3月28日(木):選抜試験一回目②
ユニコーンを囲うゲートが開いた瞬間、五頭がベルリーナめがけて走り出した。
何が『神聖なるユニコーン』だ。
ただのスケベ馬じゃないの!
とりわけ速いユニコーンはベルリーナの側に辿り着くと、すぐに輝く毛並みを彼女に擦り付け始めた。
そして『私って聖女にふさわしいでしょう?』と言わんばかりの表情を浮かべてユニコーンを撫でるベルリーナ。
ユニコーンは嬉しそうに鼻を鳴らす。
王家のユニコーン対して思い付く限りの悪態をつきそうになったけど、ふと周りを見ると他のユニコーン達の様子がおかしいことに気が付いた。
ドスケベユニコーン以外はベルリーナに駆け寄るのを止めてしまったのだ。
全ユニコーンが自分の元に来ると思っていたであろうベルリーナは焦ってユニコーン達に「おいで」と呼びかけ始めた。
あの見苦しさは今思い出しても滑稽だわ。
多くのユニコーンは彼女の性根の悪さを察知したのかもしれない。
そのうち、遠くから聖女候補達を見ていた一頭のユニコーンがゆっくりとダイスケに近づいていった。
清らかな心を持つ処女以外が近くとその頭の角で身体を貫くと言われているため、女性神官達が慌ててユニコーンとダイスケの間に割って入る。
しかしそのユニコーンは軽いステップで神官達を避けるとダイスケの近くまで駆け出してしまった。
あの時は正直心臓が止まるかと思った。
でもユニコーンはダイスケに角を突き立てるわけでもなく、彼のことをじっと見つめるだけ。
ダイスケが撫でてもいいかとユニコーンに声をかけると、その言葉を理解したのかダイスケが差し出した手に顔をすり寄せた。
まさか!
男性がユニコーンに触れただなんて!
他の三頭のユニコーンもダイスケのかなり近くまで行きはしたけど、撫でてもらおうという仕草はしなかった。
ただ、ベルリーナに近寄ったのはドスケベユニコーンが一頭だけ。
どちらかというとダイスケの方が優位な状況で一回目の選抜試験は終了した。
最初に試験内容を知らされた時は目の前が真っ暗になったけれど、なんとか上手くいって安心した。
しかし選抜試験が過去の試験と同じということを考えると、男性であるダイスケが不利な試験が今後もあるかもしれない。
これからもヒヤヒヤしながら試験を見守ることになるのでしょうね。
*****
「カイル様。男性がユニコーンに触れられた例は本当にありませんの?」
「私の知る限りないと思うが……。
ユーリス、お前はどうだ?」
「僕はユニコーンに関する文献を結構読んでる方だけど、そういう例はなかったね」
「では本当にダイスケが初めてなのかもしれませんわね……。
ねえ、ダイスケ。ちょっと聞きたいのだけれど」
「なんでしょうか?」
「貴方、性行為の経験はあって?」
「な、なななななな……!?」
「ア、アニー嬢!! 君はなんて事をっ!」
「だってカイル様。重要なことでしょう?
会って数日ですがダイスケが悪い人間じゃないことは分かっております。
聖女候補なんですし、ユニコーンが望む「清い心」の持ち主なんでしょう。
でも性行為の有無はわたくし達にはわかりませんもの。
ね? ユーリス様にそう思いませんこと?」
「それはー……まぁ……そうなんだけど、ね……?」
「ユーリス様までそんな目で僕を見ないでください!
そういう類の経験は僕にだってちゃんとありますっっ!」
「あるのか」「あるんだ」「ありましたのね」
「…………最後は二十年以上前ですけど…………」
「「「なるほど」」」
「じゃあ僕の年齢と同じくらいご無沙汰って事かぁ」
「ぐっ!!!!
……ユーリス様、今日一番心をえぐる言葉をありがとうございます……」
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