4月29日(月):ダイスケside③
カイレーンに来てからワインとウィスキーしか飲んでいなかったけど、今日はキンキンに冷えたビールで乾杯。
こちらではあまり口にしないタイプの味付けの料理ばかり用意してしまったので、みんなの口に合うか心配だったけれど、どれも美味しいといってもらえて安心した。
餃子は特に好評。
味に不満はないといいつつ、上手く包めなかったキリアンだけは不機嫌になってたけど、やっぱりこの美味しさは万国共通なんだなぁ。
ビールとの相性はもちろんバッチリで、普段ビールを冷やす習慣がないカイレーン三人組が「これからはビールは冷やして飲む」って言い出したのも嬉しかった。
酒がまわってきたのか、ユリ君がベルリーナ嬢の話題を持ち出してきた。
人の悪口……しかも同じ試験を受けている少女の悪口を聞くのは気が引けたけど、ユリ君はかなり鬱憤が溜まっていたらしくて文句を言いまくった。
毎日のように載っているユリ君とベルリーナ嬢の記事のネタ元を辿ると、彼女が周りに言いふらしている発言を、関係者が新聞社に売り込んでいたことが発覚したらしい。
ジョン君が「今日のストラリズに、ユーリス様がベルリーナ嬢にプロポーズするって載ってましたけど」と言い出して驚いた。
そんな記事が載ってたの!?
でも、やはりそれもベルリーナ孃が勝手に言っていることで、ユリ君にその気は微塵もないみたいだ。
「ホッとした顔してるじゃないか?」
にやけたキリアンにそう話かけられてギクリとした。
確かに僕はその時『安心』していたから。
ユリ君がベルリーナ嬢にプロポーズするかもと聞かされた時の感覚は、独身だった親戚が結婚したと親から聞かされた時の感じと似ている。
なんとなく、僕だけ置いていかれる気がして寂しくなってしまっただけだ。
それなのにキリアンの言葉を勘違いした酔っぱらいのユリ君が「僕とベルリーナ嬢が結婚するかもって思ってショック受けちゃった!? 大丈夫だよー、僕はダイちゃん一途だからぁ」と、おどけて抱きついて来た。
しまいには無理やり頬にキスしてこようとするので、キリアンに助けを求めて力ずくで引き剥がしてもらった。
自分の主人が僕みたいなおっさんにキスするとこなんて、専属執事なら見たくないだろう。
酒が入っても一人冷静なジョン君が、床に転がってケラケラ笑っているユリ君を抱き起こしながら「でも、ダイスケさんが聖女になったら、カイル様かユーリス様と婚約魔法で結ばれるんですよね? 実際、どの方と契約するんです?」と問いかけてきた。
今まで考えなかった事ではない。
でも、いくら考えても答えが出ていない問題だった。
この場に最適な言葉を探していたら、酔っぱらっていたはずのユリ君とキリアンも真面目な顔をして僕の発言を待っている。
なんなんだよ、この状況……。
*****
「今日の魂送りのあの子の服、真っ白のドレスでさぁ」
「そりゃ、ユーリス様があの子に『自分が着たいものを着ればいい』なんて言うからでしょ」
「キリアンは僕が悪いっていうの? 白を選ぶなんて常識ないんだよ。
それに比べてアニー嬢は兄上と揃えたドレスで綺麗だったなぁ。
やっぱりあの時、アニー嬢をエスコートするって言い張ればよかった」
「ふーん。そうしてたら僕は今日と明日は家でのんびりできてたのになぁー」
「……ダイちゃん?」
「君ら兄弟がわがまま言うから、僕が折れて犠牲になったの忘れたか?」
「あ!」
「でもユーリス様がわがままをいってくれたおかげで、僕らは美味しいものが飲めて食べられてるわけですからねー。
ありがとうございます!」
「えーーん! ジョン、君ってばいいやつぅ~」
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