第11話 バッティングセンター
コージは、夜の素振りに加えてバッティングセンターにも通っていた。毎週のように通うほど熱心だった。師匠であるテツヤと一緒に行きたいと思っていた。
コージは師匠にお願いしてみた。
「テツヤさん、バッティングセンターで僕の打撃を見て下さい」
「いいよ。しっかりチェックするぞ」
コージがやる気充分なのでテツヤも嬉しそうだ。
二人で自転車に乗って向かって行く。なんとも、微笑ましい光景だった。
到着すると、まずテツヤから打席ゲージに入る。
「オレの打撃をしっかり見てくれよ。参考になる部分を自分に取り入れるんだぞ」
「はい。分かりました!」
コージも楽しかった。今までテツヤに素振りを見てもらっていたが、テツヤのバッティングを見るのは初めてだ。
テツヤはハイスピードのゲージに入った。コージはビビった。
「オレなら打てないスピードだ。テツヤさんはどう対応するのかな?」
マシンからボールが出る。速い、速すぎる。
テツヤはどうする?
小さく足を上げてコンパクトなスイングでボールを捉える。キレイなライナー性の打球が気持ちよく飛んでいく。不思議なことに、軽く打っているように見えるが強い打球が飛んでいた。
「オレのタイミングの取り方をしっかり見ておけよ。速いボールでも打てるぞ」
テツヤの言う事をしっかり聞きながらコージも集中した。
「よし、じゃあ次はコージが打ってみろ」
テツヤに促されコージが打席ゲージに入る。懸命にバットを振るが、なかなか当たらない。大粒の汗が流れてきた。
「どうして当たらないんた!」
コージのイライラが始まってしまった。
素振りはイメージどおりできるのに実際のボールには当たらない。
イラつくコージを見てテツヤが肩に手を掛けた。
「ムキになっても当たらないぞ。落ち着いてコンパクトに振るんだ」
優しく声をかける。
空振りが続いてコージの汗が一段とふえた。涙らしきものが見えた。汗と涙の雫がバッティングセンターに流れた。
テツヤとのバッティングセンターは悔しい思い出になったんだ。




