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第13話 記憶

医療ブロック。白い天井。

カイトはゆっくり目を開けた。

「……あ」

頭が痛い。重い。

しかし、生きている。

その時。

「起きた?」

ミオだった。缶ジュース片手に椅子へ座っている。


「俺どれくらい寝てた」

「六時間くらい」

「そんなに!?」

ミオが少し肩を竦める。

「神経負荷かなり高かったから」

カイトはゆっくり起き上がる。

少しずつ記憶が戻ってくる。

アルタイル。ノイズ。知らない景色。

「……なあ」

「俺、何見たんだ?」

ミオの表情が少し変わる。

「覚えてるの?」

「断片だけ」

「燃えてる場所とか」

「白いGDとか」

「あと」

言葉が止まる。

黒い巨大な影。あれだけが、妙に記憶へ残っていた。

「……分からん」

ミオは少し黙る。そして。

「普通、ああいうの見えない」

静かな声だった。カイトが顔をしかめる。

「怖い事言うなよ」


その時。医療ブロックの扉が開く。ユイだった。

静かに入ってくる。しかし、今日は少しだけ疲れて見えた。

「体調は」

「頭痛い」

「当然」

即答。カイトが少し笑う。

「お前さ」

「心配して来たならもうちょい優しくできないのか」

ユイが少し止まる。そして。

「……してない」

ミオが吹き出す。

「分かりやす」

「ミオ」

少しだけ低い声。しかし、完全にいつもの空気だった。

その時。カイトが真面目な顔になる。

「ユイ」

「何」

「お前、アルタイル知ってるだろ」

沈黙が響いた。空気が変わる。ミオも黙る。

カイトは続ける。

「前から妙に詳しかった」

「Xシリーズとか」

「あと昨日」

「お前、アルタイル見た時……」

そこまで言って、カイトは止まった。

ユイの表情が、ほんの少しだけ悲しそうに見えたからだ。数秒沈黙が響いた。

そしてユイが小さく言う。

「……知ってる」

「え?」

「正確には」

「知ってた」

静かな声だった。

しかし、そこには妙な重みがあった。カイトが聞く。

「何なんだよ、あれ」

ユイは少しだけ目を伏せる。

「アルタイルは」

「元々、次世代LF開発計画の一つ」

「GD戦を前提にした高同期型」

「普通のLFより深く繋がる」

あの感覚を思い出す。“機体を動かす”じゃない。“機体になる”みたいな感覚。


「でも」

ユイが続ける。

「深すぎた」

「深すぎた?」

「機体側へ人格が引っ張られる」

医療ブロックが静まる。

「同期事故も多かった」

「だから止まった」

カイトが少し顔をしかめる。

「じゃあ何で残してるんだ」

その時、ユイがアルタイルの格納区画の方を見る。

目の前の機体ではなく、もっと遠い何かを見ているようだった。

「……捨てられなかったから」

静かな声だった。その意味は。

まだ分からない。


その時。警報が響く。

短い通知音。三人の顔が変わる。

『高高度空域にGD反応』

『UNKNOWN-D識別一致』

その時。続けて別警報が響く。

『TYPE-II反応複数』

『沿岸区域へ侵攻開始』

空気が凍る。GD。そして。大型NB。

同時侵攻。ミオが小さく呟く。

「……来る」

ユイの目が細くなる。

カイトはまだ知らなかった。

次の戦闘で、自分が再びアルタイルへ乗ることになるのを。

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