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4月29日(月):ダイスケside④

 思えば今までの人生、自分から人間関係にまつわる『選択&決定』を極力避けてきた。

 学校でありがちな「二人組を作って」は毎回余った人と組んだし、奇跡的にできた彼女も告白されたからお付き合いしただけで、特にその人が好きだった訳ではない(だから長続きはしなかった)。


 友達を選ぶことも、好きになった人に告白したこともない。

 断られることが何より怖いからだ。

 一度断られてしまったら、今まで築き上げてきた関係性まで壊れてしまいそうな気がして恐ろしいんだ。


 そんな臆病な男が、結婚(的な行為の)相手を本人を目の前にして選ぶだなんてできっこない。

 みんな分かってるんだ。

 僕にはユリ君を選ぶルートしかないって事くらい。

 カイル様とアニー様の仲を知っていれば、カイル様を相手に選ぶとは言い出しにくい。


 彼に恋愛感情はないとはいえ、友達としては長く付き合っていきたいと思っていたのに、ここで「君と婚約魔法で結ばれるなんてお断りだよ」なんて言われたら、選抜試験を放り出して遠いどこかへ逃げるしかない。


 今思えば、息をすることすら考えられなくなっていたんだと思う。

 頭がくらくらして、目の前がぼやけてきたと思ったその時、僕の異変に気付いたユリ君が突然僕を抱きかかえてベランダへと連れ出した。


 涼しい夜風で少し意識がはっきりしてきたので、慌てて深呼吸をする。

 あと数秒遅かったら、あの場で倒れていたかもしれない。


「ごめん。そんなに僕と契約するのが嫌だったなんて知らなくて」


 ちがう。


「皆の前じゃ、そんなこと言いにくかったよね」


 ちがう、ちがう。


「いやー、よく考えたらそうだよねぇ。

 今日だってダイちゃんは仕方なく僕に付き合ってくれてるわけだし……ごめんね!」


 今言わないと絶体に後悔するのに、口からはヒュウヒュウとした妙な呼吸音しか出てこない。


「兄上と契約したって、兄上とアニー嬢は一緒にはなれるし、あんまり深く考えなくても大丈夫だよ!」


 無理をして明るく振る舞っているけど、ユリ君の声が微かに震えている。


 そうだ。そうだった。

 ユリ君も根っこの部分は僕と同じ「陰キャ」なんだ。

 ユリ君の辛さを今一番わかってるのは僕自身だ。


 僕は一呼吸置いてからなんとか「ちゃんと、いう」と声を絞り出す。

 意気地無しの僕のせいで彼を傷つけた責任はちゃんと取らないと。


 三分ほどたってようやく声が出せそうになったので、改めてユリ君と向き合う。


 黙ってしまったのはユリ君を契約者に選びたくなかったわけじゃなく、僕がユリ君を選んで断られるのが怖かったからだ、という事を途切れ途切れに説明する。

 普通に話せば数秒で済む言葉なのに、情けない事に何分もかかってしまったけれど、ユリ君はずっと真剣に聞いてくれた。


 最後に一言。

 ちゃんと言わなきゃいけない言葉があった。


「もし選抜試験に受かったら、僕と契約してくれるかい?」


 そう言うとユリ君はその場にへたりこんで、「正直、兄上を選ぶって言われたら、一生引きこもってたかも」と笑った。


*****

「あ、もどってきた」

「ユーリス様、大丈夫ですか?」

「あー、うん。キリアン、心配しなくていいよ。

 はい、この話はもうおしまい」

「え、気になります。

 おい、ダイスケ。説明しろ!」

「まぁ、その。なんだ。

 もし聖女になったら婚約魔法は……えーっと……」

「おい、黙るなよ」

「キリアン、しつこいー。

 ダイちゃんが聖女になったら僕のお嫁さんになってくれるってさ」

「「「よ、嫁!?」」」

「なんだよ、三人揃って」

「ユーリス様。婚約魔法っていっても、魔法で契約を結ぶだけで、別に結婚するわけじゃないのは分かってますよね?」

「それくらい知ってるよ。

 でも魔法とか契約とかって表現、めんどくさいじゃん」

「そ、それでもいくらなんでも僕が『お嫁さん』はないと思うよ?」

「なんで。ダイちゃんは聖女なんだし、いいじゃん」

「いや、年齢と見た目的にも無理があるだろ」

「そう? でも僕は『王子』だから『お嫁さん』はヤだな」

「いやいや。僕こそ『おじさん』だから『お嫁さん』は嫌だよ!?」

「ダイスケ……諦めろ。

 分かってるだろ、ユーリス様の性格を」

「……くそっ……じゃあもういいよ、それでっ!」


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