3月31日(日)
日曜日だというのにお父様と共に城へ呼び出されてしまった。
お父様の口振りから察するにどうやら楽しい話題ではなさそうだし、呼び出してきたのがあのカイル様という事でテンションはさらに急降下だ。
予感は的中。
今日は最低最悪の日曜日だった!
なんでもスプリングス家の屋敷に悪意ある落書きがされたらしく「心当たりはないか」と聞かれたのだ。
心当たりなんてあるわけがない。
それなのにお父様は私がやったのだと勝手に決めつけ、慌ててカイル様に土下座をしてしまった。
五歳の時のベルリーナに対する『前科』を知っているからだ。
今回は無実の私の言い分も聞かないうちに土下座なんてされたら、ますます私が犯人に見えてしまうじゃないの!
お父様には本当に失望したわ。
娘の事を信じていないだなんて!
最初に私を疑ったカイル様にも失望だわ。
これがお優しいユーリス様だったら、まずはちゃんと私の話を聞いてくださるはずだもの。
カイル様は私を睨み付けて「他に言うことがなければ屋敷に戻り、追って沙汰を待て」と言った。
他に言うことがなければ、ですって!?
言いたいことはごまんとありますわ!!
土下座のままのお父様を無理やり立たせてソファに座らせる。
まったく、情けないったらありゃしない。
そしてカイル様に向き合い、人指し指を上に向けた。
私が今回の事件の犯人でないことを一つずつ説明するためだ。
一つ目。
まず、屋敷にペンキで落書きをするなんて分かりやすい嫌がらせはしない。
目立つ嫌がらせをしたらスプリングス家が被害者なのは明白で「可哀想に」と思う周辺住民が現れかねない。
私ならベルリーナに同情心をもつ者なんて作らせやしない。
二つ目。
もし聖女候補から蹴落とすなら、ありとあらゆる手段を使って弱味を探しだし、ベルリーナだけにプレッシャーをかける。
誰にも相談出来ないような弱味で脅迫し、自分から試験を棄権するように仕向ける。
そうじゃないと私が脅迫したのがベルリーナ以外にもバレるからだ。
今回お父様やカイル様が誤解したように、彼女を脅迫するなんてことをするのは私くらいしかすぐに思い付かない。
自分で自分の首をしめるような馬鹿をやるはずがない。
そして重大な三つ目。
先日の試験でドスケベユニコーン以外の馬もベルリーナに撫でまわされる結果になっていたら脅迫の一つや二つしていたかもしれない。
どんな審査結果になっているかは分からないが、こちらとしてはダイスケが優位に終わったと感じている。
彼女を脅迫する必要性なんて一つもないのだ。
早口で説明する私に呆気に取られているお父様とカイル様に、これでも私をお疑いになるのかと問うと、二人揃って「申し訳ない」と謝ってくださった。
冤罪をかけられた私の怒りはまだまだ収まらないけれど、分かればよろしくてよ。
もう二度と私を疑うなんて馬鹿な考えは持たないで欲しいわ。
*****
「納得していただけたのなら、もう帰っても宜しくて?
早く屋敷に戻って美味しいお菓子でティータイムを楽しみませんと、今日のとてつもないストレスでわたくしの髪がごっそり抜け落ちそうですの」
「こ、こら! カイル様に向かってなんてことを!」
「元はといえばお父様のせいなのですよ!
自分の娘を信じず、やってもいない罪を勝手に認めてしまうんですもの!」
「アニー嬢、それに関しては私が最初から君を疑うような発言をしてしまったせいでもある。
お父上をそう責めないでほしい……」
「か、カイル様っ」
「謝ろう。本当に申し訳なかった」
「私もだ。ごめんよアニー……。
帰る時にお前の好きな店でお菓子を好きなだけ買うから、どうか許しておくれ」
「ふんっ!……お二人とも、そこまでいうなら許してさしあげますわ。
さ、お父様。帰りますわよ!」
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