4月27日(土):魂送り③
カイル様とのダンスが終わり、王族の方々の待機場所へと戻った途端、アライザスにどういうことなのかと詰め寄られる。
カイル様が側にいるからか、ベルリーナ自身は文句を言えないようで、アライザスの背後で、いかにも『傷付いています』といわんばかりに、わざとらしい涙を目に浮かべて立っている。
事情は聞いているけれど、カイル様からは知らないことにしておいてくれと言われている。
知らない素振りをみせつつも、「そもそもユーリス様がダイスケと魂送りをするのに何か支障があって? 前聖女様を想って魂送りをするのであれば、人や場所は関係ないでしょう?」と追撃を食らわす。
そういうとアライザスは何も言えなくなったようで苦虫を噛み潰したような顔で黙ってしまった。
すると先ほどまでしおらしくしていたベルリーナがこちらに寄ってきた。
「それなら、私もユーリス様の魂送りに参加させてください!」
先程の私の正論をつきつめれば、確かにベルリーナがここにいる必要はない。
まさかの反撃にたじろぎそうになったが、すかさずカイル様が助け船を出してくださった。
「ベルリーナ嬢、君は今日のストラリズの記事は読んだか」
「……はい」
「魂送りの際にユーリスが君にプロポーズをするかもしれない、という内容だったな」
まさか今日のストラリズにそんな馬鹿げた記事が載っていただなんて思わず、私は思わず吹き出してしまった。
思いのほかリアクションが大きくなってしまったせいで、ベルリーナとアライザスに睨まれてしまう。
「今回の魂送りに参加する君とユーリスの事で、国民にまた妙な噂が流されることをユーリスは回避したいらしく、本日は君と距離を置きたいそうだ。
そのユーリスの気持ちを尊重してやってほしい」
本当は今日のストラリズに何が載ろうとユーリス様が舞踏会を途中退場するとこは決まっていたので、カイル様のこの言葉は優しい嘘ということになる。
下手に刺激してベルリーナに泣きわめかれるよりいいと判断されたのだろう。
丁度よく新たな曲が始まったので、カイル様は私の手をとってダンスフロアへと連れ出してくださった。
歩きながらチラリとベルリーナの方を見ると、なにやらアライザスと話し合っているようだった。
ベルリーナの眉間に深い皺が寄っていたところを見るに、まだユーリス様の所に行くとゴネていたのかもしれない。
アライザスも大変ね。
その後、ベルリーナも彼女の取り巻き神官達とダンスを踊っていたようなので、少しは気が紛れたんじゃないかしら。
途中、カイル様とバルコニーに出て休憩した時、カイル様から「試験が終わったら伝えたいことがあるから、その時は話を聞いてほしい」と言われた。
普段、人の目を見て話してくださる方なのに、なぜかこの時は目が合わない。
カイル様の顔はりんごのように真っ赤だった。
あの様子からして、きっと私達にとって『いいお話』が聞けるんじゃないかしら。
*****
「ベルリーナの方を見ずに聞いて貰えるか」
「はい」
「じつはストラリズに載る記事の情報の出所が分かった」
「……ベルリーナでしたの?」
「ある意味そうと言っていい。
新聞社にたれ込みをしていたのは彼女の屋敷のメイドや彼女の友人、彼女の行きつけのカフェの店員だ」
「そ、そうでしたの……」
「彼女は屋敷やカフェで色々と喋っているようだな。
それを聞いた彼らは情報を新聞社に売ったということだ」
「ということはベルリーナは『わたしぃ~、ユーリス様のお気に入りなのよぉ~?』とか『アニーったらユーリス様にエスコートを断られちゃってぇ~、可哀想に思ったカイル様がエスコートを買って出てくれたのよぉ~?』と、ベラベラと話してる訳ですわね」
「く、くくくく…! そ、その物真似、似ているな……!
彼女にそっくりだ……!」
「ちょっと! ツボに入らないでいただけます!?」
「く、くくくく……!」
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