5月4日(土)任命式②
髪の毛はいつも以上にピシッとしているし、服装も姿勢もちゃんとしているのに、どうしてかダイスケからは負のオーラが拭いきれない。
予想外のオジサン登場に会場は次第にざわつき出した。記者達のペンの動きも絶好調だ。
……恐らく、悪い意味で。
話せばいい人なんだと分かるのに、こういう場ではなかなかそれが伝わらないのがもどかしい。
ざわつきは収まらないが、ここでお父様が登壇して二人に『盟約魔法』をかけることになった。
これで『聖配者』が正式にこの国を聖なる力で守る者として精霊に表明することになる。
ユーリス様とダイスケが向かい合わせになって手を取り合い、その上からお父様が魔法をかける。
その瞬間、一気に会場中の空気が変わった。
言葉では表現しにくいけれど、『淀んでいた空気が入れ替えられた』というのが近いかもしれない。
これはこの会場だけではなく、恐らくカイレーン国全体で起こった現象なのだろう。
会場の雰囲気を感じ取ろうと外で待機している国民達の間からもどよめきの声があがる。
これがダイスケの力なのね……。
先程までの雰囲気とは一変し、ダイスケを称える拍手が巻き起こる。
ダイスケが何かの時にいっていたが、これが彼の世界で言うところの『論より証拠』というやつなのだ。
続いて、カイル様が立ち上がった。
カイル様もユーリス様と同じく堂々とされてらっしゃるけど、誰がどう見てもおかしい所が一点ある。
耳だけがトマトのように真っ赤なのだ。
そんなカイル様の様子を見て『察した』参列者達が一斉に私の方を見た。
バレてる! カイル様、バレてますわ!!
耳トマト王子が私の方を振り返り、壇上へとエスコートしてくださる。
「まずは、新しい『聖配者』のダイスケに一言。
この度、カイレーン国の加護を強固なものにしてくれると同時に、我が弟の親友となってくれた。
心より感謝する。
そしてもっと感謝したいのは、ダイスケを支えた補佐官であるアニー・ヨハンソン嬢である」
ダイスケへの賛辞を「うんうん」と心のなかで頷きながら聞いていたので、いきなり私の名前が出てきて驚いてしまった。
ダイスケを支えていたというより、正直ベルリーナを聖女にさせるものかという一心だったので、カイル様にそう言われてしまうと居心地が悪い。
……まぁ、そのことは秘密にしておこう。
「選抜試験を通じて彼女の素晴らしさを知り、惹かれ、こ、この度婚約を申し込んだ!」
後半、少し声が裏返ってしまっていたが、いつも冷静なカイル様の意外な一面に皆もほっこりした様子で大きな拍手をしてくれた。
私もその拍手にカテーシーで応える。
緊張したけれど、うまくできていたかしら?
明日からダイスケの引っ越しや、私の后妃教育が始まる。
忙しい日はまだまだ続くけれど、今日の任命式での暖かい拍手を思い出せば、どんな困難でも乗り越えられると思う。
それに、私には頼りがいはあるのにちょっと抜けてる素敵な婚約者がいるんだしね!
当初の目標、「ひと作品を書き上げる」を無事にクリアすることができました。
機会があれば番外編を書こうと思っております。
非常に読みにくい小説だったかと思いますが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




