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勇者の親友は暗躍する ~クラス転移の裏側で、機甲の主は世界を統べる~  作者: Allen
人形/ウォラーン連邦

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054:TIPS_クライヴの手記『術式剥離』『未完の剣聖』






『術式剥離』



 ある日、自動人形オートマタの製作所に二人組が訪ねてきた。

 エルフとドワーフという、少々奇妙な組み合わせ。

 だが、そのエルフの素性については、私も耳にしたことのある存在だった。


 剣聖エスメラルダ――エルフでありながら、長きにわたり剣を握り続け、最強の剣士として名を馳せている人物。

 エルフとしても老齢でありながら、その動きには未だ陰りが見えない。

 伝え聞いていたのは、そんな評価であった。


 また、同道していたドワーフの名はウルといい、彼は鍛火術という固有魔法オリジナルの使い手であるという。

 彼の名前には聞き覚えは無かったが、その固有魔法オリジナルに関しては知識があった。

 曰く、あらゆる武器を作り上げる術式であるという。

 三百年前、『灼血の悪魔』を討った武器を作ったのも、この固有魔法オリジナルの使い手であったと記録には残されていた。

 その使い手が現代にも存在したことは知らなかったが――ともあれ、彼が名工であることは間違いないだろう。



 そんな二人組が、何故私の元へと尋ねてきたのか。

 世話役の自動人形オートマタ制作でも依頼するつもりなのか。

 彼らの依頼は、そんなことを考えていた私が耳を疑う程の内容であった。



 ――二人の固有魔法オリジナルを術式剥離させ、一つの魔道具を作り上げたいというのだ。



 固有魔法オリジナルとは、魂に紐づいた魔法である。

 その魂の持つ■■が術式に反映され、汎魔法コモンには存在しない効果を発揮させるのだ。

 それを剥離させるということは、固有魔法オリジナルを使えなくなるどころの話ではない。

 魂を崩壊させ、死に至ることはまず間違いないだろう。


 無論のこと、エスメラルダとウルも、そのことについては百も承知だった。

 それを承知のうえで、私に依頼を持ってきたというのだ。



 本来であれば、そのような依頼は即座に断っていただろう。

 だが私は今、剥離させた固有魔法オリジナルの性質について調査を続けている最中だった。

 その実験的な知識を得る機会は、何にも代えがたい貴重なものであったのだ。

 故に、それが外法であると知りながら、私はその依頼を請けることにした。



 話を聞けば、エスメラルダはかつて偉大な剣士に育てられたという。

 その剣に憧れ、剣の道を志し、エルフの長い生を研鑽に費やしてきた。

 しかし、彼女は未だ、師の剣に追いつくことができていないという。


 私からすれば、過去の記憶が美化されすぎているだけではないかと思うのだが――ともあれ、彼女はエルフの人生全てを費やしても、そこに辿り着けなかったことを悔いているらしい。

 故にこそ、彼女はその全てを継承させたいというのだ。

 自分は未完成だった。だが、力を継承した何者かが、そこに至れるようにと。

 ウルはそれに付き合う形だが、人生の最期に、最高の作品を仕上げたいという。



 妄執にも近い、終焉が見えたが故の老人たちの願い。

 それを糧とするならばせめて、最高の形で実現するとしよう。






未完の剣聖(レーヴ・エスメラルダ)



 魔道具は完成した。

 その名を、『未完の剣聖(レーヴ・エスメラルダ)』。剣聖を志し、道半ばにしながらも最期まで夢を諦めなかったエスメラルダの人生そのもの。

 私が制作した魔道具の中でも、間違いなく最上級の傑作の一つだろう。


 基本となる魔道具の性質を私が作り上げ、そして二人が剥離させた術式を私が直接魔道具へと刻み込んだ。

 その過程に直接触れることで、術式剥離という行動の性質をある程度理解することもできた。

 この知識は、■■■■の遺した術式を調べる際にも間違いなく活用することができるだろう。


 当然ながら、二人は程なくして息絶えることとなった。

 丁重に葬りはしたが――何とも、妙な役回りを負わされてしまったものだ。



 『未完の剣聖(レーヴ・エスメラルダ)』の基本機能は、自由に形を変える腕輪である。

 ウルの鍛火術の効果により、その腕輪は使い手にとって最も適した形状の武器を作り上げることができるのだ。

 使い手が成長するごとに、その武器は最適な姿に形を変えてゆく。

 しかも、武器の形状だけではなく、それが持つ能力までも形作る――機甲術だけでは、絶対に再現できなかった機能だろう。


 そして、エスメラルダの持っていた固有魔法オリジナル、再臨術。

 それは、使い手が持っている技術・知識を瞬時に導き出し、再現するという術式だ。

 学び、習得し続けなければ大して意味のない固有魔法オリジナルだが、彼女はそれを刻む際、己の持つ技術の全てを注ぎ込んだ。

 それは即ち、『未完の剣聖(レーヴ・エスメラルダ)』を握るものは、彼女の技術を再現できるということでもある。


 エスメラルダは、完成させることができなかった。

 故に、それを受け継ぐ何者かが、その先へと進むことを願う。

 彼女はただそれだけを願い、魂を懸けてこの魔道具を作り上げたのだ。


 彼女は、できる限りのことをした。

 後は、これを受け継いだ者たちの選択だろう。



 剥離した術式に関する知識も、十分に得ることができた。

 これならば、あの転移術式の調査も、大きく進むこととなるだろう。



 私自身、先のことを考えなければなるまい。






TIPS回のため、12時頃にもう一話投稿します。

GW期間中の連続更新は5/10までとなりますので、ご承知おきください。

引き続き★評価、応援、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
あ、魔法少女ユースティアこと和久井正義くんの腕輪の情報だ! って、思ったよりも重い内容のブツだった…… 腕輪が意思を持って和久井君に憑依したっぽいけど、 なんだって彼を選んだんだろうか? しかも、この…
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