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オーストリア=ハンガリー軍を救え!

戦争は他国にさせておけ!しかし幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ。他国の領土は軍神マルスが与えるが、汝の領土は愛と美の女神ヴィーナスが譲って下さるのだから。


   ハプスブルク家「家訓」

ドイツ帝国の友邦、オーストリア=ハンガリー帝国は憂鬱であった。この国は、ロシアとの間で行われた「プシェムィシル包囲戦」で大敗。およそ10万人にも及ぶ大損害を出し、他の戦いでもロシア軍に苦戦を強いられていた。かつて、ハプスブルク家の帝国として欧州に君臨した国は今や、危機に瀕していた。


「なあ、俺たちってなんのために戦っているんだろうな」


「は?そりゃあ、この国と皇帝のためだろ」


「それって守らなきゃならねえもんなのか?」


「何言ってるんだよ、今更」


塹壕で突撃命令を待つ間、二人の兵士が小声で話し合う。


「俺は、もうこの国に希望が見出せないぜ……」


「やめろよ、上官に聞かれたら殴られるぞ!」


「上官に殴られて済むんだったら安いもんだろ。ほら、見ろよ……」


オールトリア=ハンガリー軍の向こう側にはロシア軍が待機している。彼らも塹壕で用心深く待っているのだ。


「俺たちは今からあそこに飛び込むんだ……。死ぬんだ……」


聞いていたもう一方の兵士は唾を飲み込んだ。汗が滴り落ちる。


「突撃ーーーーーー!!!!!」


無謀とも思える突撃が敢行されているーー。










「オーストリア=ハンガリー軍が降伏すれば、我々としてはかなり厳しい……」


東部戦線に移動してきたこの男、エーリッヒ・フォン・ファルケンハインは唸った。ファルケンハインは元々、西部戦線でモルトケの後任としてドイツ軍を指揮していた。「シュリーフェン・プラン」挫折後の英仏軍の反撃を食い止めた実力を有するが、彼は慎重な男であった。


「私としては、やはり彼らを援護する方が良いと思います」


「ふむ、理由は?」


ラインハルトはマッケンゼンの推薦でファルケンハインのもとに来ていた。


「今後イタリアが我々との同盟を切って、敵陣営として参戦するのは明白であります。イタリアの戦力は我々の力をもってすれば抑えられるでしょう。しかし、ロシアやそれに付随する中小国が連携をもって攻撃してくれば厄介です」


「やはりそうであろうな。私がここへやってきたのもオーストリアをなんとかしなければならないという判断からだからな」


ファルケンハインは、苦戦するオーストリア=ハンガリー軍との共闘のために東部戦線へやってきた。もはや、二重帝国も限界が近づいていた。


「私はオーストリア軍と組んで、ゴルリッツ=タルヌフ地区からロシア軍を追い出すのが良いかと思われます。ロシア軍に攻撃の隙を与えないためにも彼らには撤退していただきましょう」


「ふむ、良いな。ならば、マッケンゼン殿に新設部隊の司令官になっていただこう」


すぐ隣で静かに聞いていたマッケンゼンは、ようやく呼ばれたと言わんばかりの表情で答えた。


「謹んでお受けいたします」


「うむ。そうだ、シュライザー中尉」


ファルケンハインは思い出したように言う。


「はい、なんでしょう?」


「今回、まさに君のためとも言える代物を持ってきたぞ」


「それは一体?」


ラインハルトは興味が湧いた。

ファルケンハインはにやりとしながら言う。


「『列車砲』だ」







「なあなあ、聞いたか?ドイツ軍の兵士の話」


「なんのことだよ」


オーストリア軍の兵士たちが焚き火を囲んで噂話を展開している。彼らは運良く今日の突撃を生き残った。


「なんでもよ、砲兵の中にとんでもない逸材がいるらしいぜ」


「砲兵に?ナポレオンの生まれ変わりってことか?」


「あながち間違いでもないかもな」


兵士たちは興味を示して身を乗り出す。


「へー、気になるな、そいつのこと。一体何者なんだ?」


「どうやら、タンネンベルクの戦いとマズーリ湖の作戦を見事に成功させたらしい」


「ほうほう、それで?」


気が付けば、周りにはさらに多くの兵士が集まっていた。この手の話は彼らの好奇心をそそるのだ。


「その砲兵が撃つ弾はなんでも、百発百中だとか聞いた」


「!!?」


一同は目を見開いた。


「ははは、さすがにこれは誇張だと思ってるよ。でもよ、本当に砲撃の命中率が高いそうなんだ。でもでも、さらに凄い噂があって……」


一同は息を呑む。


「そいつが、タンネンベルクとマズーリ湖の作戦を立案したんだよ。それも実は、入隊歴は半年だ」


兵士たちは驚きで何も言えない。お互い、目を合わせて絶句している。


「お前ら、喜べよ!そのドイツの『ナポレオン』が今回は俺たちと一緒に戦ってくれるかもしれないんだぜ?」


「そうなのか?」


尋ねられた兵士が首を大きく縦に振る。


「ああ、どうやら、苦境に立つ俺たちを援助するために今度、ドイツと連合作戦を実行するって話だ」


兵士たちは喜びの表情を浮かべる。


「俺たちを助けてくれるんだな!」


兵士たちは期待で胸が膨らんだ。

ラインハルトたち、ドイツ軍はこの崩れかけているオーストリア=ハンガリー軍を救わなければならないーー。

読んでくださりありがとうございます。次の作品が投稿され次第、ぜひ読んでいってください。

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