ヴェルナとリーネの旅の目的
ヴェルナとリーネが泊めてもらったお礼に洗濯を手伝うとヨネさんに申し出ると、
「そんな気ぃ使わなくても良いのよ!」
と言いながらもシーツや毛布を出してきた。
もちろん俺が持ちましたとも。
洗濯場の場所を聞いて3人で向かう。
基本は川に向かって行くのだが、昨日歩いて来た道よりは少し上流らしい。
「自然の洗濯機ってどんな物なんだ?」
「洗濯の基本は水が重要だという事は知ってるわよね?」
「そうなのか?」
「えっ…そこからなの…?」
俺の返事にヴェルナが呆れる。
「優耶の世界でだって洗濯の基本は水量だってデータが有るわよ?」
シエルが向こうの常識と照らし合わせて教えてくれる…が、そんなこと初耳だ!
「俺の実家は節水型洗濯機だったぞ!?」
「それは洗剤が優れていたからよ。本当に綺麗にしたかったら、たっぷりの水で洗うって洗濯ソムリエも言ってるわよ?」
「……洗濯ソムリエ……」
そんな職業あったんだ……
っていうか異世界の人間の方が詳しいって…俺、ダメ過ぎるだろ?
ああ、いや。そもそも洗濯なんてスイッチ押すだけだったんだから俺が知らなくてもしょうがないよな。
落ち込みそうになる自分に言い訳して開き直る。
「ところでさ、何で昨日あの家に泊めてもらいに行ったんだ?俺の結界が有れば別に野宿でも割と快適だと思うんだけど…?」
歩きながら昨日から頭の片隅に残っている疑問をぶつける。
「そうね。たしかにものすごく快適よ。だけど私達の旅の目的には合わないのよ。」
「旅の目的?」
「言ってなかったかしら?私達の旅の目的はあの精霊喰いを調べて、駆除する事なのよ。その為には泊めてもらって情報収集をするのが一番手っ取り早いのよ。」
「なるほど。」
「この村みたいに小規模な集落だと商店や食事処、ましてや飲み屋なんて無いから比較的大きな家に行くのよ。…あとは今から行くような人が集まりそうな場所ね。」
洗濯場にはおばちゃんがいっぱい居そうだもんな。噂も聞けるけどネタも提供しちゃいそうだよね。
「…あっ!!」
俺はある事に気付いてしまった。
「な、何!?」
「あのさ…俺達兄妹って事にしない?」
昨日も思ったんだけど、美少女と獣人美女と俺が赤の他人同士だと不信感がハンパない。せめて兄妹と護衛美女獣人ならまだマシな気がするんだよな。
「あぁ…そうね。それでいきましょ!じゃあ…お兄ちゃん。」
オニイチャン…いい響きだ。
俺には兄姉も居なければ弟妹も居ない。
オニイチャン…新鮮な響だ…!
「うんうん。」
にへらっと笑ってうなづいていると、横を歩いていたリーネには冷たい視線を投げられ後ろにいるネフにはギュッと締め付けられ、肩に乗ってるシエルには頬をグイッとつねられた。
……解せぬ。
「だけどさ、旅の目的が精霊喰いを調べて駆除する事なら、なんで俺を誘ったんだ?」
言っちゃなんだが女性二人の旅に男の俺が加わるのは普通に考えて嫌だろ?しかも俺は戦えないし…。
足手まとい感ハンパないよな…。
実際は、まぁ…俺の結界魔法ちょ〜便利だろ?って感じだけど。
「「ッ!?」」
一瞬、ビクッとなる二人に聞いちゃマズかったかな?…と思う。
「……あ…あんな場所に、貴方だけ置き去りにしたらどうなるか心配じゃない!?…攻撃も出来ないのに、次狙われたら命の保証もないのよ?一緒に連れて行く以外の選択肢なんて無いわよ。」
「お、おう…ソウデスネ…。」
ヴェルナの強めな語調に気圧されながらうなづく。
確かに攻撃出来なきゃ次襲われたら無事な保証は無いもんな。
「ユウヤの結界を知ったから、もう手放せない。」
リーネがとても必死な表情で重々しく告げる。
…………結界魔法、快適で優秀だもんな。
「ほらっ、もうすぐ洗濯場よっ!急ぎましょ、お兄ちゃん!」
「そ、そうだな…。」
ヴェルナの言葉にドキッとしながら返事を返した。




