4月1日(月):ダイスケside
今日はマーティン様から聖女について教えてもらった。
この国の簡単な歴史、風習や法律などを習ってきて、いつこの話題を習うのかと正直不安になっていた。
まず最初に学習するべきところじゃないのかと思うけど、日本から飛ばされてきた僕はこの国では赤ん坊と同じようなものなので、父親代わりのマーティン様の意向に従うしかない。
……と、言っても彼とは一歳しか年齢が変わらないけど……
で。肝心の聖女の件だ。ノートに書いたメモを日記にも写しておこう。
聖女の義務は主に二つ。
・毎朝、神殿で祈りを捧げる事。
・王族の男性と婚姻魔法で結ばれる事。
『祈り』とは神社のお参り的なもので、その日一日の幸せを精霊に祈る行為。精霊への挨拶→精霊が司る自然への感謝→国民の幸せを祈る→王族の繁栄を祈る……という順番で祝詞を捧げる。
最初に聞いた時、どれだけ長い時間祈りを捧げなくちゃいけないのか不安になっていたが、十五分くらいで良いらしい。
朝六時からという決まりがあるのがネックだけど、聖女として絶対やらなければいけないたった一つの仕事が十五分で終わるというのはありがたすぎる。
日本では水道と電気を止められそうになっていた僕が、毎朝十五分働くだけで衣食住に困らない生活ができるなんて夢のようだ。
もう一つの義務が王族と婚姻魔法で結ばれる事だけど、これは正式な結婚という訳ではないらしくてホッとした。
簡単に言えば、聖女は国に設置されたモデム兼ルーターみたいなもので、精霊から送られる幸せ電波をWi-Fiで国民に供給する役目だ。婚姻魔法は国の世帯主である男性と聖女モデムを結ぶビジネス的な契約だ。
「聖女の僕はこの王家世帯と契約を結んでます。国民に幸せを配りたいので、精霊会社さんは幸せ電波を僕にください」って事だ。
つまりそこに愛はなくても大丈夫。あくまでビジネスだ。
実際、歴代聖女の中には婚姻魔法で結ばれた王族と別の男性と暮らした聖女もいたし、婚姻魔法を結んだ以降は一度も王族の前に姿を現さなくなった聖女もいたらしい。
王家の方も聖女との結婚にはこだわらず側妃を迎える事もある。
……まあ、普通に王族と結婚する聖女の方が圧倒的に多いみたいだけど。
最初は「男なのに聖女!? 王子と結婚!?」ってパニックになっていたけど、冷静に聖女を『ビジネス』として受け入れてみると、なかなか良いホワイト企業のように思えてきた。
日本では再就職の面接に何度も落とされていた僕だけど、今回こそ内定をもらいたい。
「この度は聖女選抜試験のご参加誠にありがとうございました。王族一同で慎重に検討した結果、辺見様のご希望に添いかねることとなりました。辺見様の今後一層のご活躍をお祈り致します」……なんて手紙が来ませんように……
*****
「第二回の試験日が決まったよ。明後日だ」
「明後日ですか。緊張するなぁ……」
「ちなみに、今度の試験は私もアニーも付いていけない決まりでね」
「え! という事はベルリーナ様も一人で参加を?」
「そうなる……とは思うんだけど。どうかな」
「どういう意味です?」
「ほら、昨日伝えた落書きの件があるから」
「ああ。怯えて部屋から出てこないんですっけ」
「もしかしたらアライザスが付きそうかもしれないね」
「そうなったらアニー様、また不公平だって怒るだろうなぁ……」
「や、やめてくれ……! 本当にそうなりそうで怖いよ!」
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