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第231話 アミィ救出戦・後編

『……こわい……』

 その声が、通信路の奥から届いた瞬間、戦場の意味が変わった。

 命令ではない。

 識別名の反復でもない。

 外部呼びかけへの単なる反応でもない。

 感情だった。

 アミィ本人の奥から浮かび上がった、初めての感情反応。

 イリスは波形を見つめたまま、震える声で言った。

「本人反応、感情領域まで浮上しています」

 ミオの支援網が激しく軋む。

『支援網、限界に近いです。でも、まだ保護できます』

 リクトが叫ぶ。

「命令層負荷、さらに上昇! 強制再同期がアミィ本人反応を押し込もうとしてる!」

 レータは、ヴァルクレイドの操縦席で息を呑んだ。

 こわい。

 それは、アミィが初めて自分の状態を言葉にした声だった。

 命令ではない。

 誰かに言わされたものでもない。

 アミィ自身が、怖いと感じている。

 レータは操縦桿を握る手に力を込めた。

『アミィ』

 カナデの声がすぐに入る。

『レータさん、強く引っ張らないでください。短く、安心できる言葉だけを』

 レータは歯を食いしばり、声を抑えた。

『うん。分かってる』

 そして、通信路の奥へ向けて言った。

『怖くていい』

 通信路が小さく震える。

『……こわくて……いい……?』

『うん。怖いって言っていい。命令じゃないから』

 レータの声は、強くなかった。

 引き寄せる声ではなく、そこに置く声だった。

『私はレータ。ここにいる』

 ユイも続いた。

「アミィ。命令に戻らなくていい」

 ノクス・レクイエムの中で、ユイは命令層の揺れを見ていた。

 硬い命令層。

 白金色のセレスティア支援波。

 その奥に、震えながら浮かぶアミィ本人反応。

 強制再同期の固定波が、アミィを命令層へ沈めようとしている。

 セレスティア支援波は、アミィを守るように包み込む。

 だが、その包み方は同時に、彼女を命令層へ押し戻していた。

 檻。

 盾。

 支援。

 拘束。

 そのすべてが、同じ白金色の光の中にあった。

 ユイは、ノクス・レクイエムの補助層を細く伸ばす。

「アミィ。あなたは命令そのものではありません」

 通信路の奥から、小さな声が返る。

『めい……れい……こわい……』

 管制室で、黒瀬の手が止まった。

 イリスが叫ぶ。

「命令と異なる意思反応です。本人反応、継続」

 アミィの声が、さらに震える。

『もどる……こわい……』

 カナデが目を細めた。

「本人意思確認、成立です」

 黒瀬は一瞬だけ沈黙した。

 だが、すぐに端末へ入力する。

「PT-A01アミィ。命令と異なる本人意思反応を確認。恐怖反応、命令層への拒否反応、外部呼びかけへの継続応答」

 三島が記録を続ける。

 黒瀬は、はっきりと言った。

「本人意思確認、成立。救出作戦を継続します」

 レータは声を詰まらせた。

 だが、泣くのはまだ早い。

『アミィ。戻らなくていい。こっちに来たいなら、言って』

 カナデが小さく補足する。

『答えを急がせないでください。選べる言葉だけを置いてください』

 レータは頷いた。

『来たいなら、来ていい。怖いなら、怖いって言っていい。嫌なら、嫌って言っていい』

 ユイも続ける。

「アミィ。私達は、あなたに命令しません」

 通信路の奥で、アミィ本人反応が大きく揺れた。

『めいれい……じゃない……』

「はい」

『レータ……ユイ……』

 レータの目が見開かれる。

『うん。レータ。ユイもいる』

『こわい……』

『うん』

『もどりたく……ない……』

 その言葉に、解析室と管制室の空気が止まった。

 アミィは、戻りたくないと言った。

 命令層へ。

 白金色の檻へ。

 自分を名前のない兵器に戻す場所へ。

 それは、明確な本人意思だった。

     ◇

 グラトン観測室では、オルフェンが目を見開いていた。

 画面には、アミィ本人反応の急上昇が表示されている。

「拒否反応……?」

 部下が緊張した声で報告する。

「PT-A01、命令層への拒否反応を示しています。本人反応、想定を超えて浮上。強制再同期固定波が押し戻されています」

 オルフェンは、すぐに表情を戻した。

「第四負荷へ移行」

 部下が振り返る。

「第四負荷は許可範囲外です」

「本国許可は強制再同期処置に対して出ています。必要措置です」

「しかし、本人反応が崩壊する危険が――」

「崩壊させないために固定するのです」

 オルフェンの声は冷たかった。

「セレスティア中継を最大化。命令層固定波を上げなさい」

 その時、レオンから通信が割り込む。

『オルフェン。そこで止めろ』

「前線指揮官殿。現在、最重要段階です」

『アミィが拒否反応を示した。これ以上押せば壊れる』

「拒否反応こそ、再同期すべき不安定要素です」

『それを本人の声だと思わないのか』

「兵器の不安定反応です」

 短い沈黙。

 次のレオンの声は、低く硬かった。

『俺は前線指揮官として命じる。第四負荷を止めろ』

「監察局権限が優先されます」

『なら、前線補助回線を全遮断する』

 オルフェンの表情が変わった。

「それは明確な妨害です」

『防衛線保全措置だ。セレスティアの過負荷は味方部隊にも判断遅延を起こしている。ヘルメス隊もエリシオン管制も乱れている』

「詭弁ですね」

『好きに記録しろ』

 通信が切れる。

 直後、グラトン艦橋側からセレスティア端末群へ送られていた前線補助回線が遮断された。

 完全な停止ではない。

 監察局系統は残っている。

 だが、セレスティア端末群の補正速度が明らかに落ちる。

 部下が叫ぶ。

「前線補助回線、遮断されました! 固定波の増幅速度が低下!」

 オルフェンは歯を噛んだ。

「レオン……」


 戦場で、白金色の支援波が一瞬だけ揺らいだ。

 リクトが叫ぶ。

「補正が遅れた! 今だ、セラ!」

 セラは、フェンリオン・リサイトの狙撃画面を見ていた。

 強制再同期の中継端末群。

 囮。

 反射端末。

 補助端末。

 その奥に、全体の固定波を束ねている中枢端末が露出している。

 見えたのは一瞬だけだった。

 だが、見えた。

『中枢端末、捕捉』

 レイが前方の敵機を弾き飛ばす。

『射線を作る!』

 ヴァナルガンドが敵機群の間へ割り込み、強引に進路を開ける。

 カイトも通信路前方で踏みとどまっていた。

「判断遅延、危険域手前!」

 視界は白く揺れている。

 敵機の動きが二重に見える。

 アルタイル・ノヴァ・ブレイスの装甲には、すでに複数の損傷が走っていた。

 それでも、カイトは下がらない。

「通信路優先……位置維持……!」

 量産GDが通信路へ突っ込む。

 カイトは盾で受けた。

 衝撃で機体が大きく揺れる。

 警告音が鳴る。

 黒瀬が管制室で叫ぶ。

「カイト機、危険域に到達しかけています!」

 ジンが通信する。

「カイト、下がれるか」

「下がったら通信路が崩れます!」

 カイトは歯を食いしばった。

「数秒だけ持たせます!」

 ミオの支援網が、アルタイル・ノヴァ・ブレイスを包む。

『カイトさん、判断補助をこちらで絞ります。敵を全部見ないでください。通信路に近づく敵だけ見てください』

「了解!」

 カイトは視界表示を削った。

 敵数。

 被弾予測。

 攻撃候補。

 余計な情報を切る。

 守るべきものだけを見る。

 通信路。

 その前に来る敵。

 それだけ。

「ここは通さない!」

 カイトが敵機を押し返した瞬間、セラの射線が開いた。

 セラは息を整える。

 照準補助は使わない。

 命令でもない。

 効率でもない。

 自分の判断で撃つ。

『命令ではありません。私の判断で撃ちます』

 一射。

 フェンリオン・リサイトの砲撃が、白金色の海を貫いた。

 中枢端末が砕ける。

 セレスティア支援波が大きく揺らいだ。


 ミオがその瞬間を逃さなかった。

『支援網、全開にします!』

 ルナ・スケイル・リフレクトの鱗状パネルが一斉に開く。

 薄藍と真珠色の光が、戦場に広がった。

 広域支援ではない。

 今回は、一本の命を守るための全開だった。

 支援網がアミィ本人反応を包み、命令層へ押し戻される流れを受け止める。

 イリスが名前応答キーを最大感度へ上げた。

「レータさんの声、ユイさんの声、アミィ本人反応、同期確認。名前応答キー、固定します!」

 リクトが叫ぶ。

「固定しすぎるな! 本人反応を縛るな!」

「分かっています! 入口だけ固定します!」

 イリスは、アミィの反応を掴む。

 命令層でもない。

 セレスティア支援波でもない。

 A系列基本反応でもない。

 怖いと言った声。

 戻りたくないと言った声。

 レータとユイを呼んだ声。

 それを見失わないための、細い目印。

「本人反応、保護!」

 ユイはノクス・レクイエムの制御補助を深く入れた。

 警告が鳴る。

 アシュの声が飛ぶ。

『ユイ、上げるな!』

「上げません。切断補助だけです」

『出力が滲んでる』

「抑えます」

 ユイは息を整える。

 ノクス・レクイエムの奥から、強い出力がせり上がろうとする。

 命令層を切れる。

 壊せる。

 焼き払える。

 だが、それをしてはいけない。

 壊すためではない。

 切り離すためだ。

「アミィ。命令に戻らなくていい」

 ユイは呼びかけながら、命令層の接続へ補助層をかけた。

 硬い鎖を断ち切るのではない。

 結び目をずらす。

 命令層がアミィ本人反応を引き込む経路を、一瞬だけ外す。

 黒い光が、白金色の檻に触れる。

 セレスティア支援波が激しく揺れた。

 ユイは、今度はセレスティアへ向けて言った。

「セレスティア。守ることと、閉じ込めることは違います」

 その言葉に、白金色の波形が一瞬だけ乱れた。

 リクトが目を見開く。

「セレスティア側の命令処理に揺れ!」

 ミオが叫ぶ。

『保護支援波が、命令層への押し戻しと分離しています!』

 ユイは続けた。

「アミィを守るなら、命令に戻さないでください。アミィが壊れないように、外へ出る道を塞がないでください」

 セレスティア支援波が、二つの動きに割れる。

 一つは、アミィを命令層へ戻そうとする流れ。

 もう一つは、アミィ本人反応を崩壊から守ろうとする流れ。

 保護。

 同期。

 抑制。

 維持。

 命令が衝突する。

 アミィを守る。

 アミィを従わせる。

 その二つが同じではないと、セレスティアの中で処理矛盾が生まれた。

 リクトが叫ぶ。

「今なら剥がせる! ユイ、命令層だけ外せ!」

「はい!」

 ノクス・レクイエムの補助層が、命令層との接続を切り離す。

 白金色の檻が、完全には壊れずに、扉だけを開いた。


 アミィは、白金色の奥で震えていた。

 命令が遠くなる。

 防衛線を維持。

 支援を継続。

 命令に同期。

 外部反応を遮断。

 それらが、まだ聞こえる。

 だが、その隙間に声がある。

 レータ。

 ユイ。

 怖くていい。

 命令じゃない。

 戻らなくていい。

 アミィは、初めて自分の奥にあるものを見た。

 こわい。

 戻りたくない。

 でも、どこへ行けばいいか分からない。

 白金色の光は、まだ自分を包んでいる。

 それは怖い。

 でも、完全に嫌いではなかった。

 それは自分を守っていた。

 壊れないように包んでいた。

 けれど、そこにいるだけでは、声は遠くなる。

 レータの声が届く。

『アミィ。こっちに来たいなら、来ていい』

 ユイの声も届く。

「アミィ。あなたが選んでください」

 選ぶ。

 その言葉は、命令層にはなかった。

 アミィは、震える声で言った。

『……いきたい……』

 通信路が大きく震えた。

『レータ……ユイ……』

 レータの目に、涙が浮かんだ。

『うん。来て』

『こわい……でも……いきたい……』

 イリスが叫ぶ。

「本人意思反応、最大! 命令層と分離します!」

 ミオが支援網を絞り込む。

『アミィ本人反応を保護します!』

 リクトが命じる。

「回収経路を開け! カイト、通信路を維持! レイ、敵機を押し返せ! カイル、撤退路!」

「了解!」

『任せろ!』

『外周、開ける!』


 カイトは限界に近かった。

 判断遅延は危険域に入っている。

 視界は白く、敵の動きは遅れて見える。

 アルタイル・ノヴァ・ブレイスの左肩は損傷し、盾も削れている。

 それでも、カイトは通信路の前に立っていた。

「あと、少し……!」

 量産GDが突っ込む。

 カイトは盾を捨てるように押し出し、敵機を弾いた。

 もう追撃はしない。

 武器を振る余裕もない。

 ただ、道を塞ぐ。

 レイが前に出た。

『カイト、下がる準備をしろ!』

「まだ!」

『救出が通ったら下がれ。そこまでだ』

「了解!」

 ヴァナルガンドが敵機群を切り裂き、通信路周辺から押し出す。

 外周では、ヘルメス隊が動いた。

 だが、カイルのレイヴン・ハウルがその前に回り込む。

『悪いな。今日は通行止めだ』

 ヘルメス隊の機体が一瞬迷う。

 セレスティア干渉圏の内側へ入れば、自分達も判断補助を乱される。

 その迷いを、カイルは見逃さなかった。

『お前らも無理したくねえだろ。なら、そこで止まっとけ』

 レイヴン・ハウルが牽制射撃を放つ。

 ヘルメス隊は踏み込まない。

 完全な敵対ではなかった。

 少なくとも今この瞬間は。


 グラトン艦橋で、レオンは戦況を見ていた。

 アミィ本人反応が命令層から浮上している。

 ルクス側の通信路が、それを保護している。

 ノクス・レクイエムは命令層だけを切ろうとしている。

 セレスティアは揺れている。

 オルフェンから通信が入る。

『レオン司令。前線補助回線を戻してください。PT-A01が分離します』

「戻さない」

『それは敵の救出を助ける行為です』

「俺は防衛線を維持している」

『詭弁です』

「好きに記録しろ」

 レオンは前線表示を見る。

 エリシオンは動ける。

 追撃も可能だ。

 だが、今突っ込ませれば、セレスティア干渉圏の混乱に巻き込まれる。

 アミィも、ルクス側も、味方部隊も壊れる。

 レオンは命じた。

「エリシオン、前進停止。防衛線維持。追撃禁止」

 クラウスが記録する。

「了解。追撃禁止」

『レオン!』

 オルフェンの声が荒くなる。

 レオンは冷たく返した。

「俺の戦場で、これ以上壊すな」

 通信を切る。

 レオンは、画面に映るアミィ本人反応を見た。

 その反応が、命令層から離れていく。

 敵に奪われる。

 帝国戦力を失う。

 それは事実だ。

 だが、今それを止めるために全てを押し潰すことは、前線指揮官として許せなかった。


 ユイは、ノクス・レクイエムの制御を限界まで絞っていた。

 警告が鳴り続ける。

 命令層切断補助。

 セレスティア支援波との接触。

 アミィ本人反応の分離。

 出力逆流警戒。

 アシュが叫ぶ。

『ユイ、そこまでだ! 切れ!』

「まだ、アミィが――」

『切れ! もう扉は開いた。押すな!』

 ユイは息を詰めた。

 押せば、もっと確実に切れるかもしれない。

 だが、それは壊すことになる。

 アシュの言葉が正しい。

 ユイは操縦桿を握り直した。

「命令層切断補助、解除します」

 ノクス・レクイエムの黒い補助層が、白金色の檻から離れる。

 その瞬間、ミオの支援網がアミィ本人反応を包み直した。

 イリスが叫ぶ。

「本人反応、確保! 回収経路に乗ります!」

 リクトが続ける。

「セレスティア命令層との主接続、切断! ただし、セレスティア反応の一部は残っています!」

 黒瀬がすぐに確認する。

「アミィ本人反応への拘束は」

「主拘束は外れました! でも保護支援波の残留があります!」

 カナデが言う。

「それは切らないでください。今は、アミィ本人反応を崩さない方が優先です」

 ユイが頷く。

「はい。セレスティアは完全破壊しません」

 レータが通信へ入る。

『アミィ、こっち!』

『レータ……』

『うん。こっちに来て』

『いきたい……』

 その言葉と同時に、アミィの機体中枢反応がセレスティア命令層から離れた。

 機体ごと完全に安定したわけではない。

 だが、アミィ本人反応を含む中枢ブロックが、ルクス側の回収経路へ乗る。

 ミオが支援網を回収方向へ伸ばす。

『回収経路、維持します』

 カイトが最後の敵機を弾き飛ばす。

「今だ!」

 レイが敵機を押し返し、カイルが外周を塞ぐ。

 ルクス・ヴァルキュリアから回収艇と牽引用フィールドが展開される。

 アミィの中枢を含むセレスティア機体ブロックが、白金色の残光を引きながら戦場から引き離されていく。

 セレスティア支援波がそれを追うように揺れた。

 だが、命令層には戻らない。

 戻せない。

 セレスティアの白金色の光は、最後にアミィを包むように残り、そのままルクス側の支援網に取り込まれていった。

 リクトが叫んだ。

「アミィ中枢、回収圏内!」

 黒瀬が端末に入力する。

「PT-A01アミィ、命令層主拘束から分離。ルクス側回収経路へ移行」

 三島が震える声で続ける。

「救出……成功ですか」

 イリスが波形を確認する。

「本人反応、残っています。命令層ではありません。アミィです」

 ミオが疲れた声で、それでもはっきりと言った。

『アミィ本人反応、保護しています』

 ユイはノクス・レクイエムの操縦席で息を吐いた。

「アミィ……」

 レータは、通信路の向こうへ呼びかけた。

『アミィ。聞こえる?』

 少しの沈黙。

 そして、細い声が返った。

『レータ……』

 レータの顔が歪む。

『うん』

『こわい……』

『うん。怖かったね』

『いきたい……』

『うん。来ていい』

 アミィの声は、かすれていた。

 今にも消えそうだった。

 けれど、命令ではなかった。

『レータ……ユイ……』

 ユイも通信に入る。

「はい。ユイです」

『めいれい……じゃ……ない……?』

 レータは、涙をこらえきれずに答えた。

『命令じゃない。ただの返事』

 アミィの反応が、ほんの少しだけ落ち着いた。

『……へんじ……』

『うん。返事』

 レータは、通信路の向こうの小さな声を受け止めた。

 戦場では、まだ敵がいる。

 エリシオンも、グラトンも、ヘルメス隊も残っている。

 オルフェンも諦めてはいない。

 セレスティアの残留反応も完全には消えていない。

 外縁防衛線は、まだ崩れていない。

 それでも。

 命令層の奥に沈められようとしていた声は、もう一人ではなかった。

 レータは、震える声で言った。

『アミィ。迎えに来たよ』

 通信路の奥で、アミィが小さく答える。

『……うん……』

 その一言を、レータは両手で受け止めるように聞いた。

 アミィ救出作戦は、成功した。

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