鑑定しますッ
「えっ…と、どちら…様?」
シエルの声がして後ろを振り返ると、そこには見た事ないほどの絶世の美女が居た。
しかも何か焦っているような真剣な顔でだ。
それはまるで外国の絵画から出てきたような、ヒラヒラのファンタジックな衣装を纏い整った顔立ちとも相まって、人間では無いと思える美女だった。そんな現実離れした美女に見覚えなど無いはずなのに、何故か懐かしさを感じる。
え、どういうことだ?
自分の瞬間的に感じた思いに疑問を感じた瞬間的、目の前が青一色になり顔面に衝撃が走った。
「イッ……てぇ」
ビッターンと、ネフが勢いよく顔面に張り付いてきた。
痛みを堪えながら慌てて顔面に張り付いてきたネフを引き剥がし、もう一度美女を見ようと顔を向けると、そこにはいつものシエルが居た。
「えっ!?…アレ?」
「優耶ッどうしたの?」
目を擦ってみる。ーーいつものシエルだ。
周りを見回す。ーー美女は居ない。
「……アレぇ?」
首を傾げているとシエルの後ろからさっきの美少女と鳥獣人の女性も出てきた。
「どうしたのッ?」
少女が僕を見て安否を気遣ってくれる。そんな少女に鳥獣人の女性が鋭く警告を発した。
「ッ!!…ヴェルナッ、ヤツだ!」
彼女の視線の先に俺が閉じ込めたイノシシ(ガラスケース入り)が居る。
そして次の瞬間にはイノシシ(ガラスケース入り)目掛けて走り出した。その手にはいつの間にか剣が握られている。
近付いてくる凶器にイノシシも反応して触手を伸ばそうとするが俺の結界箱に阻まれて全てその内側を叩くだけになった。
「あっ!!…」
その間にイノシシとの間合いを詰めた彼女が剣を振り下ろした。
……が、俺の結界箱に跳ね返された。
「…ッッッ!」
彼女が数歩下がり今起きたことを確認しようと持っている剣を見る。
「あ〜…すまんっ!そいつ今閉じ込めてある!」
後ろから俺が端的に説明する。
「「「えっ!!」」」
シエルと少女と女性の驚きの声が重なる。
「いや、なんか普通のイノシシじゃないっぽいし、俺もさっき攻撃されたし…」
「えっ!?」
俺の言葉にシエルが瞬間移動かって勢いで正面に移動してくる。
顔面に張り付いたネフがいつの間にかさっき怪我した場所に張り付いていたから、シエルからは分からなかったのだろう。
「すぐに治したけど、あの触手がムチみたいに当たってさ、めっちゃビビったぜ。速攻ヒールかけたからどんな状態か分からなかったけどな。」
「優耶が無事なら…良かった。」
俺の言葉を聞きながら他に怪我が無いか確認し、安堵の息と共にシエルが言った。
「おいっ!この透明な箱?どれくらい保つんだ?」
イノシシ(ガラスケース入り)の側で警戒中の女性が聞いてきた。
「あ〜…なんか全然落ち着いてくれないんだよな…異世界のイノシシにもあんなやばい種類が居るんだな。」
俺がそうぼやくと、
「はぁっ?」
と、凄い形相で美少女に見られる。
「あんなの居るわけ無いじゃない!」
「…えっ?」
「優耶、鑑定してみた?」
驚く俺にシエルが言った。
「あッ…忘れてた…」
俺は急いでイノシシ(ガラスケース入り)を鑑定した。
『イノシシ 変異体
精霊喰が憑依している。』
「精霊…ぐ…い?」
俺の疑問に応えるように詳しい説明が追加で浮かぶ。
『精霊喰とは、生物に憑依し宿主を乗っ取り、宿主を完全に変異させるモノ。乗っ取った宿主を使い移動し精霊を食べる。より高位の精霊を好む。』
「精霊を……喰う?」
……生物に憑依?……宿主を…乗っ取る!?
「寄生虫…?」
「…似てるけど虫ではないわね。」
混乱しながら鑑定結果を呟く俺に、いつの間にか横に立っていた少女が訂正を入れる。
「…それで。貴方はアレをどうするつもり?」




