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勇者の親友は暗躍する ~クラス転移の裏側で、機甲の主は世界を統べる~  作者: Allen
人形/ウォラーン連邦

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063:小さな異変






 あれから数日、俺たちはラヴィニアさんたちと行動を共にすることとなった。

 旅慣れている彼女たちの助言は的確で、予習はしてきたけど慣れていない俺たちにとっては価値ある知識ばかりだ。

 ちなみに、カイトさんは立場的に本来旅慣れてなどいない筈なのだが、何故だかサバイバル知識は豊富だった。

 一体どれだけ連れ去られてきたのだろうか、この人は。



「さて……ちょっと握ってみてくれるかな?」

「はい、ありがとうございます!」



 そんなカイトさんの手によって調整が施された精霊剣を握り、俺は思わず目を見開いた。

 まるで、手に吸い付くような感覚。軽くなったというわけではなく、手にかかるずっしりとした重みは以前と変わりはない。

 けれど、切っ先にまで神経が通ったかと錯覚するほど、この剣の存在を体の一部の如く感じることができたのだ。

 カイトさんは、それほど大きな作業をしていたわけではない。固有魔法オリジナルを使いながらやすりや小さいハンマーで調整を行っていただけだ。

 だというのに、その感覚は数時間前とは明確に違っていた。



「凄いですね、こんなに変わるなんて……」

「ははは、その剣は元がいいからね。それを君の体に合うように調整してあげれば、この通りというわけさ」



 神の腕を持つという称号については、何となく凄いな、という程度のイメージではあったのだけど――こうして実際に体感してみると、その驚異的な技量には舌を巻かざるを得ない。

 少し調整しただけでこれなのだ。彼が全力で、誰かのためだけに武器を作ったらどうなるのか。

 それを考えれば、彼が各方面から狙われてしまうのも納得できる思いだった。



「せっかくの縁だ、他の皆の武器も見てあげよう」

「お、マジっすか!?」

「……僕は、ちょっと固有魔法オリジナルの方で相談に乗っていただきたく」



 カイトさんの発言に、剛志が喜色満面で声を上げる。

 また、斎藤も珍しく積極的に、カイトさんへと声をかけに行っていた。

 斎藤の固有魔法オリジナルは千刃術――剣を作り出す魔法だ。

 それをカイトさんの手で調整するということはできないが、武器を作り出す上でのアドバイスということであれば、これほど適任の人物も存在しないだろう。

 そんな様子に、ラヴィニアさんは呆れを交えた表情で声を上げた。



「ちょっとカイト……今更だけど、女王陛下から怒られない程度にしてね?」

「あはは、あの方も今更そこまで怒らないよ。あちこち連れ去られる度に似たようなことはやってるんだし」

「その結果、各地で現地妻を作ってくる人はどこの誰ですかねぇ……?」

「あ、あはは……いや、あれは僕から誘ってるわけじゃ、むしろ襲われてるというか……」



 唐突に始まった夫婦喧嘩に、西村さんは目を輝かせて鏡花ちゃんは溜息を吐いている。

 本当にこの人、変な生態と言っては失礼なのだけど……俺以上に奇妙な生き方をしている人だった。



「本郷、江崎、そっちは大丈夫かい?」

「ああ、問題ないぜー。天気もいいし、分かれ道もない。のんびりとしたもんだよ」

「こっちも、今のところは特に異常はないかな……」



 御者台にいる二人からも、特に異常の報告はない。

 国と国を結ぶ街道であるため、時折他の旅人とすれ違うこともあるのだけど、特にトラブルが発生することもなかった。

 まあ、本郷の操る馬車のスピードに驚いた様子を見せることもあったけど、立ち止まらなければ何か問われるようなこともない。

 総じて、平和な旅路であると言えた。



(ただ、このまま行動を共にし続けると困ることになるんだけど……どうしようかな)



 不寝番の時に聞いた話から、ラヴィニアさんも俺たちが魔族ルインズに遭遇することに対して肯定的だった。

 その理由までは結局定かではなかったけれど、とりあえず魔族ルインズの件に関わるのはほぼ確定事項のようになってしまっている。

 せめて、目的地周辺に辿り着く前までには何とかしておきたいところではあるのだけど――そんなことを考えていた、ちょうどその時。俺は、栗原先生が馬車の外をじっと見つめていることに気が付いた。



「栗原先生、どうかしたんですか?」

「天堂君? いえ、別に大したことではないのだけど……ミカが、気になることを言っていて」

「ミカが?」



 どうやら、栗原先生は自らの内にいる顕霊と話をしていたようだ。

 見たところ、周囲に異常はない気がするのだけど、顕霊の感覚では何かを掴んでいるのだろうか。

 疑問符と共に問い返すと、栗原先生は釈然としない表情のまま続けた。



「マナの密度が、今までよりも少し高くなってきているらしくて。精霊……顕霊にとっては、過ごしやすい環境になってきてるみたいですね」

「へぇ、マナの密度……この辺りは、そういう土地なんですかね?」

「そうなのかもしれないですね。特に、悪いことではないと思いますけど」



 マナの属性は、その土地によって異なってくるらしい。

 その密度や量についても同様で、場所によってその偏り、性質は千差万別だ。

 正直、現状では体感でわかるほどの変化はないのだが――



「……そうだ。江崎、君ならマナの状況はわかるかい?」

「え、マナの状況? ……ああ、確かに増えて来てるみたいだね。どっちかというと、地属性の偏りが強いみたいだけど……偏り過ぎってほどでもないかな」



 やはり、江崎の解析術ならその辺りのことも確認可能であるらしい。

 まあ、解析の水晶板で人のマナ特性の偏りを見られるんだから、土地のマナだって調べられてもおかしくはないか。

 ともあれ、この辺りはそういった土地ということなのだろう。

 だが、固有魔法オリジナルを発動しながら周囲を見渡していた江崎は、ふとその視線を一点で止めた。



「……あれ? ちょっと待って」

「江崎? どうかしたのか?」



 江崎はじっと遠方を、山の方を見つめて目を凝らしている。

 しばし、その状態で山を眺めていた江崎は、山の一点を示して声を上げた。



「あの辺り……あそこだけ、何故か妙な状態になってる。極端にマナが濃かったり、逆に全然無かったり、明らかに自然じゃない状態だよ」

「――それ、ちょっと詳しく聞かせて貰っていい?」



 山の一点を指し示しながらの、江崎の言葉。

 それに反応したのは、他でもないラヴィニアさんだった。

 いつの間にか御者台の方へと身を乗り出していた彼女は、江崎が指さしている方向を見つめながら声を上げる。



「教えて、具体的にどんな状況?」

「わっ!? そ、その……あの辺りなんですけど、マナの濃度がマーブル模様みたいになってて」

「あそこは……」

「霊獣の生息地だね。それなのに、マナの薄い領域があるっていうのは変な話だ」



 後ろから覗き込むようにして江崎の指差す方向を確認したカイトさんが、そう口にする。

 とりあえず、マナが薄い部分があるという点が不自然だという話だけど――



「すみません、霊獣っていうのは?」

「具体的にはあまりわかってないのだけど、精霊と魔物の中間みたいな存在。マナで生きているから、魔物と違って獰猛じゃないのだけどね。マナが濃い地域で生まれやすい生き物だよ」

「保護されてるって程でもないけど、人間の敵対的な生き物ではないから、討伐対象にはなっていないの。だからあまり知られてはいないけど……とにかく、あのエリアにマナが薄い領域があるっていうのは変な話なの」



 初めて聞く知識ではあるけれど、とにかく不自然な状況であることは間違いないようだ。

 現在の目的とは関係ないし、普段であれば放置するところだけど――



「この異常が魔族ルインズ絡みである可能性もあるからね。ちょっと、確認に行ってくるわ」

「あの、ラヴィニアさん。俺たちは――」

「あっちの方へと向けて馬車を寄せておいて。私は、まず偵察だけ行ってくるから」



 そう告げて馬車から飛び降りたラヴィニアさんは、着地するや否や一瞬で姿を消してしまう。

 果たして、何が起こっているのか――彼女の確認待ちとなることだろう。






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― 新着の感想 ―
高性能レーダーといったところかな? まぁフラグから考えると魔族の可能性が高いけど、 ラヴィニアさんもフットワークが軽いですなぁ
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