5月1日(水):選抜試験最終日①
最終試験の内容はお父様たちの予想通り、聖女業務の実地試験だった。
聖女が毎朝祈りを捧げる部屋で二人同時に祈祷し、遠くの観測所まで規定量の聖力を届ける時間を競うというものだ。
今回は最終試験ということもあり、国王陛下と王妃殿下も試験会場にいらっしゃった。
ベルリーナは聖女のドレスに、ダイスケは神官のローブに着替えて祈祷部屋に入っていく。
部屋には二人以外誰も入れない。
神殿にある鐘が十二時を告げると同時に祈祷を始めるルールだった。
二人が部屋に入って十分。そろそろ開始の鐘が鳴る頃かと思っていた時、祈祷部屋からベルリーナの悲鳴が聞こえてきた。
祈祷室のドアには中から鍵がかけられているため。カイル様がドアを蹴破り、皆で中に入る。
そこには胸元が乱れ、ドレスを破られて太腿が露になったベルリーナと、彼女を抱き起こすダイスケがいた。
手首には結びかけの布が絡まっていることから察するに、どうやら彼女はダイスケに束縛されかけたらしい。
頬には涙が止めどなく伝っている。
アライザスがダイスケを突き飛ばし、自分が着ていたローブを脱いでベルリーナに纏わせた。
「ダイスケさんがいきなり襲ってきて…!
『やっと二人きりになれたね』って言って…!」
ベルリーナの言葉を聞いたアライザスの部下達が一斉にダイスケを取り押さえた。
ダイスケと私とお父様が何かの間違いだと訴えても、彼等はダイスケを無理矢理床に押し付け、腕を後ろにねじ曲げる。
痛みにダイスケが悲鳴を上げた時、ユーリス様が「そこまで!」と声を張り上げた。
普段聞くことがないユーリス様の威厳ある声に、皆の動きがピタリと止まった。
ゆっくりと歩みを進めるユーリス様に「わたし、怖かった…!」と言ってベルリーナはすがりつこうとしたけれど、そんな彼女の横をするりと避けてユーリス様はダイスケを抱き起こした。
ユーリス様は心配そうにダイスケの状態をいろんな角度から観察する。
どうやら無理に組伏せられた際に殴られもしたようで、口の端が切れて血が滲んでいた。
ユーリス様はそっとハンカチでその傷を抑えて「手当てはもうちょっと待っててね」と言った。
そこまで来て不思議に思ったのがアライザスの態度だ。
いつもであれば猛烈に声をあげるはずの彼が、青い顔をして黙り込んでいる。
ここまでくるとなんとなく予想はつく。
ダイスケがこんなバカなことをするはずがないし、目当ての女性と二人きりになったからといって襲おうとする度胸もないだろう。
つまりは今回こそ、紛うことなきベルリーナの自作自演だ。
アライザスはベルリーナが何らかの動きを見せる事は予想していたけれど、彼はこの件に関しては関与してないはずだ。
ベルリーナはダイスケを部屋から追い出してくれと懇願するけれど、ユーリス様は動こうとしないし、周りの神官達もユーリス様に守られているダイスケには手出しができない。
「私は被害者なのに、どうして何もしてくださらないんですか!?」と泣き叫ぶベルリーナに、ユーリス様は冷たい声でこう言い放った。
「被害者はダイスケの方だろ」
この回から数話はセリフのみのパートがなくなる予定です。
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