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第04話 候補生

「……LF候補生?」

カイトは呆然としていた。

ブリーフィングルーム。

全員の視線が集まっている。居心地が悪い。

「正式パイロットではない」

艦長が説明する。

「訓練課程を受けてもらう」

「適性確認も含めてな」

「いや急すぎません?」

「NBは待ってくれん」

即答だった。カイトは言葉に詰まる。

「……」

その時、ユイが静かに口を開く。

「断るなら今」

視線が向く。ユイは淡々としていた。

「中途半端で乗ると死ぬ」

「LFはそういう兵器」

空気が少し重くなる。ミオが小さくため息を吐いた。

「言い方」

「事実」

「まあそうだけど」

カイトは俯く。死ぬ。昨日から何度も聞いた言葉。

でも、現実だった。

NB。崩れる街。戦うLF。

あれはゲームじゃない。


その時、艦長が静かに言う。

「答えはすぐでなくていい」

「今日は休め」

「……はい」


アーク・ノア居住ブロック。

「うわ……」

カイトは部屋を見回していた。狭い軍用個室。

ベッドに机、ロッカーと必要最低限のものしかなかった。

「刑務所か?」

「候補生部屋は大体こんなもん」

ミオが苦笑する。

「私はもうちょっと広いけど」

「差別だ」

「階級差」

即答だった。その時ユイが部屋へ入ってくる。

手には段ボール。

「これ」

「?」

「支給品」

段ボールを開けると入っていたのは軍服に端末、そして大量の教本。

「うわぁ……」

思わず声が漏れる。その中の一冊の冊子に目が止まる。

《LF操縦基礎教本》。

カイトの顔が引きつる。

「マジで候補生じゃん……」

ミオが少し笑う。

「今さら?」

その時小さな物がコロンと段ボールから転がった。

「ん?」

カイトが拾う。小さな金属パーツ。翼を模したマークの古いエンブレム。

「何これ」

ユイが一瞬固まる。

「……あ」

珍しかった。ユイが明確に動揺した。

「竜奈?」

ミオも不思議そうに見る。ユイは無言でエンブレムを回収する。

「見間違い」

「いや絶対違うだろ」

だがユイはそれ以上答えない。そのままポケットへ入れた。

カイトは首を傾げる。

その翼のマークが何を意味するのか、カイトには分からない。

ただ、ユイが一瞬だけ本気で動揺したことだけは分かった。

「……収集癖とかあるタイプか?」

少しの沈黙の後、ミオが吹き出しかける。

「……っ」

「ミオ?」

「いや、なんでも」

妙に笑いを堪えている。ユイの視線が刺さる。

「言ったら撃つ」

「怖っ!?」

カイトは思わず後退する。だがミオは完全に笑いを堪えていた。

「……ユイ、また増えた?」

「増えてない」

「絶対増えてる顔」

「違う」

「部屋もういっぱいなのに?」

「ミオ」

少しだけ。ユイの頬が赤かった。カイトはぽかんとする。

昨日まで戦場で怪物みたいに戦っていた少女。

なのに今は、年相応に見えた。

その時艦内警報が響く。


『全候補生、訓練ブロック集合』

カイトが固まる。

「……嫌な予感しかしない」

ミオが笑う。

「訓練開始だね」

「待って心の準備が」

「大丈夫」

ユイが静かに言う。

「最初は皆死にそうになる」

「安心できる要素ゼロ!」

訓練ブロック。LF用模擬コックピット。

そこに候補生達が並ぶ。

その中で、カイトだけが明らかに浮いていた。

「なんで民間人いるんだ?」

「昨日の実戦参加者らしい」

ざわつく周囲。その時教官が入ってくる。

大柄で傷だらけの顔。

「静かにしろ」

一瞬で空気が凍る。

「今日から基礎訓練を開始する」

「LFは兵器だ」

「遊びじゃない」

教官の目がカイトを見る。

「死にたくなければ覚えろ」

カイトは思わず背筋を伸ばした。格納庫奥。

白いシートに覆われたアルタイル。静かにモニターだけが点灯する。

《適性反応確認》

《対象:霧島カイト》

誰にも気づかれないままアルタイルは静かに起動を始めていた。

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