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勇者の親友は暗躍する ~クラス転移の裏側で、機甲の主は世界を統べる~  作者: Allen
転移/ファレンジア王国

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14/47

014:行動開始






「それじゃあ……行くぞ、剛志!」

「ああ! 来な、晃司!」



 裕也からの連絡があった、その翌日。

 俺は、すっかり恒例となった兵士たちの訓練に参加していた。

 これに参加しているクラスメートは、正直なところそこまで多くはない。

 大半は魔法の授業と演習だけに参加していて、その後の戦闘訓練まで積極的なメンバーは少ないと言える。

 まあ、魔法の授業だけで魔力を使い切って、その後の活動があまりできないメンバーが多いことも原因なのだけど――やはり、戦うことを恐れているメンバーは多かった。

 そんな、戦闘訓練に参加している珍しいメンバーの一人が、目の前にいる大倉おおくら剛志つよしだった。



「ふッ!」



 互いに、魔法の授業で魔力をかなり消費している。

 回復に努めてはいるものの、やはり万全な状態とはいかない。だからこそ、訓練として成り立つのだろう。

 深く呼吸するよう意識しながら、俺は剛志へと向けて駆ける。

 それとほぼ同時に、剛志の体が魔力を帯びたのを察知した。



「いきなりか……!」



 剛志の固有魔法オリジナルは、金剛術と呼ばれるものだ。

 身体強化、および強度の上昇が主な効果。

 並の攻撃では剛志にダメージを与えることはできないし、何なら武器で殴っても傷一つ付かない。

 だからこそ、剛志は恐れることなく前へと進み出てくるのだ。



「うおおおッ!」

「くっ」



 大きな身長から振り下ろされてくる拳は、まるでハンマーのよう。

 その攻撃を横に回避しながら脇腹へと掌底を叩き込むが、返ってくるのは石の塊でも殴ったような感触だった。

 相変わらず、固有魔法オリジナルを発動している剛志相手には、まともな攻撃は通用しないようだ。

 そんな彼の弱点は魔力の消費量と、遠距離攻撃が存在しないこと。

 距離を離して魔法で攻めれば容易に勝てるだろうけれど――



(――それじゃあ、互いに訓練にならないからね!)



 横から襲い掛かってくる、コンパクトなフック。

 通常ならば普通に防げるけど、魔法を使っている晃司の打撃をそのまま防ぐことはできない。

 だからこそ、俺は即座に準備していた魔法を発動した。



「〈フォトンシールド〉!」



 肩の辺りに発生させたのは、円形の光の盾。

 伝承に伝わっていた、聖騎士の使っていた魔法。

 それの再現を目指した魔法は、剛志の放った拳を見事に受け止めて見せた。



(サイズ、消費は最低限――)



 拳を中途半端な位置で止められ、剛志の体勢は少し崩れている。

 そんな剛志の足へ、俺は己の足をかけるようにして払った。

 強化していても、体重そのものが変わるわけじゃない。元々剛志の体重は重いが、それでも体勢が泳いでいる状態なら十分だ。



「うおッ!?」

「〈フラッシュ〉」



 体勢が崩れた剛志へ、閃光を浴びせかける。

 攻撃性はない、ただ光を放つだけの魔法。けど、剛志の視界を塞ぐには十分すぎる光量だ。

 俺はその瞬間に、剛志の腹部へと向けて再び掌底を突き出した。



「――〈フォトンスマイト〉!」



 打撃の直撃と共に解放される、光の衝撃波。

 それによって数メートル吹き飛んだ剛志は、そのままゴロゴロと地面を転がることとなった。

 当たった感触は明らかに金剛術を維持した状態だったし、大したダメージにはなっていないだろうけれども。

 案の定、剛志は何事も無かったかのように体を起こし、体に付いた土と草を払い落とした。



「いってて……ああクソ、負けた負けた! また強くなってるじゃねぇか!」

「そういう剛志こそ、魔法の維持が上手くなってるじゃないか。魔力は大丈夫?」

「問題ねぇ……と言いたいところだが、結構使っちまったな。クソ、維持できるうちに勝ちたかったんだが……調子いいじゃねえかよ」



 剛志の言葉に、笑みを浮かべて返す。

 確かに、調子がいいことは否定できない。裕也の無事が知れたことで、メンタル的にも安定したからだ。

 とはいえ、そのことは他の皆には伝えていない――鏡花ちゃんを除いて。



(流石に、朝一の挨拶で気付かれるとは思わなかったな)



 俺としては、普通に朝の挨拶をしたつもりだったのだけど、それだけで何かあったのだと気づかれてしまった。

 とりあえず、裕也と武村さんの無事だけは伝えておいたけど、あれはいつか合流した時に怖そうだ。

 自分たちだけで行動していることを、大層ご立腹だったから。



「ここのところ調子悪そうだったけど、復活って感じか?」

「そうだな。ゴメン、心配をかけた」

「はっ、心配なんかしてねぇよ」



 憎まれ口を叩くが、厳つい見た目に反して剛志はかなり仲間思いな人物だ。

 まあ、それを指摘するとへそを曲げるから口にはしないけれども。

 剛志も裕也の本性を知っている側であるため、できれば説明をしておきたいけれど――知っているメンバーは可能な限り減らさないといけないのが今回の作戦だ。

 申し訳ないけれど、今しばらくは黙っておくこととしよう。

 そんなことを考えていたちょうどその時、離れた場所に控えていた鏡花ちゃんがこっちへと声をかけてきた。



「ほら二人とも! 終わったんなら、傷の手当てをするからこっちに来て!」

「大丈夫だって、今のはどっちも怪我してねぇよ!」

「試合が終わったらチェックの約束でしょ! 早く来る!」



 そんな鏡花ちゃんの声に対し、剛志は大仰に肩を竦める。

 そんな様子に苦笑しながら、俺は彼を伴って鏡花ちゃんの方へと戻った。

 彼女の有する固有魔法オリジナルは天治術という名前だ。

 強力な回復術をメインとする魔法で、貴重なヒーラーとして一目置かれていた。

 まあ、戦闘自体にはあまり参加できないので、体力づくりの訓練だけ参加するようにしていたけれども。



「調子良さそうだね、晃司君」

「うん、何とかね。そこそこ、慣れてきたみたいだ」



 固有魔法オリジナルを使うというのは、奇妙な感覚だった。

 使えば使うほど馴染んでいくというか、地に足がついていくと言うべきか。

 日々、どんどんと力を増していっているようにも感じられる。

 この世界の人たちからすれば、それは驚くべきことなんだろうけれども。



(だからこそ……)



 第二王子派のことについては、常に注意を払わなくてはならない。

 俺たちもそうだが、彼らからすれば鏡花ちゃんも貴重すぎる人材だろう。

 そんなことを、認めるわけにはいかない。そのためにも、もっと俺が目立って彼らの注目を集めなければ。

 そうすればするほど、裕也や先生も動きやすくなることだろう。



「……無理もないけど、無茶は禁物だからね」

「勿論、わかってるよ、鏡花ちゃん」

「全く、返事だけはいつもいいんだから」



 呆れた表情で、けれど口元には笑みを浮かべながら、鏡花ちゃんはそう口にする。

 裕也が無事だったこと、公言はしないものの、本当に喜んでくれていたのだ。

 勿論、武村さんのことも――まあ、彼女はあまり他のクラスメートと関わってこなかったから、武村さんに対してどうこうコメントすることは無かったけれども。

 と――そんなとき、ふと視界の端に映った姿に、俺は小さく息を飲んだ。



「っ……!」

「晃司君? どうしたの?」

「ああ……いや、何でもないよ」



 訓練場の端、目立たない場所。

 そこで、箱崎先生が一人の騎士と話をしている姿が目に入った。

 あれこそが、裕也が見つけ出した、第一王子派の人間ということなのだろう。



(ここからどうなるかは……相手の出方次第、だったか)



 疑り深い鏡花ちゃんの視線を躱しながら、考察を続ける。

 俺たちがこの先、この世界でどう生きていくのか――そのための戦いを、始めるとしよう。






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― 新着の感想 ―
勇者だけで無くタンクにヒーラーも居るとなると、第二王子派にとっては 喉から手が出るほどほしがる逸材ですねぇ ……機甲術以外に生産系の固有魔法ってないのかしら? 居たらそっちも注目を浴びそうだけど。 …
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