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3月29日(金)~30日(土):兄弟side

3月29日(金):ユーリスside


 昨日の聖女選抜試験はものすごく面白い結果になった。


 一回目の試験内容が男性には不利すぎるために試験を変えてはと兄上と共に父上に直訴してみたけれど、慣例に従えと命令されてしまってどうにもならなかった。


 当然アニー嬢は怒って兄上に突っかかってきた。

 僕達も一応は努力したんだよと言いたかったけど、兄上はそっけなく慣例だからと相手にしなかった。

 まぁ、神官長が選んだ候補のために試験内容を変えるよう王に進言しただなんて言ったら、アライザスが部下総出で不満を言い出すだろうから仕方ない。

 でも兄上ももう少しアニー嬢に対して優しく言ってあげてもよかったのにと思う。


 結果的に男性が不利な試験とは思えない結末になった。

 なついたユニコーンの数はベルリーナ嬢もダイスケも一頭ずつだったけど、男性がユニコーンに触れられただけで奇跡だ。


 歴代聖女候補の中でも飛び抜けた聖力のおかげか、その他の要因なのか……。

 王家の私設図書館以外の文献でも調べてみる必要がありそうだ。


 時間ができたら久しぶりに変装をして城を抜け出してみるかな。


*****

「兄上。ダイスケの事に驚きすぎて議論されてなかった事を思い出したんだ」

「なんだ」

「どうして四頭のユニコーンはベルリーナ嬢の元に駆け寄るのをいきなり止めたんだと思う?」

「あぁ……確かに」

「ダイスケの聖力に気付いて止まったというより、ベルリーナ嬢がユニコーンに触れているのを見て止まったって感じだったよね」

「ベルリーナ嬢になついた一頭が他のユニコーンを牽制したのかもしれない」

「うーん……。そんな様子には見えなかったんだけど」

「では、お前の目にはどう見えた」

「ベルリーナ嬢の『清らかな心』に突然濁りを感じた……とか?」

「まさか」

「真相はユニコーンだけが知ってるけど、僕もちょっと調べてみることにするよ」


*****


3月30日(土):カイルside


 アライザスがベルリーナ嬢の件で訪問してきた。

 今朝、ベルリーナ嬢の屋敷の壁に『聖女候補を降りねば一族に不幸が降りかかる』とペンキで落書きされていたらしい。

 ベルリーナ嬢はその警告に怯えきって部屋に閉じ籠ってしまったようだ。


 犯人として一番に思い浮かんだのはアニー嬢だ。

 先日の試験前に不公平を訴えて第一王子たる私に鬼のような形相で突進してきた事が印象的すぎた。

 私としたことが驚きのあまり少し飛び上がってしまったのだが、誰にも知られていない事を祈るばかりだ。


 アニー嬢ではないとしたら、スプリングス家自体に何らかの恨みがあり、聖女を輩出することを阻止したい者がいるのかもしれない。


 あらゆる方向性で犯人像を考慮しなくてはならない。

 そう考えを巡らせていた時にアライザスが私に会って欲しい人間を連れてきたと申し出てきた。

 なんでも、犯人に繋がる情報を持っているかもしれないと言うので面会を許可することにした。


 男の名前はキース・スペンサー。

ベルリーナ嬢とアニー嬢の幼馴染みの貴族だという。


 男がいうには幼い頃にキースを巡って二人の令嬢が争う事があり、その際にアニー嬢はベルリーナ嬢に対して執拗な嫌がらせをしていたらしい。


 持ち物を隠されたり、足をかけて転ばされたり……子供のやる事とはいえ陰湿だ。

 アニー嬢からの嫌がらせに耐えかねたベルリーナ嬢は涙ながらにキースに助けを求めてきたらしい。

 キースがアニー嬢に絶交を宣言すると苛めはなくなったそうだが、ベルリーナ嬢の心にはその時の傷が今も残っていることだろう。

 今回の屋敷の落書きの件もアニー嬢の仕業と考え、怯えて部屋に閉じ籠ってしまうのも無理はない。


 明日、神官長に娘を連れて登城するように手紙を出そう。

 彼女に話を聞かなければ。


*****

「明日、神官長とアニー嬢から話を聞く。

 君はベルリーナ嬢の心のケアを頼む」

「ベルリーナ嬢の事はお任せ下さいませ。

 しかしアニー嬢に話を聞くのは無駄では?

 彼女が素直に罪を認めるとは思いません」

「そうだとしても一方的に罪を決めつける訳にはいないだろう」

「かしこまりました。

 ただ、アニー嬢にはベルリーナ嬢に対して陰湿な虐めを行える人間的だという事は事実でございます。

 その事はお忘れなきよう……」

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