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ドイツ帝國に生きる  作者: 幽々夢 妖帝歌
帝都・ベルリン
40/105

ケリーの想い

恋人を選ぶ… なんてウソ。いきなりわが身に降りかかってくるものだ。


    クロード・アネ(1868-1931)

ラインハルトとケリーがビヤホールに戻ると店には警察などが出入りしていた。騒動の一件を聞きつけて駆けつけたのだ。アグネスは入り口のそばで不安そうな顔をして待っていた。


「ただいま」


「中尉殿!」


二人が戻ってきたのを見てアグネスは表情を明るくした。


「大丈夫でしたか?ケリーさん!」


「うん、私は大丈夫よ。ラインハルトがすぐに助けに来てくれたからね」


アグネスはそれを聞いて心底安心した。

ラインハルトとケリーはその後、警察による事情聴取を受けることになったが、助けてくれた男との約束通り、社会主義団体の仔細については触れないことにした。


「せっかくの休日なのに、すごい疲れた……」


ラインハルトは帰り道に愚痴をこぼした。


「ごめんなさい……、私のせいね……」


ケリーも今回のことについては、ひどく責任を感じているらしい。落ち込んだ表情を見せた。


「ケリー、君のせいじゃないよ。でも、もうちょっと場所を選んだ方がいいかもね」


ラインハルトはにっこりと笑顔を見せた。ケリーはその笑顔が印象的に頭に残った。

三人は、ラインハルトとアグネスの宿泊先のホテルに着いた。ラインハルトは心配そうに聞く。


「ケリー、夜道は気をつけるんだよ?」


「大丈夫、すぐそこだから!」


ラインハルトはホテルの方が先に着いてしまったが、できれば見送りたかった。


「それじゃあ、おやすみ」   「おやすみなさい!」   「おやすみ」


ケリーは二人との別れ際、アグネスだけを呼び止めた。


「アグネスちゃん、あなただけちょっと」


「はい?」


アグネスは自分だけが呼ばれて不思議に思った。


「何か?」


「あのさ……」


ケリーは少し言いにくそうな表情を浮かべていた。


「?」


アグネスはなんのことだかよくわからず、首を傾げている。

ケリーは決心したのか、呼吸を整えると言った。


「あなたがラインハルトを好きになった理由がよくわかった気がする」


突然、そう言われてアグネスは赤面した。


「え、あの、なんですか?急に?!」


「ふふ。もしあなたがいつまでもぐずぐずしていたら……」


ケリーはくるりと半回転して背中を見せた。


「私も狙っちゃうからね」


「……え?」


ケリーはそのまま去っていった。アグネスは自分が何を言われたのか理解できずに呆然と立ち尽くしていたが、後ろからラインハルトに声をかけられて我に返る。


「どうしたの?」


アグネスは俯きながら尋ねた。


「中尉殿は、お好きな人がいたことはないのですか?」


「ん〜……、いるよ」


アグネスは顔をばっと上げて詰め寄る。


「いるんですか!!?今もですか!?」


「うん」


「どんな人ですか!?」


アグネスは動揺を隠しきれずにいた。

ラインハルトは特に気にする素振りもなく答える。


「えっとね、古代ギリシアの数学者・アルキメデスかな」


ラインハルトとは、こういう男なのであるーー。

読んでくださりありがとうございます。次の作品が投稿され次第、ぜひ読んでいってください。

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