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狩人と鳥

出会いの中であなたが一番最初にすることは挨拶でも、握手でもないわ。あなたがまず一番最初にすることは、笑顔よ。


    ムーミンよりリトルミイ

「う、う〜ん……」


「あ、アグネス!」


アグネスはゆっくりと目を覚ました。一体何が起こっていたのか分からず、頭は混乱していた。


「私は……」


「大丈夫だよ、アグネス。ショックで気絶していただけだから」


アグネスはラインハルトの方をゆっくりと見る。比較的触り心地の良いベッドから察するにここは医療施設か何かであった。


「私、どうしちゃったんですか?」


ラインハルトは事の次第を説明した。アグネスは段々と頭がはっきりしてきた。


「狙撃……」


「うん、でもどうやら君を狙ったわけじゃくてなくて、僕を狙っていたらしい。人違い……」


「中尉殿は大丈夫だったんですか!?」


アグネスは自分よりもラインハルトの方を気にかけた。


「僕は大丈夫だったよ。狙撃者も捕らえたし。でも……」


ラインハルトは暗い顔をした。

アグネスは心配して問う。


「どうかなさったんですか?」


「結局、君を危険な目に遭わせてしまった……」


ラインハルトは自身の決断を悔いていた。アグネスを後方に待機させていれば、こんなことにはならなかったと考えたのだ。ラインハルトは口を強く噛み締める。


「それは違いますよ。中尉殿」


アグネスはキッパリと答える


「何度も言いますけど、戦う意志を固めたのは私です。責任なら私にあるんです。それに、私は生きております」


ラインハルトは上目遣いをする。申し訳なさそうな表情だ。


「ありがとう……」


アグネスは我慢できなかった。


「あ、ちょっ、アグネス!?」


アグネスはラインハルトの顔を抱きしめた。ラインハルトは訳もわからず赤面した。


「だめだよ、アグネス!こんなことしちゃ……」


「静かにしていてください」


アグネスにそう言われて、ラインハルトは黙ってしまった。

少しの間、二人はくっついていた。ラインハルトは頭の中がぐるぐるして、どうすればよいのかわからなかったがアグネスが小声で言った。


「……いつも、ありがとう」


「!」


ラインハルトはドキッとした。彼にはそれがなんの感情なのかはわからなかったが、だが確かにアグネスに対して胸が高鳴った。

アグネスはパッと離れた。彼女も顔が少しだけ赤い。


「中尉殿、私を撃った方はどんな方だったんですか?捕らえたのでしょう?」


アグネスは突然話題を変えたため、ラインハルトは一瞬戸惑ったが、答えた。


「えっと、あ、そうだ!」


ラインハルトは思い出したように言うとすっと立ち上がった。


「ちょっと待ってて」


ラインハルトは部屋を出ていった。





アグネスはしばらく窓を眺めて待っていた。


(私、なんであんなこと言っちゃったんだろう……)


アグネスは先ほど自分がやったことを思い出して、無性に恥ずかしくなった。

そして、ベッドの上で悶えているとドアの方から声がした。


「失礼します!」


「え、あ、はい……」


ラインハルトは二人の兵士を連れてきた。一方はドイツ兵だが、もう一方は布で全身を覆っている。


「誰……?」


「アグネス、こちらの方はロシア語に堪能な人」


そう言われて、通訳人はお辞儀をした。


「シュミットと申します!」


アグネスもお辞儀を返した。


「で、こっちなんだけど……」


布を被った兵士はロシア語で言った。


「おー、本物だ。女の兵士だ……」


アグネスはドイツ語ではない言語を聞いて驚いた。


「中尉殿、この人は……?」


すると、布を被った兵士は布を脱いで、顔を見せた。オホートニクだ。

アグネスは目を見開く。


「お嬢さん、あんたを撃って申し訳ない。どうかあたしを許してほしい」


オホートニクはそう言った。

アグネスは相手がロシア軍兵士であることを悟ったが、まず何よりも女性であることに興味が湧いた。


「あなたも女性兵士なのね!」


アグネスはオホートニクの手をとって、目を輝かせた。オホートニクは申し訳なさそうな表情から優しい笑顔へと変わった。

アグネスはオホートニクに興味津々で、シュミットを通して二人は会話をした。


「なるほどね、クリスマスにそんなことが……」


「そうなの!それで、私も軍隊……、いや、ラインハルト中尉についていくことにしたのよ」


横で聞いていたラインハルトは少し恥ずかしそうにしていた。

オホートニクはその様子を見て言った。


「へー、恋って面白いね」


シュミットはその言葉を訳そうとしたが、オホートニクに止められた。


「なんと言ったの?」


「独り言だそうです」


「そうなの?」


「はい」


シュミットは半分笑っていた。


「ところで、オホートニクさんはどうして戦っているの?」


オホートニクは少し考えたあと、言った。


「えっと、その前にあたしのことは『ブロニスラヴァ』だから、『ラーヴァ』と呼んで」


「わかった。じゃあ、私のことは、そのまま『アグネス』ね」


「で、私が戦っている理由か……。一言でいうと、『男も女も同等に生きれる』世界に憧れているから、かな……?」


「『同等』に……?」


ラーヴァはにっこりとした笑顔を見せた。とても狙撃兵には見えなかった。

ラインハルトが口を挟む。


「話している最中、申し訳ないけどもう時間なんだ、アグネス」


アグネスはラインハルトに心配そうに尋ねる。


「中尉殿、ラーヴァはどうなるんですか?」


ラインハルトは穏やかな表情で答えた。


「彼女のことは捕虜として丁重に扱うよ」


「よかった……。あの……」


アグネスは付け加えた。


「もし、良かったらまた、彼女と話す機会を設けてほしいです」


アグネスはラーヴァのことが気に入ったらしい。ラインハルトは少し考えた。


「うーん、彼女と内通している人物がいないことがわかったらね」


「やった!」


アグネスは喜んだ。そして、ラーヴァに向かって言う。


「ラーヴァ、またお話しましょう!」


「喜んで」


アグネスとブロニスラヴァの不思議な出会いであったーー。

読んでくださりありがとうございます。次の作品が投稿され次第、ぜひ読んでいってください。

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