4月29日(月):ダイスケside⑦
「これを見てみろ。今日のストラリズだ」
そういって、カイル様は背後に従えていた執事から新聞を一部受け取り、自信満々な顔で僕らの前に広げて見せた。
一面にでかでかと乗っていたのはカイル様とアニー様絵だ。
穏やかな笑顔で並ぶ二人の様子は、まるで結婚発表でもしたかのようだった。
写し絵だけでも昨日の魂送りがカイル様とアニー様にとって素晴らしいものだったことが見てとれる。
「ユーリスの写し絵もあるぞ」と一枚新聞紙をめくると、そこには見知らぬ女性とユリ君のツーショット絵があった。
「え!? 昨日の魂送りに彼女でも来てたの!?」とユリ君を見ると、いつもは飄々としているユリ君が「そんな人知らない!」と慌てふためいている。
彼女がいたなら、僕みたいなおっさんと婚約魔法だなんて嫌すぎるだろ!と頭を抱えて喚いていたら、記事を読み終わったキリアンが「そこのバカ二人、落ち着け!」と新聞紙を丸めて頭を叩いてきた。
「ユーリス様の隣にいる女はお前だ、ダイスケ」
は? なんて?
どうやらあの女性はストラリズの記者が考えた僕の妄想絵らしい。紛らわしい事しないで欲しいよな!
……でも、一般的な人が想像する『僕』はあんな感じの『女性』なんだろう。もし聖女に選抜されたとしても姿は見せない方がいいのかもしれない。
ひと騒動はあったものの、冷静に餃子を焼きはじめていたジョン君のおかげで、すんなりと青空餃子パーティーは始まった。
カイル様はストラリズの一面を見える位置に広げて、ニヤつきながら餃子を頬張っている。
ユリ君が「その新聞、いくつか買ってるなら一部くれない?」とカイル様に聞くと「いやだ」と即答する。
ご主人様に命令されて半分無理矢理餃子パーティーに参加していたカイル様の専属執事が「カイル様の執務室に二十部ほどございますので、後程……」と言いかけると、カイル様執事の口を手で塞いで「お前は自分で買え!」とユリ君に言い放った。
この人、最初の印象とだいぶキャラが変わったよな……。
まぁ、変人のユリ君のお兄さんなんだから、本当はこういう面もあったって事だろう。
しばらくすると、マーティン様が息子さんのエドワード様を連れてやってきた。
祈祷のシフトが終わったのでカイル様に挨拶をしに来たらしい。
二人ともランチがまだだというので餃子パーティーに加わってもらった。
年齢も身分もバラバラなメンバーなのに妙に居心地がいい。
昨日の序盤は使用人としての姿勢を頑なに崩そうとしていなかったキリアンやジョン君も、ユリ君に対して今では普通の友達のように接している。
ついこの間まで友達が一人しかいなかった僕とユリ君に、一気に仲間が増えたわけだ。
試験はあと一回。
どういう結果になるか分からないとはいえ、これからの人生はこちらの世界に落ち着く事にしている。
色んな困る事があったとしても、彼らがいてくれるなら何とかやっていけるんじゃないかな、なんて思った。
*****
「実は今回、ちょっと餃子にアレンジを加えたんですよ」
「あ、ほんとだ。皮に色がついてる」
「赤はトマトとチーズ入りなのでトマトソースで。緑はバジルとスモークサーモン入りなのでこちらのバジルソースで食べてください」
「あ、すごくいいアイディア! これならワインにも合いそうだね。
キリアン、ワイン持ってきてよ」
「セラーを勝手に開けていいからダイスケが持ってこいよ。俺はここから一歩も動かんぞ」
「ユリ君からも言ってよ」
「キリアンー、ワインー!」
「いやです」
「まぁまぁ。こんなこともあろうかと、こんなものを用意しました」
「なにこれ。普通の餃子…でしょ?」
「一人ひとつどーぞ♪ あ、カイル様もおひとつ」
「はぁ?……なんなんだ」
「実は一つだけ特別な餃子があるので、それを食べた人がキリアンさんの部屋までワインを取りに行くってことで」
「えー、僕はやだよー」
「特別な餃子を選ばなきゃいいんですよ。
じゃ、皆さん一斉に食べましょ」
「(全員)い、いただきます……」
「……普通に美味しいな」
「ダイちゃんは?」
「まぁ、特になにも」
「!?!ぐあっ!?な、なん、うあ!!!」
「え、兄上?」
「な、なんなんだこれは!!!」
「実は、大量の唐辛子入りのが一つだけありまして」
「とおっ!? から、からい!!!」
「じゃあ、カイル様。こちら、わたくしの部屋の鍵です」
「キリアンっ! おまえっーー!!」
「兄上がゲームに負けたんだから諦めなよ」
「カイル様、ワインは白と赤一本ずつでお願いしますね」
「ダイスケ、貴様まで!! お、覚えてろよ!?」
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