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5月3日(金):ダイスケside

 今日は朝から祈祷の仕事があった。

 聖女……じゃなかった。『聖配者』としての最初の仕事だ。

 やることは選抜試験最終日のものと変わらないので滞りなくできたけど、朝五時半起きってのがなかなか辛かった。

 早起きが苦手ではないとはいえ、こちらの世界に来てからは九時頃に起きる事が多かったので、早起きに体が慣れていない。

 今日からは夜更かしして本を読むのはやめにしよう。


 二十分ほど仕事をしたらあとはフリーだ。なんという超ホワイト企業なんだ!

 とはいえ、今日はもうひとつ仕事があった。

 ユリ君と『婚約魔法』に代わる名称を考える事だ。

 代替案の『契約魔法』では義務感があっていやだ、というのがユリ君の主張だ。

 僕はわりと気に入ってたけど、この魔法をかけられる相棒が気に食わないというならちゃんと考えるしかないだろう。


 意見が真っ二つになった時に公平な目を持つ人にアドバイスを貰いたいということで、キリアンにも同席してもらうことにした。

 ……まぁ、平たくいってしまえば三人で飲みたかっただけなんだけど。


 僕とキリアンで昼食を兼ねたつまみを何品か作って、ワインと共に会議が始まった。

 まずは僕の試験合格祝いの乾杯だ。

 最終試験はとんでもないことになったけど、こうやってまた皆で乾杯出来たことが本当に嬉しいし、これからもこうやって集まれる事にも感謝だ。

 あの時ユリ君が動画を撮ってなかったらと思うと今でも背筋が凍る。


 さて、肝心の議題だ。

 ユリ君は『婚約魔法』でも国民は嫌がらないと言っていたけど、これにキリアンは「やっぱり抵抗があると思いますよ、ダイスケ相手じゃ」と言った。

 ですよねー。

 「そんなことないよ」というユリ君に対してキリアンが「もし婚約魔法の相手がわたくしならどうですか」と言うと、ユリ君は急に苦虫を噛み潰したような顔をして「い や だ!」と力強く応えた。

 ほら、やっぱり『婚約魔法』じゃダメなんだってば。

 ……って。キリアンはダメで僕ならいいのはなんでなんだろう?

 どっちも同い年のおっさんだし、見た目だけでいうならキリアンはイケメンなのに。

 まぁ、幼い頃から仕えてるから、ユリ君にとってキリアンは父親的なところもあるかららしい。

 そりゃ、そんな人と『婚約』は嫌だよな。


 改めて色々と案を出し合ったけど、僕の案はダサいと言われ、ユリ君の案は僕にとって刺激が強すぎてなかなか合意に至らない。

 なんで『婚約魔法』の代替案が『恋人魔法』なんだ。意味がほとんど変わってないじゃないか。

 僕の『相棒魔法』のがよっぽどいいと思うんだけどな。


 僕らのやりとりを辞書を開きながら聞いていたキリアンが『盟約魔法』はどうか、と提案してきた。

 意味的にも僕らにかけられる魔法に近いし、言葉の響きもいい。

 ユリ君もその名前ならと同意してくれたので、僕とユリ君は『盟約魔法』で結ばれる事になった。

 ちょっとかっこいいじゃないか、『盟約魔法』。


 明日はいよいよ任命式だ。

 国民の前に立つ義務はないと言われたけど、僕はそれを断った。

 この四十五年間、ずっと日陰に一人で隠れてばかりの人生だったけど、今は僕を認めてくれる人がたくさんいる。

 僕が変わるなら今しかない。

 僕みたいな男が『聖女』だなんて批判も多いだろうけど、その批判を軽くしようと色んな人が動いてくれている。

 その期待にも応えたい。

 側には心遣いユリ君もいてくれるし、何も怖れることはないと思う。


*****

「キリアンと『婚約魔法』だなんて絶対い やだ!」

「……ユーリス様、そこまではっきり言われると、わたくし多少傷付くんですけど」

「多少でしょ?」

「……訂正します。すごく傷付きます。

 これでもわたくし、ユーリス様が産まれてからお仕えしてるんですよ!?」

「だからだよー…。父上より長く一緒にいるじゃない」

「ユーリス様のおしめも取り替えたのはわたくしです!」

「そんな人と婚約とか嫌じゃないかぁ」

「あぁ、どうしようダイスケ! ユーリス様が今になって反抗期だぁ!」

「ちょっとぉ……抱きつかないでよ。髭が当たる……」

「ダイスケも冷たい! ひどい!!」

「「(うざい……)」」

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