5月1日(水):選抜試験最終日③
ユーリス様はスマートフォンを見られなかった人達のために事の顛末をざっくりと説明してくださった。
聖女候補の『強姦自作自演』はあまりに衝撃的で、ベルリーナの信奉者達からは悲鳴があがる。
「そんなの捏造に決まってます!
ベルリーナ嬢がそんなことをするはずがありません!
そうでしょう? アライザス様からも何か言ってください!」
部下から名指しで呼ばれたアライザスは青い顔のまま「この証拠は……」と口を開いた。
「この証拠は紛れもない真実だと思います」
アライザスの言葉に再度信奉者達から悲鳴があがる。
ベルリーナは違うと金切り声を上げたが、アライザスは「以前の屋敷の落書きや花壇を荒らされた件も、彼女の自作自演です」と冷静に答えた。
きっと、アライザスはもう彼女を庇う事に疲れてしまったのだろう。
もし彼女が聖女になったならこういう類いの揉め事が何度となく起き、その度にアライザスが立ち回らなくてはならなくなる。
彼がこの負のループから逃れるタイミングは今しかないのだ。
思いきって第三の試験の魔法石の件を問いかけてみると「私の発案で不正を行いました。彼女を鞄に入れて担ぎ、夜中に御神木の森へ…」と素直に話した。
「ベルリーナ嬢の魔法石精製能力は確かだが、抜きん出たものではなかった……。
神官長に昇進する欲に眩んで愚かな事を致しました。
この罰はどんなものでもお受けいたします」
そういってアライザスは床に跪いて陛下に深く頭を垂れた。
ただの嫌なやつかと思っていたけど、もし立場が違っていたら仲良くなれたのかもしれない。
今になって彼を慕う部下が多い理由が分かった気がした。
「アライザスもその魔道具もみんな嘘つきよ!
わたしのことを陥れようとしているんです!」
ベルリーナはなおも自分の罪を認めようとしない。
ひっこみがつかなくなったというより、むしろ本気で自分で犯した罪を忘れているような言いぶりに背筋が凍る。
しまいには、告発者がユーリス様だという事すらも忘れたのか、ユーリス様に助けを求めだした。
「ユーリス様っ! お願いします!
これは何かの陰謀なんです!
本当に私はそこの男に襲われたんです!
わたしのこと、信じてくださいますよね!?」
神殿中に響き渡る声で泣き喚くベルリーナに反して、優しい笑みを浮かべたユーリス様がダイスケの肩を抱きながら言った。
「僕は君よりダイスケを信じるよ。
それに僕、今回の事がなくても君の事大っっっっ嫌いなんだ」
あまりのストレートパンチにさすがのベルリーナも頽れるしかなかった。
国王のご命令でカイル様はベルリーナとアライザスを連行する騎士達の指揮を取ることになった。
騎士達がベルリーナ達を祈祷部屋から連れ出すと、辺りが一気に静けさを取り戻す。
……疲れた。帰りたい……。
もう聖女は決まったようなものだが、やはり試験はしなくてはならないらしく、私たちは祈祷部屋の外へと移動した。
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