

狂気の質が違った。 ヴァイスはモニターを見る。

レクイエム。 巨大反応。 その目が僅かに愉悦を帯びる。


「……素晴らしい」

「進化だ」

小さな声。 だが寒気がした。 ヴァイスはゆっくりユイを見る。

その視線だけで嫌悪感が走る。

「君がユイか」

「オリジナルY系列」

「興味深い」

ユイは答えない。 ヴァイスは気にしなかった。

むしろ楽しそうだった。 彼はレクイエムへ近付く。

巨大モニターへ手を伸ばす。

「帝国は停滞していた」

「管理しすぎた」

「制御しすぎた」

「だがネメシス思想は違う」

その目が笑う。

「進化とは暴走だ」

空気が冷えた。 ユイは静かにヴァイスを見る。

この男は危険だ。 レグナートとは別方向で。

レグナートは“管理”する。 だがヴァイスは違う。

壊れる事すら進化だと思っている。 ヴァイスはレクイエムを見る。

その声は、まるで神を見ているみたいだった。


「兵器が苦しみを超えた時」

「初めて次へ至る」

「制御された存在に価値はない」

ユイは小さく拳を握る。 その時。 モニター警告。

《神経同期率異常上昇》。 《制御負荷増大》。

レクイエムが脈動する。 拘束フレームが軋む。

監視員達がざわつく。 ヴァイスだけが笑っていた。


「素晴らしい」

「生きている」

その瞬間。 ユイの中で確信する。 こいつらは止まらない。

もう。 その時。 レグナートが静かに言った。


「ユイ」

ユイが振り返る。 レグナートの目は冷たい。

全部分かっている目だった。

「次の実験に参加してもらう」

短い沈黙。 ユイは答えない。 しかし、

周囲の護衛兵が既に配置についている。

逃がさない。 まだ処分しない。 利用価値があるから。

それだけだった。 ヴァイスが笑う。


「安心したまえ」

「君は選ばれた」

「適性を持っている」

ユイはその言葉に寒気を覚える。 適性。

つまり。 最初から決まっていた。 その時。

遠くで再び重低音が響く。 グラン・ネメシス全体が震える。

まるで、巨大要塞そのものが狂気へ沈み始めているみたいだった。

そしてユイは理解する。 もう戻れない。

次は、自分が使われる番だと。

その時、レグナートがふと端末へ視線を落とした。

監視ログの一部が欠けている。

工廠区画の記録。搬送路の認証。数秒分だけ、不自然に空白がある。

「……内部に、余計な手を入れている者がいるな」

ユイは表情を変えなかった。

レグナートは笑わない。

「工廠内部か。あるいは、研究区画か」

その声は静かだった。だが疑念はもう生まれていた。

ユイは、何も知らないふりをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ