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勇者の親友は暗躍する ~クラス転移の裏側で、機甲の主は世界を統べる~  作者: Allen
教会/霊峰オルトスク

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089:霊峰内部







 霊峰オルトスクは大陸南西部に位置する山岳だ。

 高さは非常に高いがなだらかで、山脈の最も高い位置をそのように呼んでいる。

 ただし、精霊教会の総本山として扱われているのは山脈全体ではなく、霊峰オルトスクのみ。

 案の定というべきか、警護の結界が張られているのも霊峰オルトスクだけだった。



「……思っていた程、厳重な警備ってわけじゃなさそうだね」



 ゴーレムを用いて精査した、霊峰オルトスクを包む結界。

 山全体を包んでいる時点でかなり大規模なものではあるのだが、その分だけ強力な結界というわけではなさそうだ。

 元より、霊峰オルトスクには巡礼の聖職者たちが良く訪れる。

 あまり厳重にしすぎても、やりづらくなってしまうのだろう。

 一方で――



「しかし、出入りに関してだけはそれなりに細かくチェックされているようです」

「みたいだね。入山と下山、その照合のために用いられている結界か」



 山の規模から考えて、あまり厳重すぎる警備にはできなかったのだろう。

 或いは――そこまでする必要が無いのか。

 仮にも、世界的に重要な人物が存在する場所。厳重すぎるレベルだったとしてもおかしくはないと考えていたのだけど、これは拍子抜けだった。

 とはいえ、総本山の聖職者たちが住まう場所にはもっと厳重な警備が敷かれていることだろう。

 そちらについても警戒するべきだろうけど、まずは山の内部に入り込むことが重要だ。



「外縁部の結界術式については精査できた?」

『はい、基本的には通った者の魔力を識別する術式です。しかし、効果そのものは入山、下山ルートの道に限定されています』

「野生動物が引っかかって反応するのも面倒だろうし、それは当然か。この範囲での結界でそこまで複雑なものは作らないよね」



 流石に警戒しすぎだったかもしれないが、相手が相手だ。

 可能な限り、慎重に事を進めるべきだろう。

 ブライトの言葉通り、山の中に入り込むだけならそれほど苦労することは無い。

 まずは第一の結界を抜け、霊峰に足を踏み入れることとしよう。



「通って問題ないようであれば、そのまま内部へ。ただ、出入りのチェックだけで済むとは思えない。恐らく、第二第三の結界はあるだろうね」



 範囲を絞れば、それだけ強力な効果を持たせることも難しくはない。

 恐らく、警備が厳重になるのはここから先だろう。

 ともあれ、まずはゴーレムたちを霊峰のエリア内に侵入させていく。

 地上と空中――獣型と鳥型、そしてそれに取りつかせてある虫型。

 どれもこれも、最大限の偽装術式を施した、野生動物にしか見えない代物だ。



「んー……霊峰って言っても、普通の山みたいだね」

「まあ、山に入っただけだとね」



 ゴーレムが届けてくる情報は、今のところ普通の山岳だ。

 山脈に沿ってなだらかに登っていく道が整えられているため、ハイキング目的でも登りやすい環境となっているだろう。

 尤も、仮にも精霊教会の総本山。そんな目的だけで登れるような場所ではないだろうけど。

 しかし、そんな僕とエリちゃんの考えに、アイが否定の言葉を口にした。



「いえ、計測されているマナの基準値が非常に高いうえに、偏っています。ここはマナの偏重地帯のようです」

「……へぇ? わざわざそんな場所に拠点を置いているのか」



 アイの説明については、流石に驚きを隠せなかった。

 マナ密度の濃い地域についてはわかる。先日晃司たちが訪れた、霊獣の居住地もある種その類だ。

 けれど、マナ偏重地帯となるとそうもいかない。

 たとえば、大陸南部にある砂漠地帯――火属性のマナが偏重したエリアは、とてもではないが人の住めるような環境ではない。

 マナによる異常現象や精霊の発生と暴走。マナ偏重地帯は、それら発生しやすい危険地域なのだ。



「アイ、属性は?」

「……光です」



 アイの端的な回答に、思わず眉根を寄せる。

 マナの偏重地帯は、当然ながらその属性に強い関わりのあるエリアに発生しやすい。

 だからこそ、光のマナの偏重地帯などというものは発生し得ないと考えていたのだ。

 自然環境において、常に光を浴び続けているようなエリアなど存在し得ないのだから。

 ひょっとしたら白夜が永遠に続く異常地帯もあるかもしれないが、霊峰オルトスクはそのような場所ではない。



「光属性のマナの偏重地帯……マナ特性による異常は?」

『今のところ、確認されていません。しかし、頂上に近づくほどにマナ密度が高くなっていることがわかります』

「アイ、ゴーレムたちが悪影響を受けないかどうかは注意を。特に、強すぎる光のマナは闇属性の認識阻害に悪影響を与えかねない」

「承知しております」



 見た目についても実物そのものにしているけど、やはり認識阻害による偽装は常に仕掛けておきたい。

 その術式が剥がされないように注意しつつ動かす必要があるだろう。

 とりあえず、現状では注意する他に方法はない。何とか、今更呼び戻して対策を施すことも難しいし――そもそも、どんな異常が発生するかもわからないマナ偏重地帯では、対策の打ちようもない。

 何とか注意するしか方法は無いだろう。



「とりあえず、情報はクロエルたちにも伝えておくこととして……マナによる異常には注意しつつ、上部まで進んで」

「承知いたしました」



 光属性の偏重は、闇属性のクロエルにも悪影響を及ぼしかねない。

 まあ、顕霊であるクロエルにはその辺りを制御することも難しくはないだろうけど、多少は息苦しい筈だ。

 あらかじめ、情報は伝えておくべきだろう。


 そんな懸念を抱きつつも、何だかんだでゴーレムたちは何か障害に当たることもなく、山の上へと向けて進んでいく。

 進むルートも、鳥型のゴーレムが位置関係を把握しているから迷うようなこともない。

 そうして、何かに遮られるようなこともないまま、ゴーレムたちは山の上に建つ荘厳な神殿へと接近していった。



「おー……凄いね、海外にある観光地みたい」

「精霊教会の人間にとってはガチの聖地だろうし、まあわからなくはないかな。しかし、これは中々侵入が大変そうだ」



 神殿は外壁に囲われ、一部は崖状になっているため正規のルート以外でこれを乗り越えることは難しい。

 そして当然ながら、その外壁に沿って再び結界の術式が張り巡らされていた。

 今度はきちんとした守りの結界であり、これを強引に突破することは難しそうだ。



『物理、魔法防御を備えた攻性結界です。強引に突破しようとすれば、ゴーレムが破壊されるでしょう』

「かといって、解除しても相手に気付かれる。何とか、隙間を縫ってすり抜けるしかないね。とりあえず、ゴーレムたちで周囲を探索して」

「承知いたしました」



 まずは、外壁がどのような形であの神殿を覆っているのかを確認する。

 結界に隙間があるなどとは考えない方がいいだろう。

 けれど、人が通ることを前提にしている以上、一切を拒絶するような構成になっているわけではない。

 それを利用すれば、内部に入り込むことは可能だろう。



「とりあえず、鳥型は結界に触れない範囲から内部情報を確認。獣型と虫型で結界周辺の確認を」

「にひひ、ドローンの映像みたいで綺麗だね」

「鳥だからちょっと揺れるけどねぇ」



 とりあえず、内部の俯瞰映像を把握することだけはできるため、それに関しての情報は先んじて集めておこう。

 結界に触れさえしなければ発見はされないだろうけど、それでも可能な限り姿は隠して情報収集をするべきだ。

 結構高い山の上であるし、日常的に鳥が飛んでいるかどうかはわからないからね。



「それで、アイ。マナ偏重による異常現象は?」

「今のところ、確認できません。マナ偏重地帯とはいえそうそう異常など発生するものではないですが……少々、静かすぎるように思えます」



 アイの言葉に口を噤み、僕はゴーレムから届く映像に目を向ける。

 精霊教会は、『天眼の聖女』は何故、そのような場所に拠点を構えているのか。

 今見えている範囲だけでは、あまりにもわからないことが多すぎる。



(考えることが多すぎる。とにかく、一つずつ確認していくしかないか)



 何にせよ、まずは内部に侵入しないことには始まらない。

 とりあえず結界の状態について確認し、その上で侵入する方法を精査することとしよう。






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