5月2日(木)②
そんなにもダイスケと婚約したかったのね、と思っていたのに、ユーリス様のお考えは少し違っていた。
『婚約魔法』のままがいいのではなく、『契約魔法』という名前が気にくわないらしい。
「なんだか『契約』っていうと嫌々縛られてる感じがするんだ。
僕はダイスケのことを親友だと思ってるから、『契約』なんて言葉は使いたくない」
そう言うユーリス様のお言葉には、ただの我が儘ではなく、ちゃんとした信念があった。
実際に魔法で結ばれるのはユーリス様とダイスケなのだから、この際二人で決めてはどうかという事になった。
続いてはダイスケの『今後の住まい』についての議題だ。
ダイスケは今後、私達の屋敷ではなく王城に住むことになったのだ。
色々と案はあった。
新たにダイスケだけの屋敷を持ってもいいし、祈祷室がある神殿に住んでもよかった。
でも、ダイスケ自らが城に住む、という選択肢を選んだのだ。
ダイスケは客間として使わせてもらっている部屋をそのまま使い続けるつもりらしいけど、ユーリス様は「皆で集まれる秘密基地を作って、そこに二人で住んじゃうのもいいんじゃない?」と言い出した。
『皆』というのは恐らく先日の魂送りに参加したメンバーなのだろう。
ユーリス様の背後に控えていた専属執事の眉がピクリと動いていたもの。
ダイスケも少し乗り気になっていたし、この件は案外実現してしまうのかもしれない。
二人の愛の新居が出来たら是非とも招待していただきたいわ。
こうして大体の事が決まり、そろそろ解散となった時、カイル様が突如「ちょっと待ってくれ!」と切り出してきた。
……ついに、この時が来たのね!!
椅子から立とうとしていた面々も改めて椅子に座り直してカイル様の言葉を待つ。
「あっ!? え!?
そ、その。なんだ。あー……」
どうしてそこで言い淀むの……!?
「え、えーーっと……。ああ、こんな筈では……」
え何が? 何があったの!?
「アニー嬢にだけ『待ってくれ』と言ったつもりだったんだ……」
あのタイミングで『待ってくれ』なんて言われたら、皆にかけられた言葉だと思うでしょうに!!
マリアンヌ様が「まぁ、ここにいる皆、あなたがアニーさんに何を言うかなんて分かってるけれどね」というと、カイル様は顔を真っ赤にしてうなだれてしまったので、私は「皆様にも聞いて頂けた方が報告の二度手間が省けていいですけど?」と追い討ちをかけた。
こうしてカイル様は皆が見ている中で私に婚約を申し込んできたのだった。
本来ならもうちょっとロマンチックにプロポーズしてもらいたかったところだけれど、皆に祝福されながらっていうのも私達らしくて良かったのかもしれない。
私とカイル様の婚約発表も土曜日に国民に知らされるらしい。
カイル様からプロポーズされたらゆっくり眠れるかと思ったけれど、ますます眠れない日々が続きそうね。
*****
「アニー嬢! わ、わ、わたしと、結婚してくれ!!!!」
「……そのお申し出お受けいたしますわ」
「え、兄上。まさか『結婚してくれ』の一言だけ?
アニー嬢はそれでいいの?」
「まぁ……もうちょっと言葉が欲しいですわね」
「し、幸せにする!」
「それは基本なのよ、カイル。
アニーさんを幸せにしたうえで何をするかおっしゃい」
「う、ううう……。母上まで……!
そ、そうだ。 好きな時に極上のクランブルエッグを作ると約束しよう」
「まぁ! それは素敵ですわね。
ほんとにほんとに約束ですからね?」
「勿論だ。毎週でも毎日でも毎食でも作ろう!」
「そ、そこまでされるとさすがに飽きそうですわね……」
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