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勇者の親友は暗躍する ~クラス転移の裏側で、機甲の主は世界を統べる~  作者: Allen
人形/ウォラーン連邦

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075:仮説検証と更なる目標






 人工顕霊生成器――顕霊人形アニマ・マタ計画の最重要ピース。

 そのプロトタイプについては、およそ一週間ほどの時間をかけて完成させることができた。

 術式自体の構造を改良すること数度、出力調整に失敗して機材が破損したのは二回――総合的に見れば、スムーズに進んだ方だと言えるだろう。

 尤も、全体の安定化を図るにはまだ追加での改造が必要になるだろうけど、とりあえずの稼働が可能な状況までは持ち込むことができた。



「素晴らしいわ……あたしだけだったら、この成果には一生辿り着けなかったでしょう」

「機甲術ありきだから、それは否定しないけど」



 実態としては、ごちゃごちゃと装置が取り付けられた、プロトタイプの人工精霊生成器。

 本当に動けばいいという状態なので、外見については全くと言っていいほど取り繕っていない状況だ。

 その辺については、生成に成功したら何とかするとして――まずは、僕たちの理論が正しいかどうかの証明が必要だろう。



「それに、成果と言っても準備が完了しただけだ。実際に、生成に成功しないと成果とは言えないよ」

「……ええ、それもそうね。ちょっと浮かれすぎたわ」

「それじゃあ、早速これを動かしてみるの?」



 エリちゃんの言葉に、僕とリシーは同時に頷く。

 装置を作ったなら、稼働実験が必要だ。

 機能ごと、そして機能接続状態での動作確認はできているものの、想定通りに顕霊が生まれるかどうかは未知数。

 それを確かめるためにも、この装置を動かしてみなければなるまい。



「じゃあユウ君、どんな子を生み出すの?」

「そうだね……」



 エリちゃんの言葉に、しばし黙考する。

 実験的に動かすと言っても、生み出されるのは意思を持った存在だ。

 それを、適当な目的意識で生成するというわけにはいかない。

 それに――僕自身、少しだけ考えていたことがあった。



「……まず今回の実験では、アイから直接情報を発して顕霊を生み出すつもりだ。僕としては、これによってアイの補佐官が生まれて欲しいと思ってる」

「つまり、クライヴ・ハルツマンや貴方の活動情報を元に、顕霊を生み出すということね?」

「そう。機甲術による魔道具生成に興味を持ち、アイや僕たちの補佐を行ってくれる顕霊――最初に生み出すのは、そういう存在にしたいんだ」



 これなら情報の選別もしやすいし、外部に興味を持つことも少ない。

 想定通りの顕霊を生み出すことができるかどうか――その検証としては、悪くない目標だろう。



「そうね、その方がやり易いでしょうし……アイの負担軽減にもなるでしょう」



 案の定、リシーも僕の意見に賛同してくれた。

 人工精霊を用いてアイの負担を軽減したとはいえ、情報量は増えていく一方だ。

 ここいらで、アイと作業を分担できるような存在を増やしておきたいのである。

 そんな僕たちの意見に、エリちゃんも納得した様子で頷いた。



「成程ね、いいんじゃないかな? それに、アイちゃんが持ってる情報ですぐに実験できるもんね」

「そうだね。それ以外を目標にしようとするともっと情報を集めないといけないだろうし」



 今後はそういった顕霊を生み出していきたいけれども、まず実験として行う場合には手間が多すぎる。

 最初の実験としては、これが最も適切だろう。



「それじゃあ、アイ。情報の接続をお願いできるかい? 入力する情報はさっきの内容で」

『承知いたしました。情報量はどのようにいたしますか?』

「この装置が一度に処理できる情報量には限りがある。飽和しない程度の量に絞って入力して」

『承知いたしました』



 さて、これで人工精霊に対する情報入力は可能だろう。

 後は、それによって想定通り、顕霊を生み出すことができるかどうか――その検証のためにも、実験を開始することとしよう。



「準備はいいね? 装置を起動するけど――リシー、観察と記録はお願いするよ?」

「ええ、勿論。というか、他の誰にもやらせるつもりは無いわ」



 リシーにとっては、生涯を懸ける覚悟をしていた実験だ。

 一瞬たりとも見逃さない、その覚悟で臨んでいるのだろう。

 その様子に笑みを浮かべつつ、僕はこの実験機を起動した。



「稼働開始――アイ、情報入力を」

『承知いたしました。入力、開始します』



 人工精霊生成器の起動と共に、アイが起動した情報変換機へとストレージ情報の入力を開始する。

 とりあえず、突然不具合で落ちるようなことは無くて何よりだ。



「リシー、出力部はちゃんと動いてる?」

「ええ、問題ないわ。あたしの固有魔法オリジナルが発動しているところをこんな風に見るのは初めてだし、ちょっと新鮮ね」



 どうやら、動きそのものに問題はないようだ。

 第一段階はクリアできたことを確認して、僕は改めて装置全体を眺める。

 今後、この世界で活動する上で必要となる手札の数々。

 それを揃えるための第一歩を、ようやく踏み出すことができたのだ。



「さて、しばらくは様子見として……落ち着いたら、次の仕事に取り掛からないとね」

顕霊人形アニマ・マタって言ってたから、今度は人形ちゃんを作るんだよね?」

「そう、生み出す顕霊の肉体となる自動人形オートマタだね。とはいえ、最初に作るのはアイの体のつもりだけど」

『お待ちください、マスター』



 エリちゃんと話をしていた、次なる作業目標。

 しかし、それに対して待ったをかけたのは、他でもないアイ自身であった。



『私はラボの外部で活動する想定はありません。そのため、自動人形オートマタの体は不要です』

「いや、僕は顕霊にはすべて体を与えるつもりなんだけどね。そもそも、君の体を作るのはまた別の目的があるからだよ」

『質問します。それはいかなる目的でしょうか?』

「今後製造する、顕霊人形アニマ・マタたちの筐体を作るためのテストベッド。ハイエンドカスタマイズを検証し、そこから廉価版を製造していくのさ」



 アイの体を作る際には、僕は持ちうる最高峰の技術、素材を導入するつもりだ。

 勿論、今後生み出していく顕霊人形アニマ・マタたちに同じ素材を使っていたら、あっという間に枯渇してしまうものもある。

 だが、それは間違いなく、僕にとっての最終目標に近しいものとなるだろう。



『推奨できません、マスター。疑似竜心炉まで使うつもりであれば、それ以外の利用用途に用いるべきです』

「もう設計図まで読んでたのか……確かに在庫は限られてるけど、一つ二つ使ったって問題は無いよ」



 アイの言う通り、貴重な素材であることは間違いない。

 けれど、顕霊人形アニマ・マタに使うとしても一つだけだから、いきなり枯渇するようなことは無いのだ。

 そんな僕とアイのやり取りに、首を傾げたエリちゃんが声をかけてくる。



「それって、そんなに貴重な素材なの? エリでも取ってこれない?」

「ああ……疑似竜心炉は、第五のラボでしか作れないものでね。補充するにはしばらくかかるかな」

「竜心炉って……竜心石ドラゴンハートのこと? ドラゴンでも狩ってくるつもり?」

「いやいや、あれは大きすぎて人形には使えないし、疑似的にそれを再現した魔道具っていうだけだよ」



 二人の質問に、僕は苦笑を交えながら首を横に振る。

 竜心石ドラゴンハートとは、ドラゴンの心臓に存在する宝玉のことだ。

 これはマナを吸収して魔力を生み出すという性質を持っており、人間が呼吸によって生み出す魔力よりも遥かに効率的な魔力回収を可能にしている。

 疑似竜心炉はこの仕組みを疑似的に再現したもので、出力は大幅に落ちるものの、人間を必要とせず魔道具単体で魔力を供給することが可能だ。

 ちなみにだけど、晃司が持ち帰った自動人形オートマタにもこれが組み込まれているため、あの人形は魔力供給を必要とせずに稼働できる筈だ。



「最終的に、疑似竜心炉は全ての顕霊人形アニマ・マタに搭載させたい。ハイエンドのテストベッドを行う以上、それを搭載するのは当然のことだよ」

『……承知しました。ですが、在庫には限りがあることにご留意を』

「勿論、わかってるよ。いずれ、第五のラボも解放しないとだね」

「それじゃあ、次は四つ目を飛ばして五つ目に行くの?」



 エリちゃんの素朴な疑問に、僕は首を横に振る。

 生憎だけど、今の状況だと第五のラボに向かうことはできないのだ。



「第五のラボに行くには、第四のラボの機能を使わないといけないから、結局順番通りに行くことになるだろうね」

「そうなんだ……ちなみに、第四ってどんなところ?」

「大型の兵器工廠。大きい船とかを製造できるラボだね」



 第五のラボに向かうためには、そこで乗り物を作ってからでないと難しい。

 先はまだまだ長いということだ。



「とにかく、疑似竜心炉の供給にしばらくかかることは事実だ。在庫については、慎重に使うことにするよ」



 未だ不満げな様子のアイであるが、それを黙殺して決定する。

 短期目標の達成までは、あと少し。それを乗り越えて、活動の拡大へと向けて動き出すとしよう。






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